百獣の王に憧れて
百獣の王。なかなかカッコいい響きではないだろうか。去年の11月頃、初めての11であるドロボーカササギを登った私は、来年の目標ルートを定めるためトポを読み漁っていた。そして12Aまでは登りたいと思っていたのでその過程の中では11台も当然入ってくる。そのうちの一本がこの百獣の王(5.11C)であった。瑞牆本の表紙に選ばれているのは誰も知っていてさらに不動沢の項にももう一枚載っているほどの★★★ルート。しかも登ってるのは平山ユージさん。これはやりたいと思ったものだ。
8月4日。私の誕生日にまつとさいとーさんとよろめきクラックをやりに行ったときにその姿を拝んだ。薄被りの垂壁、まつがテンテンとなかなか手強そうというのが印象だった。
そして9月に入って卍さんたちとの合宿で不動沢を訪ねてここで登ろうと決意したのであった。
2020.9.9
威圧的な壁、ゴールが見えない程の長さ。まじか…。って思った。
※大雑把なムーブの記載あり※
いざ、try。しかし登ってみるとホールドはしっかりと用意されている。しかも私の大好きなカチカチホールド。遠すぎず近すぎず絶妙な間隔が続いていく。途中に2ヶ所程、小核心とおぼしき場所があった。シビアな体制から次にとるホールドがあるのかわからないのがオンサイトtryだ。がんばって一手一足ジリジリ出していくとがんばりましたねぇって感じでかかりの良いカチを差し出してくれる。なんとか核心部まで辿りついたのだ。どうやらここから右にトラバースするようだ。しかしやりかたが二通りあるように感じたが、結局わたしはシビアな方を選んだようだ。この辺り、ヌンチャクをかけるのも大変でかけてからレストポイントまで戻るのもギリギリだった。
右足を外傾したホールドに載っけて左手の人差し指と中指のガストンチックなホールディングから足のマッチ。右手を遠いガバフレークへ向けて出すのだが、この一手では届かなかった。ここで限界に達してフワッとした感覚を覚えた。私のオンサイトtryは終わったのだけれど、まさかここまで勝負させて貰えたのは予想外であった。
トラバース部については上記から先、微妙なアンダーホールドでうまく体制を作り、フラッキングで保ちつつ、左手を逆相カチで保持してから右手をフレークに飛ばすという超絶バランスムーブで解決した。
うん、でもこれ疲れた状態でこなせるのだろうか?それが心配であった。
これが核心でもう上は心配ないだろう。そう思った私は馬鹿であった。終了点はもう目と鼻の先なのだが、ガバフレークから左上していく最後が実はほんとの核心なのかもしれない。やはりカチカチホールドで少し上にあがり、冴えないフットホールドでのトラバース。つかみ良いホールドが最後に待っているが、その間になんも見当たらない空間があるのだ。ここで何度か落ちた。
精神的な核心がここにあった。
時間を空けて2便目を出したがこのtryでは核心トラバース手前のカチで落ちた。そして雷雨が容赦なく襲ってきた。この日はここで諦めたのだった。
9.11
前日は坊抱で登って再び午後の雨に泣いた。しかし、午後登らなかったことが今日に幸いしたのかもしれない。
前烏帽子にいく予定だったが、あまりにも今日はカンカン照りで行ったらまともに登れないだろうと再び不動沢屏風となったのだ。今日で決めよう。出来たら1便で…。
1便目は最後の一手まで行ったのに最後の最後で落ちた。ガバを掴みきれなかった。まさかのゴール落ちにみんなからもええって声が。私が一番ええっですわ!
もう次で登りたい。そう思っての4便目はなんだがつまらない手順の間違いを繰り返した気がする。なんとか核心を越えてガバフレークで大レスト。そして登りだす。最後の所が心配だった。ひと吠えしてつかみにいくと、最後の最後にうまく手を送れる場所を見つけた。ここにきて余裕のクリップが出来た。あぁ登れたー。これでようやくイエロークラッシュに挑戦できる。そう思った。登れた感動はすぐに消えていくものだ。まだ登りたいルートたくさんあるから。
百獣の王ということで猫のポーズ