カネ、カネ、カネの国ニッポン

久しぶりに大好きだったポール・ボネの本を読んでバブルのときの日本ってこんなんだったんだなーと思って書き写しただけです。

不思議の国ニッポンVol.18

”少年法”の怪

東京の足立区で起こった女子高生コンクリート詰め殺人事件には驚かされる部分が多かった。
犯人は四人の”少年”なのだが、新聞には例によって少年AとかBとかしか報道されない。そのマスコミ各社の自主規制を『週刊文春』が突破して、ジブ名を掲載したことから、私は日本の少年法が”少年”を一四歳から二〇歳位と規定していることを知ったのである。
私は自分と縁のない法律については無知に等しいから、フランスに少年法が存在するか否かも知らぬありさまだが、ヨーロッパの感覚だと、二〇歳の”少年”を法律で保護するとは考えにくい。
『週刊文春』によると、一九八八年度に検挙された刑法犯のうち、なんと48.5%、19万3000人が”少年”だったという。
かねがね私が指摘しているように、日本は治安が極めて良い国である。先進国首脳会議に集う国々の中でも、郡を抜いて治安がよい。
高級乗用車を街中に駐車しておいてなんの心配もいらぬ国は、先進工業国中、日本だけである。残念ながら、パリなどは駐車場に預けておいても盗まれることがあるし、イタリアなどは全土にわたって高級車は要注意である。
ニューヨークの恐ろしいことは世界的に有名だが、先日は、セントラルパークをジョギング中の白人女性が黒人の”少年”たちにレイプされた。
日本に来る外国人旅行者は、口々に当供養の街が清潔なこと、治安が良いことをほめそやす。外国人女性が深夜に東京の街を独り歩きしてもいささかの不安もないのである。
これは日本人としても大いに誇って良いことで、この素晴らしい状況が今後とも続くことを私は願ってやまない。
いま、日本もだんだんキャッシュレス時代に入り、日本資本、国際資本のクレジットカードが入り乱れて大乱戦となっているが、それというのも日本はカードの事故率が極めて低い”優良国”だからこそなのである。欧米諸国は激増する様々なカード事故、つまり不払い、盗難、偽造などに頭を悩ましており、欧米のカード会社は日本のマーケットを羨望の目で見つめている。
こうした日本人の正直さ(竹やぶで大金を発見して警察に届け出るような人々も含めて)は、日本の成人たちのモラルの高さを示すものである。
だから、私は足立区の女子高生殺人事件に驚いたのである。モラルが高いと思われる国で、両親の居住している家に女子高生を長時間監禁して最後にコンクリート詰めにしてしまうとは、およそ日本的でない。
もっとも、被害者が換金されていた家の主人夫婦は共産党員だったそうで、事件後に離党している。共産党員には、普通の日本人と違ったもある感覚があるのかもしれない。
逮捕された四人の”少年”の年齢は18歳を頭に17歳二人と16歳一人で、ある新聞の投書欄には次のような投稿が掲載された。
「・・・納得できないことは、少年たちの名前も写真もマスコミに登場しないということです。もちろん、未成年であるから伏せられているのですが、殺された女子高生は名前と写真、そして住所まで新聞に載りました。同じ未成年です。なのに殺した方の人権は尊重され、殺された方の人権は無視されていいのでしょうか・・・」
日本の少年法によると、今回のように事件の場合、成人の場合なら10年以上の刑を受けるのが確実なのに、”少年”であるがゆえに5年ぐらいの系で済んでしまうという。”少年”たちの親は、事件が発覚すると、蜘蛛の子を散らすように姿を消してしまったという。このような”少年”たちを育てた責任はまず親たちにある。
日本的常識からすれば、加害者の親たちが打ち揃って被害者の両親に土下座して謝るというのが普通だろう。それもしないで、4軒とも”行方不明”というのは、わたしがつねづね感心してきた日本人のモラルとひどくかけ離れている。
くどいようだが、私は日本人のモラルの高さを評価しているだけに、48.5%もの刑法犯を出している”少年”たちの将来を憂慮せざるを得ない。
つまり、日本では年齢層が高いほど道徳を重んじ、年齢層が低いほど道徳をかるんじる傾向が顕著だということだ。この傾向は、家庭教育、学校教育の双方に血管があるということを意味している。
そして、”少年法”にも欠陥があるのだろう。20歳までなら何をやっても新聞にはA、B、Cとしか名前が出ないし、少年であるがゆえに処罰も軽くすむ。これは、今日の世相を考えれば完全に過保護である。
この少年法が制定されたのは第二次大戦後というから、今日とはまったく世相が違う。私は当時の日本を知らないけれども、敗戦国の悲惨さは映画などである程度伺い知ることができる。戦災孤児という気の毒な環境の子どもたちもいたと聞いている。
足立区の事件のほかにも、暴走族の横行を嘆く声がしきりに聞かれるが、凄まじいノイズをあげて走り回るオートバイが、かくも普及するなど、第二次大戦後には考えられなかったことである。
警視庁関係者の話によると、その暴走族も”少年法”の保護のものに入ることをよく知っており、20祭になると暴走族を廃業するのだという。
「・・・口を揃えて『ハタチ超えてワルやってんのはバカだよ。新聞に名前が出たら損じゃないか』といってのけますからね」
イヤハヤ、恐れ入った”少年”たちである。
その後、偶然、深夜の討論番組で「少年法を改正すべきか否か」という議論をしているのを部分的に見た。
翌日の仕事に差し支えるので途中で消してベッドに潜り込んだが、弁護士だの中学の先生だのが、改正に対して一生懸命反対しているのが、なんとも解せなかった。
20歳で暴走族を編めるなら、少年法の20歳を思い切って16歳にすれば、初めから暴走族は出現しないことになる。その程度のことを深夜に延々に議論しているから”少年”たちを増長させるのだ。

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