アイヌ民族運動の裏にはチュチェ思想があるのか?
結論から言うと「アイヌ協会やアイヌ民族運動の裏にはチュチェ思想があるというのはデマ」である。
北海道アイヌ協会のある会員がチュチェ思想関連団体の機関誌に「アイヌ民族が誇りを持って生きる」というテーマで寄稿したり、集会で発表をしているのは事実である。しかし、その会員が思想に影響されて、北朝鮮の最高指導者を崇めている痕跡もないし、アイヌ協会や民族運動がチュチェ思想に影響されている根拠はない。
チュチェ思想の影響はないという根拠となる、アイヌの研究者の証言ツイートを紹介する。
アイヌがチュチェ思想に関係している〜とかゆうデマがまだ流行っているのか。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
バカバカしい。
私の知っている限りの事実を書いておく。チュチェ思想の人たちはアイヌに擦り寄ろうとしたけど、成功してないですよ。
十年ほど前、東京でアイヌ関係のイベントに行き、レラチセなどでご飯を食べていると、メンバーはだいたい知り合いになる。当時アイヌ関連のイベントもそれほど多くなく、熱心なメンバーはある程度固定化されていた。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
その中で一人、もと教員だという女性とご挨拶ぐらいはしていた。
誰も話の内容に興味がない、反応がない、それなのに座っている。イベントのコンセプトも意味不明、ちゃんと何かの目的があってオーガナイズされているわけではない。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
そのくせ二次会は席次に異常に拘っていた。
彼女はしょっちゅう電話をかけてきて、意味の通らない会話をするのが、私には大変ストレスになった。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
いろいろ腑に落ちず、各方面に照会したところ、その会の正体がチュチェ思想だとわかった。
「北朝鮮で将軍を称えるアイヌ踊りをやれと言われたけど、断った」というアイヌもいた。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
私は、講演会しろと言われた。「どのくらいの人数が欲しいですか?二百人くらいでいいですか?」
今思い出したが、花火大会?をするのに講演会をくっつけたかったようだ
正直、当時の私は自分の考えをまとめて人前で話す機会は欲しかったし、何らかの宗教?であっても、アイヌの力になってくれればいいと考えるところもあった。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
でもそれが明かされない目的で、会の正体を偽って、聞いていない観衆の前で話すのは、いくらなんでも意味がない。
だから電話が来たときに、私が調べた事を彼女に問いただした。そうしたら涙声になって、電話は二度と掛かってこなくなった。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
私にとってはそれだけの関わりである。
アイヌはマイノリティすぎて、アイヌとして話を聞かれなかった時代と場所が多すぎる。そういうときに機会を提供された人が、正体を知ってか知らずか、使われてしまう事もあったろうと思う。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
かといってそれはそれだけのこと。アイヌの内部に警戒はされても、一切浸透はしていない
チュチェ思想とアイヌは一切関係ないと私は断言するね。アイヌの内部でチュチェ思想の人に迷惑をかけられたという語りはいくつか聞いた事はあるが、チュチェ思想の人のおかげで助かったという語りは、聞いたことがない。バカバカしい限り
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
アイヌに関わってくる和人はリベラル的な人が多い。チュチェ思想の人たちはそういう人たちと見分けがつかなかった。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
「和人支援者」にいっぱい怪しい人は紛れているし、70年代からアイヌはそういう人に騙されてきたので、警戒心が強い。チュチェ思想ごときにやられるわけがない
たまにチュチェ思想に協力するように見えるアイヌがいたとして、それは使える機会を使ったんだと私は想像する。おそらく現状打開のための模索の一方法であり、それだけで心底信者になったと解釈できない。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
ましてや民族全体に妄想を広げられても、困惑するばかりである
【補足】上記のチュチェ思想関連団体については日本人で構成された団体です。
問い合わせが来たので自分の不明を恥じながら書いておきます。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
この団体の構成についてですが、おそらく日本人・和人がその中心的な位置を占めるはずです。朝鮮韓国にルーツのある人たちではなく。
これをもって「やっぱり朝鮮のスパイがいるんだ」と解釈するとしたら、それはきっと正しくないです。
他にも証言があるので紹介をする。
アイヌとチュチェ思想の関係が話題になってるので、私の知ってること、認識を書いておく。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
結論から言うと、アイヌ協会をはじめとする民族団体に対するチュチェの影響や支配関係などはない。
ただし、まったく無関係かというとそうとは言い切れないが、ごく一部の事例をもってそれがさも全体かのようにデマを飛ばすのは悪質な行為である。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
チュチェ思想を信奉している団体や、その強い影響下に置かれている市民団体が北海道や関東のアイヌ団体や個人に接近したことは過去にある。もしくは今も多少は行われているのかもしれない。しかしそれはごく一部の話である。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
関東で盛んに行われていたのは80年代から90年代初頭ではないかと思う。90年代にはまだその残党のような人たちをアイヌ関係の集会で時々見かけたが、今も多少いるようである。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
ある人が、日朝友好のための集いがあるので来て舞踊を披露して欲しいと言われて、行ってみたところ、話が違ってキムイルソンの生誕記念の集いだったという話を東京で聞いたことがある。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
彼らはアイヌ民族の権利回復などをスローガンに掲げているし、背後にある思想を隠しているので、とりあえず味方かと思って、よく分からないで集会に参加したり、機関誌に投稿した人もいる。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
中にはその背後の団体を知って手を切った人もいる。
— poronup (@poronup) July 26, 2019
アイヌ民族運動の裏にチュチェ思想があるというのはデマである
アイヌ民族とチュチェ思想が関係あるのか私も調べてみましたが、まるで無関係だと思います。70年代初頭までは北朝鮮の実態があまり知られておらず、好意的な知識人も少なくありませんでした。他のヘイトスピーチと同じく、その時期に構成されたナラティヴへのバックラッシュと在日差別の融合でしょう。
— 岡和田晃_7/12刊『傭兵剣士』T&T完全版対応 (@orionaveugle) July 13, 2019
そもそもチュチェ思想とは、資本主義諸国を相対化する理論的根拠として、ヘーゲルとマルクスを融合させて実存主義風に味付けし「主体」の自立を解くものですが、肝心の「主体」を体現するのが「金日成・金正日」だとしている点が問題なのです。アイヌの思想史的な伝統とは、どうにもあいいれませんね。
— 岡和田晃_7/12刊『傭兵剣士』T&T完全版対応 (@orionaveugle) July 13, 2019
×自立を解く→○自立を説く
— 岡和田晃_7/12刊『傭兵剣士』T&T完全版対応 (@orionaveugle) July 14, 2019
お、インテリの解説は違いますね。
— かおりんだい (@kaorinda_i) July 13, 2019
アイヌはカムイさえ対等に交渉するのだから、誰かを崇めるのはヘンな感じ。チュチェ思想がアイヌと合うわけがない。
アイヌはカムイ(神)とさえ対等に交渉をするという思想史的な伝統があるのだから、「金日成・金正日」を崇めるというチュチェ思想とは相容れないのである。
そもそも当初のチュチェ思想については、マルクス思想とヘーゲルを組み合わせたものであり、北朝鮮の最高指導者を崇めるような独裁の肯定ではなかった。それに金正恩政権ではチュチェ思想にはあまり言及されておらず、デマとしても周回遅れである。
補足ですが、マルクスの思想にはすでにヘーゲルが入っていますが、それらを解きほぐして接続し直そうという試みが、第二次大戦後にはあちこちでなされました。革マルの黒田寛一の『ヘーゲルとマルクス』など。これ自体は硬派な理論書ですし、チュチェ思想も当初は独裁の肯定ではなかったようですね。
— 岡和田晃_7/12刊『傭兵剣士』T&T完全版対応 (@orionaveugle) July 13, 2019
「拉致」前にチュチェについて一番詳しいまとめは公安の人が防衛大の紀要に書いていた論文でしたし、金正恩政権になってからチュチェ思想がどうとあまり言わなくなってきてもいるので、デマにしても周回遅れ感がありますね。おくさんのまとめは『アイヌ民族否定論に抗する』botにも登録いたしました。
— 岡和田晃_7/12刊『傭兵剣士』T&T完全版対応 (@orionaveugle) July 13, 2019
ウィキペディアでも当初の思想は歪められて、北朝鮮の最高指導者を崇拝する宗教になっていると批判している。