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【天満天神繁昌亭】人生初の落語が最高だった話

先週の土曜日、天神橋筋商店街まで足を運んでウォーキングを兼ねた観光をしてきました。
健康診断の結果がちょとよろしくない…だったので、日本一長いアーケード商店街を端から端まで往復して健康になろうという魂胆で、1丁目から6丁目の端まで歩いてきました。
これがとても楽しかったので、月曜日の祝日も歩きに行ったのですが、その帰り道にふと横道を見ると何か特徴的な建物が見えました。カフェもいくつかあったので、何の気なしに見に行ったらなんと落語が見れる施設!繁昌亭というらしく、上方落語が見られるそうで。

ちょうどお昼からの部が始まるタイミングで、当日券も買える。しかも2,800円!さらにイオンHOPカード提示で割引されて2,500円で見られるとのことで、その場のノリで見ることにしました。
ありがとう加賀の平和堂。作ってて良かったよHOPカード。関西に引っ越してから出番が全くなくなったけど、輝ける場がここにあったよ。

施設の前には素敵なお着物を着た女性たちが嬉しそうにワクワクしながら待っておられて、観光できたであろうご夫婦も嬉しそうに写真撮影などされていて、こっちまでウキウキしてしまったのも観ようと決めたきっかけでした。
ありがとう着物の女性たち。ありがとうご夫婦。


私は落語というものは全く触れてこなかったので、「噺家の方が舞台の真ん中に座って決まったお話をアレンジしつつ話す」みたいなボヤ…としたことしか知りませんでした。
お好み焼きは丸くてキャベツを使うらしい…みたいなレベルの知識力。
有名な「まんじゅうこわいのやつ」「死神(米津玄師で知った)」「寿限無」くらいは知っていましたが、それもまた「だいたいこういうオチ」みたいなことまでしか知りません。
果たして、こんなにわかヒューマンが楽しめるのか。


結果:めちゃくちゃ楽しめた!!!!


落語すごい!!!!!!!!!


いや本当にすごかったです。
落語ってすごい。落語家ってすごい!!!

すごいとしか言いようがない。
ガラスの仮面って誇張じゃなかったんだ…と本気で思いました。
その理由は後述するとして、月曜日の繁昌亭・昼席で観た演目の感想を覚えているだけ書いていこうと思います。本当に全部面白くて、観終わる頃には満身創痍でマジで疲れてたので記憶が曖昧な部分もありますがご容赦ください。

まずは、当日繁昌亭に出演されていた皆様に心から感謝申し上げます。

一才の誇張なく、

私の人生初めての落語体験は最高のものとなりました!


そして、繁昌亭スタッフの皆様、能登半島への支援本当にありがとうございます。私は地元が石川県なので、募金箱設置のアナウンスを聞いた時、本当に嬉しかったです。


①桂 かかお 『動物園』

初手がコーンロースタイルの若者だと誰が予想できるんじゃい。
「落語家ってコーンローOKなんだ!」という感動がまず一番最初になるとは思わなかった。伝統芸能って厳しいイメージだけど、意外とこういう"今風"を取り入れていける間口があるんだなぁと。しっかりそこでも笑いを生んでいて面白かったです!
自己紹介を兼ねた雑談(という言い方は違うんだろうけど一旦これで許してください)が始まり、落語って最初はこういうつかみから始まるんだ…と感心しながらお話に笑っていたら、話の区切りとともに畳んだ扇子を舞台にカァン!!!と打ち付け、途端に落語が始まりました。

す、すげぇええええええ!!!!

扇子を!!舞台に打ち付けることで!!雑談(?)から落語に切り替える!!??そんなことするの????!!!!
すご!!!!!ヒェーーーー!!!!!!!!!

音にビビったのは内緒である。初心者だから許してください。

始まったのは、「とにかく楽して稼ぎたいンゴねぇ」という男が『移動動物園のトラが死んだから、代わりに着ぐるみを着てトラになる仕事』を紹介され、ぶつくさ言いつつトラのふりをする…というお話。
これがまた、面白い!!すごかった。これからずっとすごいしか書かないので申し訳ないけど読んでいる方の語彙力でいい感じにしてください。

まず、噺家の方はひとりで何役も演じ分ける。これが本当にすごかった。舞台に居るのは桂かかおさん一人なのに、ハッキリとした物言いの男性と、ちょっと抜けた主人公の男性が確かに目の前に存在している。
声色や話し方、顔の向きや仕草で別人になり、場面転換ではまた扇子がカァン!!と打ち鳴らされて、私が観ていたコーンローの青年は若人に呆れる男性になり、ちょっと抜けていてトラの着ぐるみを着て檻をうろつく男になり、動物園ではしゃぐ子供とヤバい母親になっていた。すごかった。
ラスト本当にハラハラしていたけど、オチもまた秀逸で笑い転げてしまいました。

途中、トラの歩き方を動物園の運営者が主人公に指南する仕草があるのですが、恐らく、落語家の方々は「トラの仕草を真似る人間の動き」と「本物の虎の動き」はまた違う表現をされるのだろうな…と思いました。
同じ生物、同じ仕草のようでも、対象や物や表す場面や状況が違えば全く異なる演技になる。
奥深いです、落語。

落語といえば昔から伝わっているお話、というイメージがあるけれども、動物園という題材は割と近代に作られたものなのかな?
それとも江戸時代とかにはすでに見せ物小屋的なものとして存在していて、そこから近代アレンジが加わっているのだろうか。
そんなことも考えさせられて、落語の奥深さを感じました。

落語ってこんなに面白くて、こんなに凄いんだ!!!という幕開けでした!


②月亭 太遊 『十徳』

2番目は月亭太遊さんの十徳。
話し相手が変わった着物"十徳"を着ていることに気づいた主人公が、相手から十徳の由来を聞き、それを近所の生意気なガキ()に話してやろう!あいつはこんなこと知るまい…とガキに話に行くが…。みたいなお話。

これもべらぼうに面白かった!!!


ここでも話の始まりや場面転換で小さな木を打ち鳴らしていて、なるほどな、これが上方落語のルールなのね?わかったぜの気持ちになりました。落語全体のルールだったらごめんなさい。
(※調べたところ、上方落語の特徴だそうです)

「表から見たら羽織の"ごとく"、後ろから見たら坊さんの衣の"ごとく"。ごとくごとくで十徳だ」という言葉遊びを披露したくてかけ出した主人公が、ウキウキと近所のガキ()に披露しようとするも、うろ覚えで自分の言葉と言葉遊びに翻弄される主人公の様子の演技がもう本当に面白くて…面白すぎて死ぬかと思った。
うぐうぐ泣きながらもういややぁーーーと限界超えてる演技がおもしろすぎた。
ウキウキ話し出したり悩み始める主人公と、はぁ?はぁ…とあきれたような見下してるような絶妙な雰囲気で聞くガキ()のテンポ感が見ていて最高!

十徳という着物がどんなものなのかも調べてみたくなったし、桂かかおさんの『動物園』とはまた違ってこちらはまさに江戸時代の一幕と言った雰囲気。
町人たちの元気の良さ、着物一枚で話が生まれる落語というものの凄さを味わいました。


③笑福亭恭瓶 『大安売り』

3席目は笑福亭恭瓶 さんの『大安売り』。
最近贔屓の相撲取りがいるんだよねぇと話していると、ちょうど向こうから件の相撲取りがやってきて、江戸での戦歴をウキウキしながら問いかけるものの…?というお話。

これもまた面白かった… 。推しにあってテンションが上がっている町人さんと、どことなく東北あたりのイントネーションが混じるお相撲さんの掛け合いが、息を吐く間も無く観客を笑い殺しにかかってきて、本当に死ぬかと思いました。
お相撲さんの勝敗結果を聞くたびに( ゚д゚)とする町人さんの顔がまた面白くて面白くて…。
これもまた、笑福亭恭瓶さんの町人とお相撲さんの演技の転換がよかったです。
隣にいる町人に話しかける時の表情やコミカルな動きがどれもこれも楽しい!そして、お相撲さんの話を聞いているこちらも「次こそは勝った話が聞けるのでは」という淡い期待を抱いてしまう。
町人さんと一緒に思わず前のめりになっていました。
十徳も大安売りも、全く知識のない初見だからこその面白さを全力で浴びることが出来ました!

なんならもうここら辺から笑いすぎて疲れてた気がする。それくらい最初から笑いっぱなしでした。


④旭堂南海・宮村郡時『書生節』

一席ごとにスタッフさんが舞台のマイクや机を整えに来られるのですが、ここにきて漫才をする時の高さのスタンドマイクが出てきて一体なんだ!?と思ったら、ヴァイオリンを持った書生姿の男性がお二人登場しまして。

落語観にきたらヴァイオリンも聴けるの!?お得すぎんか…????

2500円(当日正規料金2800円)のもとがすでに取れてしまっていてちょっと慄きました。これこそが大安売りなのでは…

書生節とは、明治・大正時代の学生さんたちがヴァイオリン片手に流行歌の替え歌を時事ネタを挟みながら歌い上げるというものだそうです。
調べようと思って検索したら、まさに拝見したお二方のnote記事がありました!
ぜひ読んでみてください。

時事ネタということで、少しどきりとしたのが正直なところです。時事ネタで能登の災害やそれに関する政府や行政批判をされたら、その時は席を立とうと思っていました。
私たち北陸の人間は、被災地をだしにした政府批判やデマに本当に苦しめられています。それ故に、時事ネタと言われた時、身構えました。

が、しかし、始まったのは痛烈批判のようなものではなく「ニュースをうっすら追うくらいでもワッと笑えるくらい有名な時事を"楽しめる"ネタ」でした。

能登ネタはありませんでした。そりゃそうか。
(でもそれくらい本当に、能登半島北陸の復旧復興に対する批判は使ってほしくないのです。)

ネタが始まって、ほっとしたと同時に、身構えてしまった事を少し恥ずかしく思いました。

大正時代に流行した歌謡曲「コロッケの唄」から始まった書生節は、ほがらかな歌声とバイオリンの演奏と共に小粋でンフフと笑える時事ネタもりもりでとてもとても楽しかったです!
自分は別のSNSで“揚げたてコロッケ”という名前を使っているので、初手がコロッケの唄で色んな意味で笑ってしまいましたし、嬉しくなりました。
持ち歌にしよう。

阪神ネタや生駒山ネタは、流石お客さんのほとんどが関西の方であろうということで大爆笑!
自分は石川県が地元なので、生駒山ネタで地元心からの笑いを体験できなかったのが残念…!!生駒山、いつか登りたいですね。

書生節という文化を令和に見られる、知ることができることの感動。
これからの活動をもっとたくさん見たいと心から思いました!


⑤桂 そうば 『上燗屋』

5席目は、しこたま酒を飲んできた酔っ払いが上燗屋という飲み屋で酒を飲みくだをまき…やっかいな酔っ払いと、その勢いに絡まれ飲まれ困惑する店主とのかけあいのお話

だったんですが

死ぬほど面白かったです…

まず酔っ払いの演技がすごい!!!!!!!!酔っ払いなんですよほんものの。
おるーーーーーーーッッッこんなおっさんおる!!!
後ろに座ってたカップルが「いるよねこういう酔っ払い…笑」とつぶやいてて、ワカルゥーーーーーッッッッてなりました。いや本当にその酔っ払いがまためんどくさいことをやらかすんですが、なんとも憎めなくて面白くて、そしてうるせーーーんですw
「鰯って漢字はどう書くかわかるか?ええか、今から俺が鰯って漢字を体で表現するからな…」と鰯を表現しだしたとき、ここが自宅だったら床に伏せてしまうくらい笑いました。

豆をチュ…とつまむしぐさや表情、音すら面白い。
どの方もそうなのですが、扇子や手ぬぐい、あるいは身振り手振りだけでその場の風景がありありと浮かぶんです。

ガラスの仮面で、主人公のマヤが学校で演じたパントマイム劇で「うそ…今ベニスの風景が見えたような気がしたわ…」と目をこするシーンがあるんですが、まさに落語という芸能で私はそれを体験しました。


屋台に並んだ大皿料理、その向こうで困った顔をする店主。
蒸気のたっている熱燗、豆の転がったカウンター。
そこで暴れまわる憎めない酔っ払い。

マヤ、恐ろしい子…(とてもちがう)


⑥笑福亭 松喬 『まんじゅうこわい』

町人たちが飲みの席で自分たちの一番好きな食べ物と一番嫌いな食べ物を発表し合っていると、一人の男が「俺は饅頭が恐ろしい…」と心底恐ろしそうに震え出し…。

みんなの好きな食べ物、嫌いな食べ物発表会が始まった時点では全く気づかず、落語家さん演じるたくさんの男たちの表情や声色にうおおすげえ…!!と感動していたのですが、まんじゅう嫌い?まんじゅう嫌い!!????

まんじゅうこわいのやつだ!!!

と思わず大興奮してしまいました。

マジで初見が故の感動。まんじゅうこわいのお話ってこんな始まり方だったのか!
(この記事のためにお話のタイトルを検索したら、本当に「まんじゅうこわい」だったのにビビりました。)

まんじゅうが恐ろしいといった男の家に、いろんなまんじゅうを投げ込んでおどかしてやろう!とニヤニヤ計画を立て、さまざまな高級和菓子を買い集めた男たち。そのラインナップがまた面白くて、老舗から関西の定番おみや、はては551蓬莱の豚まんまで出揃って会場も私も大笑いしました。
知らないお菓子があったのがくやしいですねーー!名前は覚えていないのですが、小ぶりなお菓子が気になりました。どこで買えるのか、食べてみたいです。

はてさて、しこたま高級和菓子と豚まんを買い込んだ男たちがそろりそろりと例のまんじゅう怖いの男性の家に辿り着き、寝込んでいるのを確認するや合図とともにまんじゅうを投げ込むシーン、宙に舞う高級和菓子たちとわぁーっと盛り上がって笑いを堪えている男たちのコミカルさが本当に楽しかったです。

そして、さまざまな菓子+551に囲まれた男は、ひとつひとつ嬉しそうに食べ始めるのですが、ここからが本当に凄かったです!
まんじゅうを食べる、最中を食べる、八橋、ド忘れした小さいお菓子、それらの食べ方が本当に綿密というか、緻密というか、「食べているふり」なのに、本当に食べているように見えるんです。
饅頭の食べ方と最中の食べ方、手の仕草や口の形、咀嚼の仕方、粉が落ちるんだこれ、と笑いを交えながらの表現。

まさに、これが"演技であり表現"なんだ…と、目の前で起こっていることに感動した瞬間でした。

まんじゅうこわいのお話がなぜメジャーなのか、その一端を知れたような気持ちになりました。
これが私のまんじゅうこわいの初体験で本当によかったです。


ここまでが前半でした。
前半だけでもう本当に満身創痍。笑うって体力使いますね…!
こういうのって経験の浅い方から始まっていくものなのかな?となんとなく思っていたのですが、私にとってはずっとチャンピオンに殴られているような感覚でした。


⑦露の紫 『手向け茶屋』

今回の公演では紅一点、露の紫さんがお話ししてくださったのは、嫌いな客が訪ねてきたのを嫌がった花魁が、「そうだ!死んだことにしなさい」と従業員の男性に無茶ぶりをしたことから、その客と"本当は生きているけど死んでる"花魁のお墓参りに行く…というお話。

これがもうずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっとおもしろかった…

面白いばかりで申し訳ないんですが、本当に開演してから閉園までずっと面白かったんです…。

座布団の上で歩いているしぐさをされていたのですが、これもまた風景が見えてくる!
(脳内で想像できる範囲の)遊郭であろう廊下を行ったり来たりする従業員の男性。本当に良い意味で関西の女性!という明るくてきぱっとした、きっぷのいい、それでいて花魁らしいわがままさもあるてこずる姐さん。
花魁の名前が「てこずる姐さん」だったのもオモシロポイントだったのですが、調べてみたらこのお名前は露の紫さんのアレンジだそうです。

公式動画があったので、ぜひ観ていただきたい!

MCだったの!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!??!?
講座受講から!?!?!?!???!?!?!??!すごすぎ……すご、すごすぎ!!!!!


お客のキャラもとてもおもしろく、いやぁ確かに田舎ものっぽい雰囲気だけどこのお客はいい男なのではないですか姐さん!?でも嫌がるってことはそれなりの理由があるのかしら姐さん…!?と姐さんに心の中で問いかけたり、墓バレ(?)にハラハラしたりと大忙しでした。
てこずる姐さんのお話をミックスジュース飲みながら聞きたいな…と思うくらい、登場人物全員に愛着がわくお話でした。

墓バレ対策が物量でどうにかする!!というおバカ大作戦だったのがめちゃくちゃおもしろかったですし、昔から物量で殴る!!!みたいなネタで人間は笑っていたんだなぁ…人って変わらないな、とご先祖様にシンパシーを感じたりしたお話でした。


⑧笑福亭 仁昇 『手水廻し』

笑福亭仁昇さんからは、手水という言葉は大阪独特の言葉ということで、大阪からの旅客から「手水を廻してくれ(洗面道具を持ってきてくれ)」という言葉の意味がわからずああでもないこうでもないと頑張ったり、自分たちが「手水を廻してくれ」と注文する側になればいいのだ!と閃いて大阪の宿に泊まりに行き…というお話。

上方落語は大阪の方の落語であるっぽい…というのをここまででうっすら…と察していたわたくし、ここで「まさに大阪文化に根付いたお話」に感動しました!
手水はなんとなくお手洗い…という意味で認識していたのですが、大阪の方では昔から洗面所や洗面道具などのことを手水と呼ぶとのことで、しかし地方が変われば言葉も通じなくなる…(方言あるある)そういうすれ違いが昔からあったというのがよくわかるお話でした。
兵庫の宿に泊まった旅客、部屋からの景色や朝の空気が心地よく、ここで顔を洗ったらさぞ気持ちよいだろうと思い「手水を廻してください」と言ったけれども、言葉の意味が分からず宿の人たちは大慌て。集落でも頭のいい坊さんに知恵を借りに行ったもののまさかの読み違い…その読み違いもまぁとにかく面白すぎる!

結局わからないまま旅客を怒らせてしまった旅館の人たちは、今度は自分たちが大阪に赴いて言葉の意味を探ろうと必死になる…その知恵がまわるんだかまわらないんだか、手水もまわらず頭もまわらずいや頭は回ったんだけれども…というドタバタすれ違いコントのようなやりとりにヒィヒィ笑ってしまいました。

洗面器に入ったぬるま湯その他を必死に飲む姿は、不味くて量が多くてしんどい…という二人の辛さがひしひしと伝わってきて、見ているこちらもしんどくなるくらいでしたw

大阪の言葉、その地方の言葉、そこから生まれるお話もあるのだなぁとますます落語の奥深さを感じました。

⑨伏見紫水 『曲独楽』

独楽を使った伝統芸能、というのはなんとなく知っていましたが、少し毒舌で場の空気をドッと沸かせる面白いトークとともに、独楽がとんでもないことになるものすごい舞台!
手品のような仕込みやトリックはなく、修行して会得するタイプの芸である、と落語家さんがおっしゃっていましたおっしゃっていましたが、この細やかでダイナミックな芸を会得して人前に立つに至るまで、この方がどれほどの修行をしたのだろう…と胸が熱くなりました。
刀の切先で独楽が回る曲芸が特に好きでした!
刀剣乱舞ファンの方はちょっとうおおー!となるのではないでしょうか。
扇子の上を廻る独楽、特有の回し方、どれもこれも目で見るからこそ面白い。
落語を見にきて、こんなふうに複数の伝統芸能を見ることができるのはとんでもないことだなぁと改めて思いました。


⑩桂 春若 『三十石』

最後は桂春若さんの短くて秀逸なジョーク集と、お伊勢参りから大阪へ帰る人々が京都から乗る船の情景を演じる三十石。

これがもう…すごかった…。

本来の三十石は途中から事件が起こるお話のようなのですが、今回のお席ではただただ、京都から大阪にゆく船がくだっていく情景を描いていました。
扇子を握り舟を漕ぐ仕草が、朗々と歌い上げる舟唄が、川を下り遠く街を抜け橋をくぐる情景が見えてきて、今まで腹を抱えて笑いすぎて疲れたところに、ああこれでもう旅も終わりかぁ、と名残惜しくも楽しかった景色を後に帰路に立つお伊勢参りの帰り客のような気持ちになりました。
たった一本の扇子が遠く川を海をゆく船に見える。腕を振る仕草は確かに水をかき船をすすめている。橋の袂から川を見下ろし、きゃんとした女性が船頭さんに話しかける。いつか確かにあった古く美しい日本の風景が、小さな劇場いっぱいに広がっていました。

なんと美しい時間だっただろうか。あの感動はきっと生涯忘れられないと思います。


落語をまったく知らずに生きてきた私の、人生初めての落語体験はこのように最高でありました。
これから先の落語体験を楽しみにしようと思います。

繁昌亭の皆様、出演者の皆様、(届くかわかりませんが)本当にありがとうございます!

落語最高!



2024.10.7 追記

この記事が「noteの選んだ今日の注目記事」に選ばれたとのことで、たくさんの方に読んでいただけて嬉しい限りです。
もしよければ、こちらの記事も読んでいただけたら嬉しいです。

おいしいものを食べて北陸を応援していただけたら嬉しいです!


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