【micorai column⑧】アトリエのお話。
私は遺灰指輪を専門的に製作していますが、同時にご依頼のある婚約指輪、結婚指輪、その他ファッションジュエリーなどのオーダーメイドによるジュエリー制作も行っています。
(私は「メモリアル産業(ペット市場)」に従事しているのではなく、あくまでも「ジュエラー」として遺灰指輪の製作をしています)
様々なジュエリー制作には、専門の設備が必要で、大型機材も多く、機械類や集塵機の稼働時の騒音もあります。
また、プラチナを扱う上で、1000度を超える火(バーナー)も使用することがあるため、ジュエリー制作にはそれなりのスペースの確保や防音、粉塵対策が整った専門の工房(工場)が必要となります。
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私は、遺灰指輪の制作にあたり、今まで同様に設備の整った工房で製作するつもりでしたが、お遺灰(お骨)の保管方法がその後の工房のあり方を決めてくれました。
ジュエリー製作についてのこだわりとは別に、お遺灰(お骨)をどのようにお預かりし、保管したらよいのか。
様々な起こりうるリスクを考え、飼い主様のお気持ちをなって考え、何よりも、お遺灰(お骨)様が指輪となってお帰り頂くまで安心して過ごせる環境は何なのか。
できることとできないことを考えました。
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ジュエラーとしての正解は、工房に設置する頑丈な金庫での保管です。
宝石類、貴金属類もたくさん扱う為、金銭的な価値もそれなりのものを常時保管しています。
お預かりするお遺灰(お骨)も同様に、またはそれ以上に貴重品としての扱いで保管します。
それが当然たどり着く方法なのですが、、、でも、何か引っ掛かります。
工房の昼間は集塵機や機材で騒々しく、でも夜はひんやりしていて、静かでとても暗い。
そこに数日、または数ヶ月保管しておくことに、何か寂しさを感じました。
では、毎日自宅から工房に持ち運ぼう!
と考えましたが、今度は持ち運ぶことでの盗難のリスクもゼロではありません。
そして「持ち運ぶ」という点でも、とても違和感を感じました。
もし、逆の立場だったら。。
知らない土地で知らない時間にお散歩させられているようなもの。。
なんだかとても違和感。。
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ということで。
結論。
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私は自宅の一部屋を遺灰指輪制作用のアトリエに改造しました。
ここなら、大切なご家族をお預かりして、このアトリエから一歩も出ることなく、指輪となり私の手から飼い主様のお手元にお届け(お見送り)できる。
それに、何よりも、朝も夜も、暖かさと生活の香と音がある。
ミコお婆様とお転婆エルンが喧嘩していたり、ご飯欲しいとおねだりしていたり、ばたばたと遊んでいたり。
そういった、「誰かがいる」という安心感に包まれていて欲しいと思いました。
お転婆エルンは作業中に「遊んで!」と猫じゃらしをもってきます。
足元をミコ婆様が温めてくれます。
私は、遺灰指輪だけは、この陽の当たるぽかぽか暖かくて、ミコとエルンのいるアトリエで制作します。