世田谷美術館「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」
世田谷美術館で開催されている
「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展 素敵な100年人生」
を観に行きました。
アメリカの国民的人気画家・グランマ・モーゼスこと
アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼスの展覧会です。
農場の主婦だったグランマ・モーゼスは70代で本格的に
絵を描き始め80歳で初めての個展を開催、人気画家となり
101歳で亡くなるまで絵を描き続けたそうです。
今回は日本での16年ぶりの回顧展ということで、
絵画作品や愛用品が展示されています。
展覧会の概要、訪問状況は下記の通りです。
【概要】
会期:2021年11月20日(土)~2022年2月27日(日)
休館日:毎週月曜日
開場時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
料金:一般1,600円、65歳以上1,300円、大学生・高校生800円、
小中学生500円(日時指定制)
【訪問状況】
日時:日曜日午後
滞在時間:14:00~15:00
混雑状況:当日券は完売していました。
会場内は混雑しているというほどではなく、
割と余裕をもって鑑賞できました。
感染症対策:入口での手指の消毒、検温がありました。
写真撮影:不可
展覧会の構成は下記の通りでした。
第1章 アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス
第2章 仕事と幸せと
第3章 季節ごとのお祝い
第4章 美しき世界
3年前にSOMPO美術館のコレクション展示で偶然
グランマ・モーゼスの作品を見て「和む絵だな~」と思ったのですが、
作者の生没年を見て長生きだったことにびっくり、
加えて本格的に絵を描き始めたのは70歳を過ぎてからという
経歴にさらにびっくりして興味を持ちました。
今回まとまって作品を見られるということで、
非常に楽しみにしていました。
(画家は長生きの人が多いと思うのですが、
何故なのか昔から気になっているところです。
横尾忠則氏によると「好きなことだけしていてストレスがないからだ」
ということですが。)
グランマ・モーゼスは素朴で温かみのある画風で
知られるそうです。確かにどの絵も農村の何気ない日常が
明るいタッチで描かれていて、見ていて気持ちのいい絵でした。
一見平面的ながら風景画からは不思議な奥行きを感じました。
農場の小道や山の稜線など画面内を区切るものが多く、
パーツを分けてそれぞれ視点を微妙に変えて描いたのかなと思いました。
キャプションによるとこのような構成は本格的に絵を描き始める前に
趣味にしていた刺繍絵の経験が活かされているそうです。
(グランマ・モーゼスは刺繍絵が趣味で、プレゼントにしたり
していたようです。今回刺繍絵も展示されていましたが、
丁寧な作品でこれをもらったら嬉しいだろうなと思いました。)
一方屋内の作品では暖炉の正面とテーブルの上の面が
同じ角度で描かれていたりと、見せたいポイントが
大胆に強調されていました。タッチも伸びやかだったり
厚塗りだったりと多彩で、自由な発想と創意工夫の両面が
感じられました。
私が特に気に入ったのは下記の「ハロウィン」という作品です。
月明かりに照らされた建物や幽霊じみた仮想の子供などが
不穏な雰囲気で他の作品と少し毛色が違うのですが、
ハロウィンが本来持っていた霊的なものが感じられました。
(日本でいえばお盆のようなものとか。)
アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス
「ハロウィーン」1955年 個人蔵
※グッズの絵葉書を撮影
「村の結婚式」という絵では主役であるはずの新郎新婦が
中央でなく右下に描かれているのが印象に残りました。
グランマ・モーゼスにとって人生とは一か所にスポットライトが
当たるものではなく、群像劇だったんだなと思いました。
他の作品にもご近所さんが何人も描き込まれていて、
人と人の繋がりを大事にしていたことが伝わりました。
会場内に自伝から引用されたモーゼスの言葉が展示されていました。
自分が絵を描くことについて
「古いものを描くのが好きです。すぐになくなってしまうから。
白昼夢のようなものです。」
と語ったそうですが、とても素敵な言い回しだなと思いました。
「初めての自動車」、「洗濯物を取り込む」といった
日常のちょっとした事件、イベントをモチーフにした絵が
多かったのですが、この言葉とぴったり重なり
より印象深いものとなりました。
年表を見ると二度の世界大戦やお子さんを先に亡くしたりと
辛いことも多かったと思いますが、一つ一つ乗り越え
思い出として昇華させていったのだと思います。
グッズも充実していて、色々買い込んでしまいました。
アップルバターを開けるのが楽しみです!
※ミニチュアキャンバスマグネットとクリアしおり
目まぐるしく状況が変わる世の中にとかく疲れがちですが、
世グランマ・モーゼスの作品と生き方に
励まされる展覧会でした!