東京ステーションギャラリー「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ」
東京ステーションギャラリーで開催されている
「木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ」を観に行きました。
藤戸竹喜は北海道美幌町でアイヌ民族の両親のもとに生まれ、
木彫り熊職人の父からの(スパルタ)指導で腕を磨いたそうです。
今回は熊を中心とした動物をはじめ、アイヌ民族の姿、
自作の物語をモチーフにした作品など、初期から最晩年までの
多岐にわたる作品が展示されています。
東京で業績の全貌が紹介されるのは初めてとのこと。
展覧会の概要、訪問状況は下記の通りです。
【概要】
会期:2021年7月17日(土)~9月26日(日)
休館日:月曜日
開場時間:10:00-18:00(金は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで)
料金:一般1,200円、大高学生 1,000円 ※中校生以下無料、原則として日時指定の事前購入制
【訪問状況】
日時:祝日午後
滞在時間:14:00~15:00 ※キャプションが少ないせいか
サクサク進みました
混雑状況:混雑しているというほどではありませんが、
結構多くのお客さんが訪問されていました。
感染症対策:入口での手指の消毒、検温がありました。
写真撮影:不可
展覧会の構成は下記の通りでした。
プロローグ 木彫り熊の申し子
飛躍の時代
(藤戸竹喜コレクション 木彫り熊)
円熟の時
狼と少年の物語
プロローグ 木彫り熊とともに
Eテレの「アートシーン」で紹介されていて
興味を持ちました。実際に作品を触れると
厳かなものを感じるいい展覧会でした。
まず圧倒されるのが超絶技巧です。
熊の造形の精密さも凄いのですが、樹上から熊が
鹿に襲い掛かっている場面や複数の熊が
絡み合っているところなど、複雑な構図を自在に
表現しているところに驚きました。熊以外の作品も魅力的で、
特に「ロブスター」、「ヤシガニ」、「サワガニ」、「ワラジエビ」の
一連の海洋生物の作品は本物と見まごうばかりの精巧さと質感で、
圧巻の一言でした。
藤戸竹喜「川の恵み」2000年 鶴雅リゾート(株)蔵
※グッズのポストカードを撮影
歴史や自然に対する真摯な向き合い方も印象に残りました。
「熊からすべてを教わった」と語っていたそうですが、
製作を通して自然の美しさも厳しさも受けれいていったのだと思います。
素材の扱いからもそれが感じられ、木目を生かした
川の流れや海底の表現から木と格闘するのではなく
対話しながら制作するという姿勢が感じられました。
アイヌ民族の狩の様子をモチーフにした作品や
先祖をモデルにした作品もあったのですが、
厳しい自然の中で独自の文化をもって力強く生きてきた
祖先に対する尊敬が感じられました。
どの人物像も真っ直ぐな瞳が印象に残りました。
入口に展示されていた初期の作品「熊と葡萄のレリーフ」は
宗教彫刻のようで、既に神聖さすら感じられる作品でした。
生涯自然と歴史に対して畏敬の念を抱きながら
作品制作に臨んでいたのだと思います。
藤戸さん自身が考えた物語をモチーフにした
「狼と少年の物語」も滅びゆくものが抱える寂寥感、
失われたものへの鎮魂の思いが込められていて、
心に深く刺さるものがありました。
場面によって主人公の少年と狼の材質が違ったりと、
より物語のテーマが伝わる工夫が施されていました。
展示も作品の流れが伝わりやすい間隔で並べられていて、
また劇的な場面で効果的に背景を変えるなど
美術館スタッフの作品への愛情が感じられました。
藤戸竹喜「狼と少年の物語」2017年 個人蔵
※グッズのポストカードを撮影
感銘を受けるところの多い展覧会でした。
会期残り僅かですが、興味のある方は行かれることをお勧めします!
※ところで色々な木が素材として使われていましたが、
結構特徴が出るものだなと思いました。
イチイはつやが、クルミは潤いがあるように感じました。
クスは細かい仕上げに向いているようです。
色んな作品をまとめてみるとこういう部分も
感じられて面白いなと思いました。