漫画が描けなくなった私とAI
いやーここしばらく、もうまっったく、ぷっっっつりと漫画が描けなくなってしまって、苦しんだ苦しんだ。
ここまで描けなくなってしまったのは、二十数年に及ぶ漫画家人生で初めてのことだった。
「描かない」という選択肢をとったことはあったが、ここまで「描けない」状況になるとは…(小さく「描けんわ!」ってなることはしょっちゅうだけど)。なんか「命の危機」に近い絶望感を感じた…。
ちなみになぜ描けなくなったかはこちらをご覧ください↓
連載をお待ちいただいている皆様には、重ね重ね申し訳ありません。。
とはいえ、描けなくなってるのはここ2ヶ月くらいのものなんだけど、毎月連載をしていた身としては長く、何度も、描こう→描けない→描こう→描けないを繰り返して永遠を感じ……
この感覚は、「お母さーん!」って叫ぼうとしてるのになぜか口からは「うんこ」という言葉しか出ない、みたいな……
意味わかります?まあ苦しいんですよ……。
…で、まあやっぱり「時薬」ってなもんで、時間の経過とともに少しずつ「あ、描けそうかも」みたいな糸口が見えてきつつあるんですけど、描けないあいだにじみじみ思ったのはね……世の中にこーーーんなにも溢れかえるほどある漫画の数々…よくもまあこんないっぱい、こんっっな大変なものをいつもいつも描いてる人たちがいるもんだよね!!
0から話考えて、プロット書いてネーム描いて、何回も直して、下絵描いてペン入れして……
みんな頭イカれてんのか!?こんなのやってるなんて人間技じゃないよ!!全員国民栄誉賞だバカタレが!!
…そんなことを思ってました…。
で、大なり小なり多くの作家さんが「話が浮かばない」とか「思うように描けない」とか、いろんな苦しみを味わいながら描いてるわけじゃないですか…。
私も描いてる時いつも「もっとこう描けたら」とか「こんなの面白くない」とか、いろんなダメ出し無意識にしちゃってるけど…。
話は変わるけど、最近「AI絵師」なるものがいるそうじゃないですか。
なんかすごいクオリティなんですよね?AI絵師(あんまり知らんけど)。
でもね、私はちょっと思うよね…AI絵師くんってかわいそうだなって…。
だってどれだけ上手い絵描いても下手な絵描いても、一喜一憂したり、もがき苦しんだりしたりできないわけよね?
我々人間は、出来るんだな…。「絵を描く」という、人間が生きるのにおよそ必要ないようなくだらないことに、こんなにも苦しんだり喜んだり感動を味わうということが。
よく「AIに負ける」とう言葉を聞く。
もちろん「上手さ」といところではAIに敵わなくなる日が来る(もう来てる?)。
人間が「技術を高める」「完璧さを目指す」というところはもう頭打ちの時代だ。
でも「ウッソ、人間、これだけ時間かけてこれだけ大変な思いして、この下手さ!?草草……だがそこがいい!」「愚かな人間、大好き!!」みたいな時代が来るんじゃないの?とも思う。
同じ絵に無駄な感情が込められるのは人間だけだし、その感情の込め方が千差万別。それが表れるディテールが千差万別。
それを感じ取れる人間と、そうじゃない人間と、分かれていくのかなーとも思う(知らんけど)。
とりあえず私は人間で良かった。無駄な感情を味わえて良かった。
昔から人間が大好きです。特に人間のダメなところが。
ダメなところを克服しようとして、誰かに勝とうとして、必死に虚栄を張ってみたりするダメさもまた大好きだ。
そんなわけで私は漫画で、ダメな人間ばかりを描いてます。
買ってください。
(という見事な着地の宣伝でした。)