絵に描いたアイス
暑い夏のある夕方
子供を寝かしつけた後に食べる用のアイスを仕込んだ。
琺瑯のボウルに泡立てた生クリームと練乳、豆乳、
缶詰のフルーツを入れて一心不乱に混ぜる。
それをアイスクリームメーカーに流し入れて
スイッチオン、冷凍庫へ。
4時間後には“白くま”風アイスが完成するはず。
それは怒涛の1日を生き抜いた自分へのご褒美だった。
今日は仕事が鬼のように忙しく、自宅保育をしながら6時間リモートワークをして
合間に掃除、洗濯、夫のお弁当作りまでこなした。
控えめに言って偉すぎる。
子供を寝かしつけた後、ネトフリで推しの子の最新話を見ながらアイスを食べよう。そう思っていた。
冷やし始めてから1時間後
アイスどうなってるかな♪ウキウキで冷凍庫を覗く。
アイスが固まっていく過程も、オーブンでパンが膨らむ過程も、ついつい気になって見に行ってしまう。
その時だった。
白くま風アイスに気を取られて完全に油断していた私の背後に忍び寄る、小さい人影。
まだはっきりとは喋れない1歳半の娘が、
「なにそれ?1人で美味しそうなもの食べようとしてる?私のは?」
と言いたげな顔で後ろから覗き込んでいる。
これはまずい。
きっとアイスが完成する頃には娘は寝ているだろう。
そうなると、朝まで食べずに残しておいてあげるしかない。
クッ…
今日の夜楽しむはずだった「白くま風アイス×推しの子タイム」の夢はあっけなく潰えた。
私は悲しいのを我慢しながら、有料級の笑顔で
「明日の朝できたら一緒に食べようね!
どうなってるか楽しみだね!」
と言った。
食い意地と大人気ない気持ちは、
作りかけのアイスと一緒に冷凍庫にしまった。
絵に描いた餅、ならぬ
絵に描いたアイスでした。