5 共同親権論の未来
共同親権に関しては、もう国会でも成立しており、これから少しずつではあるが親が離婚しても子供は両親と会いに行ける環境が整うだろう。
だが、反対派も黙ってみているわけでもあるまい。できる限り共同親権を骨抜きにしなくてはならないから、色々な手を使ってきて妨害していくだろう。
過去にはハーグ条約ですら不履行国家と指定されていたほどだ。
また、共同親権を導入したところで、選択制や裁判官が共同親権を認めないケースを増やすことで、実質的に単独親権を維持するような状況を維持することも考えられる。
法案が成立しても、今後のことも考えるとできる限り未来のことも考えなくてはならない。
5-1 DV論とその拡張による妨害
現行法でも、DV論を例外としているが、DVに該当する行為や例外的に単独親権を行使できる適用範囲を広げるような手段を行使するだろう。
DVといっても一口に身体的な暴力や言葉により威圧を問題にしているわけではなく、経済的なものやモラハラ、意図的な無視、ネグレクトなど複数の範囲に広げている。
例えば、経済的DVのチェックリストといったようなのはいい例である。
その広がったDV概念をさらに拡張し、些細なレベルでもDVがあったとしてすぐに単独親権にすべきと主張することで、実質的に共同親権を機能させないようにすることが考えられよう。
そういったことを防止するために、DVのラインや内容を考える必要がある。
子どもなどの身体に重大な危害が加わるケースや、親権行使があまりに精神的なダメージを被るといった一定の限度で認められるケースを増やすことも考えられよう。
また、過去に問題行動があったとしても、治療プログラムなどにより共同親権を行使できると判断される場合には、義務の復帰という形で責任を負わせることも考えられるだろう。
今後は刑事罰といったしっかりとした証拠主義に基づく厳格な運用とともに、DVにおける例外は慎重に適用されなければならない。
5-2 人員確保などのサボタージュ
家庭裁判所などの人員確保や各家庭の親権行使のための実効性の確保も必要となってくるが、このあたりの妨害もあるかもしれない。
共同親権の取り決めや、トラブルがあった際の人員確保を考えるに、今後離婚後の共同親権を実行するために数多くの調停や、共同親権の内容を確認する取り決めがなされるだろう。
そういった社会変革が起きる際には、どうしても複数のリソースが必要となるのだが、その際には一定の人員確保や時間が必要だろう。
しかし、既に取り上げたように、ハーグ条約ですら各国から未履行国という指摘を受けるような過去があり、かなり消極的な姿勢を見せている。
また、これから家事調停や共同親権の取り決め、詳細判断などをしていくには、どうしても人員が増えることが予想される。
となると、本来は法曹、行政、民間一体となって支える制度を整えなければならないが、既に単独親権が既得権となっている勢力からの協力は難しいだろう。
しかも、片親支援や子供の養育支援などを提供している団体には数多くの共同親権に反対する勢力があり、協力を要請してもそもそも制度推進をしたくないことから、団体側からサボタージュする懸念はぬぐえない。
いろいろと難癖をつけては「実効性がない」などといい、協力を拒むことも考えられよう。
予算がないなどの懸念をぶち上げて反対、待ったをかける声があるため、制度が進んだとしてもまだまだ予断を許さない。
5-3 選択制という罠をはる
共同親権論は原則強制であることが前提であり、それだけ子どもの権利や利益を確保することが求められている。
しかし、選択制というものを主張することで、共同親権論がなし崩しで崩壊する危険性もはらんでいるだろう。
一見すると、自由に親権行使を選択できる選択的共同親権というのは、親が子供に出会える方法が増えていいという風に見えるのだが、そもそも共同親権の制度設計や趣旨そのものを考えると、選択制ということ自体が欺瞞である。
離婚後における子供の予後改善を中心に語られていることにも拘らず、それを親の都合でないがしろにする危険性をはらんでいるからだ。
当事者同士に諍いや裁判所の判断などにより、単独親権を実質的に残存させるような形式にもっていくことを選択性というのはしやすい。
また、政党側からも例外的に共同親権にするという方法を模索する動きもいまだに根深い。
例えば、立憲民主党は2024年に行われた衆議院選挙の際に出した公約では、下記のようなものを出したことで物議を醸しだした。
一見すると「双方の同意」があればというようなもっともらしいものがあるが、同意を得られなければ共同親権は進まない。
なぜなら理由がなくても拒絶するのなら「共同」でなくてもいいとなってしまうからである。
本来親に対しては義務の側面が先に来る共同親権に対して、権利を先にもってきている発想というまるで本質を理解していない、かつ親を第一に考えていると暴露しているようなものだ。
しかも簡単に拒絶できる形を作れば、共同親権制度はあっという間に崩壊するのは目に見えている。
こういった形で今後も妨害をすることが予想されるだろう。
もちろん、従来のDV論を変わらず展開してくるであろうから、その点も十分に注意しながらやるべきだろう。
5-4 海外からも更なる圧力や国益に反する懸念もある
ここまで、反対派側からの妨害について書いてきたが、ここからは共同親権が進まない未来についても考えなくてはならない。
そもそも、共同親権に関する進展が遅れている事もあり、何度か色々なところから日本は勧告を受けている実態がある。
日本における子の連れ去りに関する欧州議会決議の概要(仮訳)
https://www.moj.go.jp/content/001347789.pdf
今後も、対応が遅れれば遅れるほど、日本は国益を損ねる可能性が高いだろう。
既に北朝鮮の拉致問題に関しても、日本はかなりの数の実子誘拐を放置しているからこそ、他国からの協力が得られていないのではとも言われている。
また、ハーグ条約未履行に関しては、アメリカでは「ゴールドマン法」というものが成立しており、
実際に適用されている事例がないとはいえ、今後も起こりえないとは限らない。
共同親権成立後であっても、反対派の動きなどによっては、国益すらも損なう重大な不利益を与えることとなるだろう。
5-5 未来のためにできること
今後も予断を許さない共同親権ではあるが、私たちが未来にできることがあるだろうか?
我々にできることは数多くある。
国会議員や各省庁などへに意見提出
ネット上などへの意見表明
正しい情報の発信
支援団体や予算の拡充を求める
手続きの簡素化、スムーズ化を図れるところは進めていく
子どもの利益が第一であることを徹底する など
など、複数の権利を行使することがあるだろう。
日本における共同親権制度はこれから始まるものであり、今後もより多くの親と子供が離婚後もしっかりと関われる環境を整え、子供の健全な育成に寄与する努力をしなければならない。
実効性の確保をするためにも、裁判所の拡充は必要ではあるだろうが、当事者同士でもある程度は共同親権の取り決めをしやすくするようなひな形の作成や、手続きをスムーズにする手段をとれるようにするといいだろう。
官民一体となって推進し、少しでも子供に対して育成環境を整えることが第一となるだろう。
その上で、男性差別的な勢力の排除や反対団体を抑えつつ、実効性を上げていき、親や祖父母などの親族が子供に自由に会いやすい環境を作る。
そうすることで、共同親権にまつわる諸問題は解決していくだろう。