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お迎えタクシー

2007年6月

授業が終わり下校の準備をする。
今日は全生徒一斉下校の日だ。慌ただしく終わりの会をしてグラウンドへ向かう。地区ごとに1列に並び班長が点呼をとる。

梅雨の時期だが今日は雨は降っていなかった。
傘も持ってきていない。きっと帰り道30分の間ももつだろう。


早く帰りたいのに生活指導の先生が出てきて挨拶をする。いらないのに、と内心思う生徒が9割であろう。明らかにマイノリティの先生の立場を想像する。
ショートケーキだと先生はイチゴになるのかな。いや、イチゴはもうちょっと割合はあるかな。それなら先生は…
なんて考えているうちに挨拶は終わっていた。


私は遅れぬように班の列に早足でついて行く。
先生は学校の門までしか来てくれない。
ここから出れないのか、先生かわいそう、と思いながら門を出ると見慣れた白い車が歯医者の駐車場に止まっていた。歯医者は川を挟んで学校の対岸にある。短く小さな橋を渡ればすぐだ。

白い車は祖母のだとすぐに分かった。私は列から離れて車に駆け寄る。

「みんなも呼んできなさいや。」


祖母は世話焼きなので車に乗れるだけの人を乗せてそれぞれの家まで送る。道中に今日の出来事を聞いては楽しそうにしている。
私は祖母の楽しみを潰すまいと思い、同じ地区の子たちを呼んで一緒に車に乗った。


他の地区の子たちが羨ましそうに見ていた。迎えに来ていた人は周りを見渡しても祖母だけだ。
私は、祖母の楽しみの一つなんだから仕方ないのよ、とすました顔でいた。実際には合っていたが、小学校低学年の私にとっては30分歩くのはかなり大変なことなので、一石二鳥だというのは隠しておいた。

この祖母のお迎えタクシーは私が高校を卒業するまで続くことになる。

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