あゝ素晴らしき「自己責任と同意」論 ~パイプカットとあの違憲判決を思う~

年末年始付近になると、なぜかくだらない差別論に巻き込まれて、場合によってはまとめサイトデビューするという困ったことに何度かなったのだが、今年はさすがに面倒なことも大してないし、話題はいくつかあったのだが、まあたいしたこともないと思って三ヶ日はゆっくり過ごしていた。

このまま、大人しく過ごそうと思っていたのだが、どうしても「お前それはねえだろ」って話が出てきたので、また新年から頭を抱える展開に。


ああ、これはゆがんでますねえ で終わりたかった

まあ、正直これぱっと見た感想としては、「なにこれ」という以外になかったわけで。

そもそも避妊する必要もなさそうな年齢であり(作者本人からも言うてるし)、自分でやるわけでもないのに、他人にわざわざ避妊をさせたいなどという正直「はあ?」としか言いようがないんですよね。

なんというか、自分がもう望めないから相手にもそうなってほしいというような、どっかゆがんでいる公平意識が透けてみるようなもの見せつけられたら、そら気味悪いわって思う程度でしたよ。

正直これで終わりでいいかなと思うし、漫画の一感想としてはそこで終わろうかなと思っていたわけですが、また余計なことを言うアカウントが飛んできて「はあ・・・・」となったわけでして。

同意があればいい・・・とかねえ。

ところが、どっこい。

この件について、何を思ったのか同意を持ち出して何とかしようとする話も出てきたわけで。

いい年齢なことであり、旦那が同意したのだからこれは問題のない行為なのだ。

と、私が批判した内容からはちょっとずれこんでいる内容になのだが、この件を問題なく処理しようという声も出てきており、旦那らしいアカウントも出てきて擁護するといった感じで、沈静化を図る動きが見えてきた。

まあ、男女逆なら・・・・と後にも書くけど、まず逆ならやらんようなことを、人にだったらやらせてもいいだろってのがスケスケなわけですが、同意とか自己責任とか取って付けたものを急に主張しだしたというわけですか。

なるほどなるほど、そこまで同意が大事というのですか。

よくわかりましたよ。

しかし、同意で済まそうというのなら、私にも少し考えがありますね。

過去に多くの人が忌避した事例を用いさせてもらいましょうか。

性同一性障害と手術要件

私はこの話題で、過去にあった話を思い出した。

そう、性同一性障害に関する手術要件である。

性同一性障害で争った「手術要件」

事件は「令和2年(ク)第993号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件 令和5年10月25日 大法廷決定」である。

この件で争ったのはいわゆる「手術要件」であり、この件について差し戻し及び違憲判決を下した事件だ。

性同一性障害の人において、戸籍上の性別について定めた「性同一性障害特例法」には、生殖能力の有無や性器の外観を有しているという要件がいくつかあり、それらを満たしたうえで変更ができるというものだった。

しかし、最高裁は「生殖腺除去手術を受けることが強制される場合には、身体への侵襲を受けない自由 に対する重大な制約に当たるというべきである。」として、違憲判決を下した。

なぜ、違憲判決が出たのか

違憲判決が出た理由は簡単だ。

身体に対する重大な侵害を前提としており、それを同意なく強制されることは人権を大きく侵害しているということだ。

自身の体に不可逆的なことをすることは大きな抵抗があり、それをしなければ転換を受け入れないとなれば、

身体に対する侵害について、重く受け止めたからこそ、手術要件は否定された。

類似のことを考えても身体刑の禁止などといったように、体をいじるというのは本来それだけ重いものであり、他人の体をいじくるのは国家としては厳密に処理しているという証左だろう。

他にも、避妊に関しては割と厳しい対応を求めている

この判決だけではなく、生殖機能をいじることや性器をいじることというのは、大きな拒絶をされることであり、人権を著しく侵害するものとされている。

慣習として存在しており、従わないと不利益があるものだが、その地域の人としては慣習だから何とも思わないこともあるだろう。

FGMが浸透している地域では、男性も女性もFGMをごく当たり前の慣習としてみなし、何の疑問も持たれないことも多いです

https://www.unicef.or.jp/news/2023/0014.html  より

しかし、それでもそういった慣習そのものを人権侵害とし、根絶を国連が目指すほどであり、同意と気軽に言えるものではない。

もちろん、未成年に対して痛みやショック、排尿困難などの懸念もあるため、体に対する重大な懸念もある。

有害な慣習でなおかつ未成年という点も含めて、同意よりも行為そのものに対して有害性を考え、慎重に事を運ぶことに重きを置いている。

で、この判決はどんな扱いを受けましたかねと

さて、話は戻りこの判決はどんな判断を受けたかというと、まあ聞かなくてもわかるでしょう。

多くの人は手術要件を違憲としたことに反発したのではないですかね?

まあ、気持ちはわかるんですけど今回同意だから自己責任だとか自業自得だとか言った面々は、この件について同意云々なんて恐らく考えてもいないでしょう。

下手しなくても、矛盾している意見を出している人ばかりでしょうから。

気が向いたら探してきてもいいですけど、確認しなくてもほぼほぼこんな感じじゃないですかね?

そして、その態度は双方を見比べても全然違うことは言うまでもないことでしょ。

どうして、この時は「同意」とかなんていう言葉は出てこなかったんですかね?まあ、これも聞くまでもないですか。

ちょっと軽く考えすぎてない?

とりあえず、いじわるにも映るかもしれないが、この記事を書いたのはちょっと都合よく考えているのに少しくらい、考え直してもらいたいないと思う次第で。

他人に対して身体に対して重大な決定であり、類似の事案でもかなり慎重に判断すべきという感じで、ここでもいくつか取り上げたものも含めて、いろいろと言ってきたわけでしょう?

ちょっと思い出してもらいましょうか。男女逆ならそんなことしなかったよねと。

女性の体のことになると、烈火のごとく反応する皆様

ほんの少し思い出すだけでも、ちょっと女性の体のことについて軽んじると、烈火のごとく怒る人いっぱいいましたね。

まずは、何度目かと思いますけど、ピル一つですら男性に責任が偏っていることが明らかになっても、女性側(フェミからも)からピルを拒絶した事例があっても、まだ男性に責任を求めるとか、他人がピルを妨害しているとか言い訳ばかり用いて女性への負担から逃げますからね。

他にも、出産とか百田とかあったけど、全部覚えていますよ。

まあ、発言者が批判されるのは知ったこっちゃないですむけど、片方は大炎上どころかニュース記事にもなるし、実際に社会にも影響が出ている結果まであるんですよね。

この件で、もし逆に「夫が嫁に対して子宮を摘出して欲しい」とか言ってやらせたら、「同意だから」と本人が言っても無視して炎上し続けたでしょう。

しかも、本人があれこれ弁明しても、意思形成の過程すら色々勘ぐられるくらいには。

それくらい反応が違うんですよ。

百田氏の話とて何度も >「これはええ言うてるんちゃうで」「小説家のSFと考えてください」と複数回前置きした上 となっているのですが、冗談でも軽く考えてはいけないみたいな人もいたんだけどね。

それがちょっと変わるだけで、重大にしたり漫画にして軽く紹介できるようなことになるのだから、まあとてもとてもいつも通りだなと。

漫画を描いた本人ですら、なんか軽い感じだったから、漫画をご開陳してしまったのでしょう。

その一方で、ピル一つで医者がいくら頑張っても、副作用の懸念を払しょくも出来ず、日本だけがおかしいくらいの状況にまでなったのにね。

あと、他にも思い出したけど、家庭のことについて内部で納得がどうのとか言っていますが、家事育児の分担だとか苗字だとかいろいろ言ってくるものまだまだありましたねえ。

個人間で納得が云々とか保守的な人が言っても聞かなかったけど、今回のことを見ていると相変わらずですね!

錯誤まで誘発しかねない漫画の内容

また、漫画の内容も同意形成に錯誤を疑わせるような描写もあり、それも問題になっていましたね。

https://x.com/asahic_/status/1875032648600658224  より

まあ、さらっと再建手術ができると出てきますが、コミュニティーノートで既に誤りを指摘されています。

https://twitter.com/i/birdwatch/t/1875032416492130313

この時点で同意に錯誤がないか疑われる(いちおう、旦那本人は後にnoteで否定しているのだが・・・。)内容を展開しており、場合によっては意思形成に瑕疵があると思われる内容まで含まれているんですよね。

そんな状況まで出ていて、他人の同意があるからというのは、かなりずれていることも考えられたんですよね。

でも、同意があるだの言う人は、どうもそういったところを考えているようには見えなかったわけで。(旦那もちょっとどこかおかしくなってないか?というような検討も含めて)

結局、軽く考えすぎなんですよ。

素直にあの漫画の感性がおかしいくらいで終わっていてくれれば、私もここまで書かなかっただろう。

だけど、騒動を見ていてあまりに気持ち悪く感じるほどひどかった。

同意に始まり、他人の責任や負担(身体的なものも含む)といったものも、ひどく軽く扱っているからだ。

その上で、都合よく言葉を出したり引っ込めたりしつつ、自己のエゴを綺麗に扱おうとするので度し難いのだ。

既に世の中ではその点について、厳しく考えたほうがよさそうな所もあるものだが、人間の感性としてとても同じとは思えないほどにはずれている。

そして、ちょっと話を広げればいかにもご都合主義的で整合性のない話が転がっているから、件の旦那の態度も含めて気持ち悪いと思っている。(正直旦那の態度もピルなどで書いたような、責任偏重に加担するにもつながりかねないので、個人的には非常に邪魔です。下記みたいな例もあるため。)

本当なら、かなり難しい問題なんですがね。対象が何かというだけで、本当に軽いものです。

参照



追記 作者さん嘘ついてます?

ちょっと調べてみたけど

ピルの内服によるガンの発症リスクは、ガンの種類によって異なります。女性にまつわるガンのリスク増減については、現在以下の4点が判明しています。乳がんの発症リスクをわずかに上げる可能性がある
卵巣ガンの発症リスクは下がる
子宮体ガンの発症リスクは下がる
大腸ガンの発症リスクは下がる


それぞれ、詳しく解説していきます。

https://www.clinicfor.life/telemedicine/pill/effects/b-117/

アフターピル(緊急避妊薬)の処方が受けられない人

下記に該当する方は、必ず受診時に医師に申し出てください。重い肝障害がある人
※肝障害が原因で代謝機能が低下していると、肝臓への負担がかかり肝障害の症状が憎悪する可能性があります。
妊婦
過去に、アフターピル(緊急避妊薬)を服用した際に過敏症の症状が出たことがある人
※実際の成分については、医師に確認してください。

https://dr-asakawa.jp/knowledge/333/

喫煙の習慣があっても低用量ピルを服用するには?

とは言え、すべての喫煙者が低用量ピルの処方を断られるわけではありません。血栓症のリスクが高まるほどに喫煙していなければ、条件付きとはなるもののピルの処方は可能です。

その場合、
1日の喫煙数が15本以下であること

年齢が35歳以下であること

が条件となります。

https://mypill.online/column_43.html


ではどんな人がピルを服用できないとされているのでしょうか?一部をご紹介します。
初めての生理(初経)がまだな人
閉経後の人
前兆(視界が眩しくなるなど)のある偏頭痛を持っている人
35歳以上でタバコを1日15本以上吸う人
血栓症のリスクが高いと判断された人
乳がんまたは子宮がんにかかっている人

https://smaluna.com/column/2183/

何件か調べたのだが、確かに乳がんや子宮がんといった一定の癌に対しては使用を控えるように言われている。

しかし、ならなぜこの作者はアフターピルを飲んでいるのか?

医者にもかかっているようだが、それに関する説明はなく、なおかつ止めているような描写も見受けられない。

医師との相談によっては癌の治療後に服用することもできるようなニュアンスの説明も見たが、利用できないならどう考えてもアフターピルを処方しているのはおかしいのではないか?

それか医者を騙している(できそうに思えないけど)ということを考えないといけないのだが、この人何処まで本当のこと書いているのか謎である。

この人たちはどこまで話を作っているのか?

また追記

発掘すればするほど矛盾が増える



アフターピル飲んでる話に加え、年数も結構経っているとなれば、漫画の内容はますます怪しいのですが、一体どういうことなのですかねえ?

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