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☆サンタが来なかった話☆

幼少期、サンタが家に来なかった。
というか、サンタが来るという概念がなかった。

小学生になると、まわりの友達の家にはサンタが来ているらしいということを知って衝撃を受ける。
調査の結果、「寝るときに枕元に靴下を置いていたら来るらしい」という結論にたどり着いた。

そして私は、靴下を枕元に置いて寝た。
そのとき横には母が寝ており「その靴下は何か」と聞かれ、「サンタがプレゼントをくれるから置いてる」と説明した。

母は真顔で「おらんおらん」と言った。

そして次の日目覚め、靴下を見ると、中には何も入っていなかったー…。
(このあたりのかわいそうな話は著書「あかちゃんのドレイ。」2巻に描いてあります。)

「私にはサンタが来ない」という事実、
ここでどういう理由づけをするかで人間それぞれの個性が出るのだろう。

私は「なんだかわからないが、私が悪い子だからプレゼントをもらえないのだろう」という結論にたどりついた。

そしてピロミ少女はアグレッシブでもあった。
「プレゼントをもらうためには、悪いところを直さなくてはならない」

そこから私の人生の「悪いところを正す」旅がスタートしたように思う。

人からダメ出しをされるのが苦じゃなかった。
むしろガンガンダメ出しください!直してサンタにプレゼントもらうんで!という意気込みだった。
どこかおかしい人だった。

漫画家になってからもその旅は続いた。
死ぬほど編集さんにダメ出しされた。
どんどん直した。
同期デビューした人たちは、ダメ出しされることにキレてやめていったり、編集者とケンカしたりしていたけど、意味がわからなかった。
「直したらプレゼントもらえるのに?」と。

だがデビューして5年、6年……どれだけダメ出しを直し続けても、特に「人気が出る」というご褒美はなかった。
(まぁ直してるつもりで直せてなかったり、当然言うこと聞けない部分もいっぱいあったんだろうけど)

そしてやさぐれ、いろいろ諦めた頃に…やっと小ヒットが生まれた。

でもその頃にはもう旅の目的がわからなくなっていて、「自分にダメ出しする」というところだけがメインストリームになっていた。

人気が出ても、そこから落ちることは許されない。人気漫画家である自分しか認められない。
っていうか、言うほど人気ない。
もっともっと足りないところを直して、もっともっと精進しなければ…
(すべて無意識下で。)


あれから数年の時が流れ、最近は漫画業界以外の方と知り合うことも増えた。

そんな人たちの中に、「ヒロミさん、何か一緒に面白い仕事やりましょう!」と言ってくださる人がいる。
それは私の「漫画家」としての能力を求められているのだから、裏切ってはいけない…才能のない私ではいけない…というプレッシャーで、「期待に沿えるかどうか…」と言ったら、
「何言ってるんですか!漫画家の前に、ヒロミさんの人間性の部分で仕事したいと言ってるんです!」
みたいなことを言われて、目から鱗がボロボロボロ…と落ちた。

ここで聡明な皆さんはもうお気づきかもしれない。
前半の文章に戻ってほしい。
私は、サンタにプレゼントをもらえなかった理由を
なんだかわからないが」私が悪い子だから、と定義した。

この定義、この大前提が間違っていたのだ。

なんだかわからないが
そう、特に心当たりはないけど
「悪いところがある」と決めつけていたのだ。

別にプレゼントをもらえなかったのは、私が悪い子だったからじゃない。
当日急に靴下を持ち出して、サンタに用意ができていなかったのかもしれないし、私が具体的に「コレがほしい」って書いてなかったから困ったのかもしれない。
他にもいくらでも理由は考えられる。

私は自分で自分に「悪い子だ」という呪いをかけた。呪いを解くのに必死な人生だった。
なんならサンタを呪っても良かったのに…。

今の私から見れば、
「なにこの子、サンタを呪わず自分が悪いって!なんてバカで謙虚でカワイイ子なの!」
と思う。

そしてそんな私を好きだと言ってくれる人がいる。今までもずっといた。
私が本当の意味でそこに気づくか気づかないかだけだった。

クリスマス…いろんな人がいると思う。
プレゼントをもらった人ももらってない人も、笑ってる人も怒ってる人も泣いてる人も、誰かを呪ってる人も呪ってない人も…
どんな感情があっても、見方を変えれば必ずそこにはプレゼントが潜んでいる。
「愛すべき自分」が見つかる。

サンタクロースは、いる。

サンタが毎年平等に伝えたいことはただひとつ。

「みんないい子だよ」

ということだ。

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