市町村職員の待遇〜やりがいや恵まれている点
市町村職員は定時勤務、年功序列による定期昇給、広域転勤がない、抜群のワークライフバランスの職業である。
それらは概ね間違いはありません。
しかしながら、恵まれた職業の代名詞のように言われ続けることに反射的に抵抗を感じてしまう私もいます。
だから私がこれまで経験から感じる恵まれている部分、大変な部分を掘り下げて書いていきたいと思います。
ちなみに私は行政職であり、人口10万人以下の基礎自治体勤務です。
あくまでも私個人が30年以上同じ自治体に勤務してきて感じたものになります。
恵まれていると感じるのは以下の通りです。
①福利厚生に厚く男女差が比較的少ない。
結婚や出産など家庭環境の変化があっても定年まで仕事を続けやすいです。
それが私が公務員を選んだ大きな理由でもあります。
人事評価も数年前から導入されていますが給与は年功で上がり比較的男女の差がありません。
待遇に男女差がないかと言えば表向きはそうですが根深く残る差別があります。
これは別に述べたいと思います。
②給料の変動が少ない。
コロナや景気など世の中の変動による給料の変動は少ないです。
50人規模以上の民間企業の給与の平均値から国に対して人事院勧告が行われます。
公務員は労働三権が一部制約されているので代替えとして人事院勧告があります。
例えば公務員がストライキすれば市民生活への影響が大きすぎます。
だから労働基本権が一部制限されているのです。
人事院勧告は国家公務員に対してになりますが、都道府県や市町村の地方公務員の給料の取り扱いも基本的に国に習います。
給料はそれぞれの自治体の条例で決められているので全国一律ではありません。
民間企業の給料の動向、世の景気変動の影響により下がる事も上がる事もあります。
しかし20%、30%減など極端なことはありません。
東日本大震災後に1年間毎月5%減額になった時期がありましたが約30年勤務してきてそれ以上下がったことははありませんでした。
人事評価はあるものの定期昇給が基本で少しずつ昇給していきます。
若い頃の給料は民間に比べれば安いです。
しかし公務員は終身雇用が大前提であり少しずつ定期昇給しながら長く勤務して民間に並ぶかやや上回るように思います。
家庭を持つときやローンを組むときに給料の安定は大きな安心材料になります。
③役所の看板を背おっているため幅広い仕事と人との出会いがある。
私は約30年で8部署を経験しました。
上下水道事業、地方創生、議会事務局、税務、観光交流、高齢者福祉…などなど
いずれも繋がりはなく全く関係ない部署に異動します。
合わない部署もあるので良い点悪い点表裏一体にはなります。
ここでは良い点を書いていきます。
自治体の様々なPRのためにテレビや新聞に出たり、出張したり、仕事で依頼した有名人と接したりすることが出来ます。
プチ自慢になりますが、私は創業支援担当時代に全国紙に少し大きめに取り上げていただいたことがあります。
地味な仕事も多いですが、役所の看板を背負っているからこそ出来るそうした業務は楽しいですし醍醐味があります。
また仕事を通して様々な出会いがあり人生に大きな影響を受けることもあります。
役所の看板があるからこそ出会い一緒に仕事をする機会を得た方々でもありました。
私の地方公務員としての大きな分岐点は起業支援を担当したことでした。
起業したい、何かをつくりたい市民の方々と接し私の価値観は大きく揺さぶられました。
公務員にはなったけど自分はこのままで良いのか、少しでも学びたい、前進したい、という漠然とした思いが私には若い頃からありました。
しかし、そんなことを考えていても、私の勤務先の役所がもつ強固に変化を嫌う陰鬱極まりない雰囲気は今も昔も変わりありません。
成長したいだなんて難しく考えなくても給料は貰えるのだし考えすぎるのは意味がない。
いつしかそんな風に考えるようになっていました。
しかし私を変えたのは創業支援で出会った市民の方々、特に起業したい大学生達でした。
困難にぶつかっても諦めない。前へ前へ。
私はそんな大学生達の姿を通して、役所の世界にどっぷりつかりすぎて忘れていたものを思い出すことが出来たのです。
そうして何年もかけた彼らの思いは空き家を活用したシェアハウスという形で結実しました。
担当を外れた今も彼らと付き合いは続いています。彼らのシェアハウスに、たまに行きますが若い人に溢れ様々なものが生まれつつあること、今もなお彼らの活動が成長し続けていることを感じます。
彼らに仕事として関わらせて貰ったことに、いち地方公務員として幸せを感じています。
④市民の方々と直接触れ合えて力をもらえる。
自分に向かない業務の担当になったとき、市民の方々から救われる…という事が少なくありません。
これは市民の方々と直接接する基礎自治体ならではのものだと思っています。
私は高齢者福祉を担当し自分には向かないと落ち込んでいた時期がありますが、そんな私を救ったのは民生委員児童委員の皆さんでした。
地区内の役割として仕方なく引き受けられた方も多いでしょうに、懸命に地区の見守り活動をされている方がほとんどです。
そんな姿に私は深い感銘を受け、福祉の業務なんて自分のガラに合わないと不貞腐れていた自分が恥ずかしくなりました。
そしてこうした方々がいるのだからもう少し頑張ってみようという気持ちになれたのです。
理不尽なクレームも増えましたが、その反面市民の殆どはこうした方々なのです。
⑤休暇のバリエーションが豊か。
1時間単位で年次有給を取得できます。
民間の知り合いに話すと羨ましがられます。
産休育休など休暇制度は民間の制度を先導する役割があるので進んでいると感じます。
子供が小さい頃はどんなに助かったかわかりません。
またこれは部署によりますが余裕がある部署にいるときは毎日ではなくとも定時で退庁、週休2日を活かしてプライベート充実が可能でしょう。
繰り返しますが、役所全体がそうではなく部署または時期によります。
病休は経験がないので割愛します。
夏季休暇が年次有給とは別にありますがお盆でも役所は閉められないので、交代で夏季休暇とることになります。
以上やりがいや恵まれている点き書いてみました。
安定性も大きな魅力ではありますが、私は地方公務員という職を通して多くの人そして仕事との出会いにも恵まれました。
それらは今日の私の基礎となっています。
どの職業でも同じですが、やりがいは誰かが与えてくれるものではなく、自分で見出すものだと私は考えています。
しかしながら行政職の公務員は全く前部署とは関わりない部署へ異動するために、これといった専門性や特技を身につけられないところがあります。
異動ガチャが当たり前なので、ベテランでさえやりがいをみうしなう時も多いです。
どんな仕事においても、いかに効率化や人員削減にさらされても譲ってはならない使命があると思います。
仕事をする中で何か迷ったとき、自分が手がけるこの仕事や予算執行は市民のためになるものなのか、幸せにつながるものなのか…それらを常に念頭に置いて仕事をすること。
若い頃の上司の言葉であり地方公務員として座右の銘となっていますし、私を支えるものとなっています。
それはやりがいにつながっています。
次に辛いやブラックな点を書いていきます。