株の玉手箱 がんばる液晶軍団
恵和という会社の株価が上昇している。
決算発表直後は売られたものの、その後の株価切り返しは凄く、5月17日の2,168円が6月2日は3,205円まで急騰している。
事業は農業や鉄鋼、紙パルプ産業向けの包装資材、フィルムを手掛けていたが、1992年に光学フィルム製品に参入。
光学フィルムといえば日本ゼオンさんのゼオノアなどの位相差フィルムや、富士フィルムさんやコニカさんのTACフィルム、それを貼り合わせる日東電工さんなどが有名であった。
日本ゼオンで活躍された研究者の荒川さん(現在のゼオンナノテクノロジーの社長)は富士フィルムで視野角制御のフィルムを開発後に転職されゼオンに入社し、ゼオノアを大きく成長させた方。特に溶融押し出しに勝ることが競合より優位になった筈である。
当時、ゼオンの研究のYボスによればシクロオレフィンポリマーの末端を多少変更することで特許を回避したのが競合品で、デメリットとしては僅か3%含ませた不純物により粘性がアップし、溶融押し出しの歩留まりを悪化させるとの説明であった。競合は当初ドイツから日本の四国に外注先を変更したと思われますが、ゼオンも押し出しの成功に至るまでは苦労し、完成と思って投資家を北陸に招待し実演したら、実は???てことも。
その半年後にきちんと押し出しが出来るようになり2002年9月に試運転を見学させてもらいました。その翌月に子会社であるオプテス社は成功を発表したのです。
その後、延伸がドンドン進みゼオノアは勝ち組となりました。
自動車のガラスには遮音・遮熱対策でPVBフィルムを利用しますが、これで大成功したのが積水化学さんです。
PVAを購入しアルデヒド反応させてPVBを作る。言葉なら簡単ですが、積水化学さんが悪戦苦闘すること15年。作るたびに不良品で、これを取り除くのが至難の業だったとか。
どうもアメーバの様な気色悪いモノらしく、見学した研究者は東京人なら諦めてしまう代物らしい。それに耐え続けること15年の積水化学さんは流石です。見物した研究者は私の幼馴染です。
恵和さんは2019年10月に公開した企業ですが、設立は1948年でフィルムの老舗企業です。ゼオンさん、日東電工さんの偏光板と異なり守備範囲は拡散板で国内約6割、グローバルで約4割のシェアを誇るトップ企業です。
最近は売上高が全く伸びませんが利益はうなぎ登りで、低採算品からの撤退を行い全体MIXが大きく改善されてきています。
特に今回の株価上昇のポイントは液晶パネルのミニLED化です。
アップルが発表済みのiPadプロの12.9インチは従来の70個強のLEDから100μ程度の小さなLEDを1万個超配置し、コントロール領域を約2,600カ所に分割しております。そのため領域ごとにLEDをオンオフさせることからコントラスト比は100万対1と有機ELと並びました。
有機ELでの改良は進んでいますが、やはり静止画ですと焼き付けの残像から、ノートPCやモバイル端末ではミニLED液晶へのシフトが考えられます。高精細な4K化が背景にありましょう。
液晶から有機ELシフトと当然思っていましたが、一部液晶陣営の巻き返しが始まったと見ています。
恵和さんの資料によると新しく複合拡散板の項目が登場し、前期は年間で9,900万円の売り上げ実績で、これがミニLED向けだそうです。
今年は23億円の見込みが1Qで1億円しかなかったことで株価はショック安となったそうですが、強気の方にとっては絶好の押し目だったのかもしれません。
この複合拡散板というフィルム、一体どんなフィルムなのか開示されてないようですが、小さなLEDの光源を助けるための透過性の高いフィルムなのでしょうか? それともバックライト光源がブルーなのか? 量子ドットが入っているかもしれません。まさかカドミウムではないでしょうね? インジウムリンであることを願っています。
(あすなろ産業調査部)
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