おじさんの遡上

2025.2.3
突如夫が1週間の休みを賜った。

年末年始が短い夫の会社はいつもこの時期リフレッシュ休暇をくれるのだけれど、実務の忙しさ(人手不足)と上層部からのプレッシャー(休みの強要)に挟まれて、かつ部下の休みを優先した結果、夫の休みはいつもポコリと唐突だ。

「1週間人前に出なくていいから、ちょっとシミ取り行ってくる」休みの初日にいそいそと美容整形外科に行った夫から「先週顔脱毛したから1ヶ月はダメだって」と肩を落としたLINEが入った。

顔脱毛をしてシミ取りに行くけれど夫は美容系男子ではない。家から出ない時は2日間風呂入ってないよね？なんて日もざらだ(匂いはしない)し、汚いまま寝て朝シャワーだし。ボディソープで顔を洗うタイプ。

美容整形行くなら毎晩風呂入りなさいよ。と思うのだけれど、それに夫は否と答える。
「毎晩風呂に入らなくていい様に美容整形に行くんだよ」「俺は手間を金で買うんだ」だって。

…ちょっとよくわからないです。

夫はいかに楽に己が許せるおじさんで生きていけるかの最適解を探している。…ほんとよくわからないです。

大手の美容整形外科、「安いからか待合室が人で溢れていた。」「その8割が女性、2割がおじさんだった」夕食を食べながら夫は生き生きとリポートしてくれた。
「おじさんなんだ」聞き返す私に「うん、おじさん。…だけどなんて言うか…ただのおじさんじゃなくて…ちょっときれいなおじさんだった」
…なんかわかる気がする。昼にパスタ屋で食べたちょっとおしゃれな草が入ったサラダを思い浮かべた。家では決して出ないやつ。

「で、シミ取り出来ないって言われてどうしたの？」その後の夫の行動を聞くと。
「ラーメン屋に行った」との事。

夫、キレイなおじさんの群れからただのおじさんの群れに戻って行ったんだな、と想像するとちょっと面白い。
鮭の遡上が頭に浮かんだ。

今夜は鰤の照り焼きだった。最近うまく照らない。

食後、ただのおじさんが、私のおじさんになったリビングで「ねえ、明日休み？明後日休む?」
1週間予定がないおじさんがうるさい。