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師走のIPO相場

 先生が忙しく走り回る師走の季節となり東京の街中はイルミネーションで彩られ、銀杏の葉が舞い落ちる中、大勢の皆さんで溢れかえっています。そんないつもの師走の季節の中で株式相場も様々な変動に悲喜こもごもの皆さんも多いかと拝察致しております。
 米国ではトランプ大統領再選で来年1月20日から発足する新政権であのテスラ社のオーナー経営者イーロン・マスク氏が政府効率化省(略称はDOGE=マスク氏の後押しする暗号資産DOGE(ドージ)コインに由来)の代表に就任。早速に具体的な施策が表明され始めています。

 米国のダイナミックで活気あふれる株式相場に負けるな、とばかり停滞気味だった日本株にもその余波が押し寄せ、日経平均は4万円大台に接近。先週は高値3万9632円まで上昇するなど師走相場への期待が高まりつつあります。 とは言え相変わらず全体相場はファーストリテイリングなど一部銘柄に偏りが見られ多くの個別銘柄は不人気状態。4日からスタートした12月のIPOも短期マネーが主体でかなり忙しい値動きが見られます。

 12月は4日のTMH(280A)から27日のビースタイルホールディングス(302A)まで昨年12月の15社を上回る17社がIPOを予定。この結果、今年のIPO企業数は87社となります。
 11月までの状況ではその多くは初値がついて以降、調整を見せており、師走のIPOもその事業内容の理解不足と短期投資家主体の市場参加という状況もあり、かなり忙しく変動が予想されます。

 筆者は11月22日に上場した家系ラーメン「壱角家」や「山下本気うどん」などの飲食店を展開するガーデン(274A・S)を訪問させて頂いたのに続き、今年4月に上場したアズパートナーズ(160A・S)に昨日足を運びIR担当者との面談をさせて頂きました。
 ガーデンは3200円の公開価格に対して初値が3060円と下回ってのスタートとなり、一時2620円の安値まで売り込まれましたが、先週は3055円の高値まで大きく戻ってきました。事業内容を十分に理解しない短期投資家の売りが長期投資家の買いで吸収されての反転上昇です。ラーメン店展開の企業は既に10社以上が上場していますが、家系ラーメン経営の時価総額670億円のギフトHD(9279・PER33倍)の親戚的な存在だけあって流石にPER16倍台は評価の余地があると気がついたのか、公開価格を下回った状況の同社に見直し買いが入ったとも言えそうです。

 ところで前述のマスク氏が日本のラーメンが大好きだと言うのは皆さん、ご存じでしょうか?日本に来たらラーメンを食べる。そうしたマスク氏の日本の食文化への評価の高さを知るとガーデンへの評価も異なったものとなるのかも知れません。

 アズパートナーズについては上場直後の高値2947円から残念ながらまだ4割ほど下げた状態が続いていますが、これも短期視点での投資家の売りに押されている結果だと拝察されます。しかもIPO時の公開価格1920円もまだ下回った状況でPERは7.9倍と言う水準。今3月期のEPSは226円の水準ですが、既に2Q段階でEPSは256.3円となっており、下期は創業20周年記念の経費や来期に向けた施設開設の経費を見込んでの先行経費による若干の赤字を想定した業績見通しとなっていますがこれは堅めないし余裕裡の見通し。
 これに対して18日に発売予定の会社四季報ではこの見通しを上回るEPSを出すものと推察されます。今期末の予想配当金は45.79円と中途半端な数字で表明していますが、時価1795円は2.55%という水準です。今期の業績は売上高が前期比4.0%増の178.42億円(2Q105.87億円、進捗率59.3%)、営業利益は同58.9%増の12.8億円(2Q13.03億円、進捗率は101.8%)となっていますが、皆さんの評価はいかがでしょうか?
 そのアズパートナーズが今回IRTVに出演したとしていますので、皆様も参考までにご覧になって頂くと幸いです。

 ガーデンもアズパートナーズもスタンダード銘柄でグロース銘柄のような成長性への評価が見劣りしているのかも知れませんが、その結果、公開価格割れという株価変動が見られます。それぞれ現実の経済環境下に即したビジネスを展開しキャッシュフローを生みしっかり配当も実施している好業績企業ではありますが、市場での期待値が低いためなのか株価は上場後比較的不人気の状況です。

 一方、10月29日に上場したAIプロダクト企業のSapeet(269A・G・公開価格1500円⇒初値2285円⇒高値8460円(3.7倍)⇒6日安値2570円、時価2678円)のように、まだ利益を生んでいなくても今後の成長期待から上場後大きく人気化する銘柄もあったりします。
 また、11月29日に上場した世界的ドローン企業であるTerra Drone(278A・G・公開価格2350円⇒初値2162円⇒安値2040円⇒高値2863円⇒時価2140円)は初値が公開価格を割れその後、大きく株価の上昇が見られた後に再び株価が低迷するといった展開を見せています。

 利益をまだ生んでいなくても今後の成長期待から上場後大きく人気化する銘柄もある一方で利益が出ていても株価は不人気という事例もあり摩訶不思議な株価の変動、評価が見られます。

 4日に上場した半導体製造装置部品販売・修理サービス、半導体製造装置の買取・売却支援会社のTMH(280A・G・公開価格1500円)は公開価格を42%上回る2128円で堅調に初値がつきましたが、その後は早くも
1713円まで下落するなど波乱の展開。PER20倍の水準に対する強弱感がIPO後に出ている状況です。

 今週9日にはエネルギー関連サービスのインフォメティス(281A・公開価格1080円)、12日のユカリア(286A・同1060円)、13日のラクサス・テクノロジーズ(288A・同281円)と続きます。
 18日にはNAND型フラッシュメモリをコアにした半導体メモリ事業を展開するキオクシアホールディングス(285A)がプライム市場に上場予定。同社は旧東芝メモリで2024年3月期の売上高1兆766億円、営業赤字2540億円から今期2Q決算で売上高4809億円、営業利益1663億円という実績を背景にしたIPO。公開価格は9日に決定されますが、仮条件の上限価格は1520円。フラッシュメモリは様々な生成AIの登場で需要拡大が見込まれ、データセンターやスマホなどのデジタル機器向けに今後の市場拡大が予想される中での上場となります。過去もIPOに挑戦した時期がありましたが、IPOに至らず、今回はシリコンサイクルの上げ基調の下で業績拡大の流れの中でのIPO。短期的な値動きに対して中長期的な一定のリスク要因は想定されるものの、師走のIPO相場で多少は関心を集めるものと予想されます。


 とにかく師走のIPOは忙しい。
 ここでは短期視点で捉えるのではなく中長期視点での企業研究にまずは努めて頂きたいと思います。


(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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