見出し画像

舞台刀剣乱舞 天伝 冬の陣 レポ

※ネタバレ注意

2021年2月20日マチネ 観劇
この日は快晴でした。突き抜けるような青空の下、IHIステージアラウンドに向かう気分が上がりました。

さて自分語りになりますが、ステージアラウンドに足を運ぶのは、2017年にこけら落としを飾った『劇団☆新感線 髑髏城の七人』のseason『風』『月:下弦』に続いて3度目。
世界でも2箇所にしかない、360°回転する円形の劇場。当時、『髑髏城の七人』で圧倒されると同時に、いつかこの場所で2.5次元作品を観てみたいなと思っていました。

2.5次元舞台作品に触れたのは、舞台刀剣乱舞が初めてでした。そこからすっかり「刀ステ」にはお世話になっており、念願叶ってステアラで天伝に挑みました。

準備したこと:特になし
これが結構つらい(笑)
当方、戦国武将に非常に疎く、ピンポイントにフォーカスされる刀ステでようやく重たい腰を上げても中学生程度の知識しかない。しかし同時期のNHKの大河ドラマを連作で嗜んだ『真田丸』に大変助けられました。
苦手な部分は予備知識あるとより楽しめますね。

※(↓急に論文みたいに書いてしまいました)

今作のタイトルは『天伝 蒼空の兵 ‐大坂冬の陣‐』
※(てんでん あおぞらのつはもの)
メインに豊臣家に在った一期一振を据えて、渦中の豊臣陣営と徳川陣営を描いている。
この戦は原作ゲームのステージのひとつで、本来であれば”何度も”出陣する。それこそ初演では一期一振が隊を率いるシーンがある。
刀剣乱舞というコンテンツは、どのメディアでも史実の人物とその所有物であった刀剣を直接絡ませることで発生する矛盾や葛藤を描く。大阪の陣は言わずとしれた、天下統一を果たしたカリスマ__豊臣秀吉亡き後に勢力が衰退した豊臣と徳川の逆転が起きた戦だ。今回登場する豊臣秀頼がどう転んでも”負ける未来”がある。その彼と、秀吉の愛刀『一期一振』が対面するのだ。

刀剣乱舞における一期一振というキャラクター
短刀の名手、粟田口吉光の手によって作られた『唯一の太刀』という特殊さから、短刀が大半を占める粟田口派の中で「いち兄」と慕われ長男ポジションとして描かれている。また火災被害にあった刀剣の一つで、記憶があいまいな描写が多々ある。
天下人の愛刀。大家族の長男キャラ、王子様然とした立ち振る舞いと軍服衣装。実は派手好き。こうした沢山の『属性』を持っている。
話は少し変わるが、今回役を担当した本田礼生さんは殺陣の経験が浅い。初の殺陣作品であった「舞台 鬼滅の刃」では最強の剣士を演じられていたが、とても初めてとは思えない流麗な動作であった。今作でもその美しい殺陣が拝見できる。調べてみたらダンス経験が豊富な方だった。
初演で演じられた廣瀬大介さんは社交ダンスの経験があり(もちろんほかのダンスもうまい)一期一振の”ロイヤル”感とフェンシングに似た殺陣の見応えがすさまじかった。一期一振というキャラクターの立ち振る舞いと、あの衣装はダンス経験者がよく映えるのだと再認識できる。

一期一振という刀の物語
この作品に登場する刀剣には逸話を持つものが多く存在する。それが名前の由来になったり、性格や性質に反映されていたりと様々だ。それらに比べると一期一振のバックボーンはシンプルな部類だろう。
しかしながらレア4と呼ばれ上記に挙げたキャラクター的属性の多さからユーザーから愛される人気キャラの一人である。ただし今作は一期一振の核心を抉った。

”ではお前から「兄」を取り上げたら、いったい「何が残る」のか”
末満さんがそんな問いかけが聞こえた。(実際これに近いセリフがある)
キャラクターコンテンツのアイデンティティともいえる部分にこの脚本は触れてきたのだ。そしてこの問いかけは、豊臣秀頼と巧妙にリンクしてくる。
己の付加価値を取り除いたら、その身一つで何者であるのかと。
史実に加え既存の歴史物において、豊臣秀頼は悲劇的に描かれることが多い。父親の影を背負いながら天下人の役目を全うしようとする。しかしそれは志半ばでついえてしまう。父親に仕えた家臣たちが天下人に望む”カリスマ”を自分は持ち得ていないことを痛感させられながら、戦に挑んだ。そして己に、一期一振に残酷な問いを突き付ける。その葛藤が鮮明に描かれ、刀剣男士が試練を乗り越えるとき、タイトルの回収をぜひ見届けてほしい。

ところであの伏線は回収できたのか
第2シーズンに突入し、維伝→綺伝と続いて何となく描いていたこの作品の構造が、私はここへきてまたわからなくなってしまった。”円環”の中に閉じ込められた気がしてならない。煙に巻かれたというべきか。
トリガーはいくつも心当たりがあるが、次回の夏の陣で、キャストを使ったトリックの謎が解けてほしいところがある。(三日月・鶴丸・骨喰)

おかげで悪化した『繭期』
私は刀ステからTRAMPシリーズに手を出した口だ。
繭期風に言うなら、今作はグランギニョルで、リリウムで、永遠の繭期だった。

2.5次元コンテンツと刀剣乱舞の快挙
惜しくもコロナ渦での興行になったが、IHIステージアラウンドでの公演は、別格の箔が付いたように感じた。

進化する戦闘描写と安定感のある殺陣
個人的には「SASUKEみたい!!」と思うところが多々あった。
アスレチックな殺陣で、維伝より不規則な動きをする。
また松田凌さん・佐々木喜英さん・荒牧慶彦さんは『ミュージカル薄桜鬼』のOB。殺陣には定評がある。
松田さんの薄桜鬼で見た低重心の殺陣とは違い、加州清光の重心は高く、同じ打刀の山姥切に身軽さがよく似ている。ただ鬼気迫る迫力に鳥肌が立った。
武器は体の延長とはよく言われるが、武器を体の一部のように使うという表現を目にすることはあまりなかった。しかし加州の殺陣は腕が伸びたのかのような錯覚を起こす。刀の軌道と腕の動きが一直線で、まるで刃が旋回しているように見えるのだ。
ウィングスパン自体が長いキャストはこれまでにもいたが、だいたい平均身長の加州が異彩を放っていたように感じた。
一方宗三の殺陣は、以前よりも重心が低くなっていた。やや重たくなった太刀筋は歌仙(和服打刀組)にも似ているが、手首の動きが今回より顕著だった。絵画を切り取ったような華やかさは健在。

そして夏の陣へ
4月から『无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-』※(むでん ゆうくれのさむらい)がスタートしますね。
天伝に引き続き長い公演期間のため、無事に完走できるように祈ります。
また自分も観劇に行けるように引き続き体調管理には気を付けて、去年あまり足を運べなかったので、良い観劇ライフを楽しんでいきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?