the おこめマン(z)(22)、狂気の10000字セルフインタビュー(中)
この企画は自称パンクバンドthe おこめマン(z)が2021年6月30日にリリースしたアルバム『YOU ARE NOT PUNX』について(誰もインタビューしてくれないので)自ら掘り下げる禅問答のような記事である。
(今回の主役おこめマン、顔色が悪い。)
〜前回までのあらすじ〜
ノリで始めたセルフインタビュー、この時点で既に日をまたいでいた。我々取材陣は早くもこの企画で動き始めたことを公開していた。
3.G.E.N
——ゲンはシングルカットされているし、podcastでもちょいちょい話してるからサラッとでいい?
うん、ちょっと前半で飛ばしすぎた。
——先ほど述べた「理想との乖離」から「はだしのげゲン」に「労働」と、ミクロ、マクロの「生活の虚しさ」を横断する本曲。意外とこの曲を褒めてくれる人も多いですよね。
有難いね。
ん?「意外と」?なの??
——うん、「おこめマン」という人間が如何に頭と肩ガチガチで生きてきた人間か伝わります。
まあそうだね、今までバランスとって、小難しい理論武装しつつもなんやかんやオナニーしたらぐっすり眠れちゃう自分の人間性、ひいては音楽性について保ってきたけど、プツンと頭の中全部文字起こした感じ。
——なんか居酒屋で酔っ払って男女問わず飲んでる人と口論してそうだわ。
俺の事見てた?
——ライブであまりやらない理由は?
うん、この曲実はDADGAD(変則チューニング)の2カポなんだよね、だからなんかコードの押さえ方もう忘れちゃった。
——慣れないことするから
曲作った時に自分で録った「弾いてみた動画」を観ながらレコーディングを進めたよ(苦笑)
——なに笑ってんだ
(撮影兼ベース演奏 Taito Hashimoto)
4.地獄
——ちょっと一曲ずつ聞くのだるくなってきたかも
そんなさみしいこと言わないでよ
——この曲はまあ、グジュグジュしてるよね、病んでるつーか膿んでる感じ。
歌詞はね、でも曲はbomb the music indutry!みたいやスカぽいのに影響受けてるつもり、サビでギューンて行くでしょ。
——知らね~~~
俺一人だったらパクリパンクで終わってたかもだけど、この曲はほんとうに各パート、サポートメンバーの意見ありきでできた感じだね、
——急にマスみたいなブラストが出るとことかね、Aメロの日本人丸出しの歌謡感は今までもよくやってたけど、コードはCmaj7とか多用してて「邦ロック」に寄りたいのかなっていう下心を感じました。
コード一個で仲間入りできるなら苦労しないよ。俺は何曜日でも邦ロック好きな人と繋がりたいけどね、
——それは本当に下心じゃんか。
5.肉塊
——これはシングルカットしたのをリミックス、リマスターしてましたね。
うん。この曲ははじめはアルバムに入れるつもりはなかったんだ。元は5曲目に「(skeat park)皇国」て曲を入れるつもりだったんだけど、サブスクではそっちは外して、肉塊にした。(フィジカル盤では入ってるよ)
——その理由は?
まあ心境だよね「俺の2020年」のアルバムって考えた時にハードコアで憂国パンクなスケパーより、半径1mの生活でこの国を変えようと決意した「肉塊」を入れようと思った。
——さっき出た「スケパー」はフィジカル盤では聞けるんですね?
ああ、1st EPのZINEに続いて今回のフィジカル盤は「キラカード」にしたよ。みんなキラカードは好きだろ?
——かのfugaziは手作りのチケットを販売したと言いますが、お米マンは「手作りキラカード」と…。
ある意味fugazi越えた感じするだろ?
——越えたかはともかく、1st EPから一貫したD.I.Y精神を感じさせるムーブですね。
やっぱり俺が言って欲しいことを言うね。
——俺だからね。
6.WE ARE NOT ALONE
——この曲は既にbandcampにて配信中のインスト曲「ODD MORNING」のリアレンジ版ですね。
—— 「ODD MORNING」が初めてつくったインスト曲とのことなんですけど、そのきっかけは?
うん、友達がファッションショーで使うBGMが欲しいてことで声かけてくれて、そもそも全編ひとりで作った音源を身内以外に聞かせるのはドキドキしたよ。でもいいきっかけになった。なんていうか精度100%のリズムトラックの上に不協和音ギリギリの肉体的なギターが乗ってて、やさしいハードコアだろ?そういった楽曲作成の依頼もまた受けたいね。
——初のインスト曲反響は?
うん、そのショーに関わってくれた子は喜んでくれたみたい、あとインスタに曲の断片挙げたら結構みんな聞いてくれてたな。
——bandcampの売れ行きは?
ちょっとも売れてない
——結局そういうとこなんだよ、youtubeの再生も全然回ってないもんな
もうセルフインタビュー降りたいかも
7.生欲
——まあ歌詞の世界については散々podcastとかyoutubeで話してますから、サウンドの話をしましょうか
そうしてもらえる?
——なんといってもドロップDチューニングやブレイクに挑戦したのが印象的ですね。今までは弾き語りありきのフォークパンクのような世界観だったと思います。(特に2nd EPなど)このようなアプローチに至ったきっかけは?
なんて言ったらいいんだろう…。明確なdistractionを求めたんだ。
有難いことに立川とかでラウドっぽいバンドと対バンすることが多かった時期があってね。正直僕はあまりそういうダウンチューニングの音楽はslip knot以外聴いてなかったんだけど、そんな僕でもライブハウスでそういうのを観るとすごくアガッたんだ。それまで僕の周りにいた、キャッチ―だかパクリだか分からないような青天井のグッドメロディ、狂ったふりのパンクバンド、ライブハウスでは聞き取れない「良い風」の歌詞。彼らを否定するわけじゃないんだけど、「いい音楽て何だ?」て僕のぶち当たってた疑問を、立川で出会った人たちはぶち壊してくれた。
——あのさ、あんまり人のこと悪く言うのやめなよ、比較なしに人を褒められないのは自分への自信のなさの表れだよ。世間様に知られない限りはトガッてるんじゃなくてただの内弁慶なんだから。誰もみてないとこで偉そうに講釈垂れて知ったり顔しやがって、俺はお前のことが本格的に嫌いになってきたぞ。
いや特定の個人を中傷するつもりはなくてね…。
——それが一番問題あるだろうがハゲ、見えない影を追いかけて、見えない敵を大きくし続けてその結論を「自分の弱さ」とか便利な言葉に押し込めるのが一番卑怯だよ。やるならやるで明確な敵を殺すつもりでやれよ。
(音楽関係ないとこでだけど)殺したい奴くらいなんぼでもいるわ舐めやがって!!(怒)いなかったら音楽なんてやってないし自分の殺意を好き放題垂れ流すことが許されないから曲作ってんだろうが!(怒)(泣)
恐れていたことが起きた。普段おこめマンが仕事中や電車の中でやってる「自分殺し」がダダ漏れになってしまっていた。
——誰も傷つけない安全圏の自己否定に陶酔してるテメーみたいな尿道オナニー中毒よりサラシ巻いて旭日旗掲げてる奴らの方がよっぽど健康的だつってたんだよ!
政治の話出したらもう終わりだぞ!腹の底ではそんなこと思ってないくせに!!死ぬまで喧嘩だ!戦争!!!(泣)
片方の俺は怒り狂い、もう片方の俺は泣きじゃくっていた。現場の空気は最悪だった。しかしその空気を知るのも俺のみである。なぜなら全ては俺自身の中の対話なのだから。
——おいこれどうやって収集つけんだよ
2人の俺の間に立った(共有の概念としての)俺はおもむろに「G.E.N」の歌詞を朗読した。
最低なこの怒りも この悲しみも俺の分だよ 誰にも分けない俺の分だよ誰にも分からない俺の分だ(中略)
最低と最高の間をくぐりぬけるだけが毎日かよ
願いをかける星なんてねえよ この世の光に人生かけてよ
laborとworkの間で飯を食うので精一杯だよ
無神論者と拝金主義者の間の隅っこちょろちょろしてるよ
するとどうだ、2人の俺はまるで反町隆史の「POISON」を聴いた赤子のように落ち着きを取り戻した。
——まあ、あれだよ。今回のアルバムの収穫として、自分の思考と曲までの距離を近づけられるようになったじゃない。自分の考えてることと音楽の間に線引きしないで出力できるようになってるのは進歩だよ、
そうだね、婉曲的だったり、ギャグを「逃げ道にせず、思考から音までの瞬発力みたいなのは高まったと思う。それが良いか悪いか、これからも続けてくかはまた別として、きっと必要だったことだよ。
——その辺のウジウジした部分も音に込めたつもりなので、これ以上はもう聞いてもらうしかないって。他のこと感じてくれたらそれはそれで結果オーライだから。
「苦悩の痕跡」があるアルバムが好きなんだ。エレカシでも「扉」が好きだしね。
8.ひとりもゆるさない
——この曲は分かりやすくテイストが違いますね、裏打ちのリズムや、おこめ丸出しのネットリしたサビが印象的です。
ああ、さっきも言った通り今作の、というかこの一年の僕のテーマはとにかく攻撃的になりたかった、腹の中の怒りを消化するので精一杯だった。そんな曲を(ボツも含め)作りづける間、使わないようにしていた今までおなじみ進行やメロディや構成を自分自身に許してあげたんだ。
——確かに「おこめマン」ぽさは感じました。歌詞も分かりやすいところと酷く抽象的な部分が混在してますね。
そういう意味では自由に曲も歌詞も書けたね、好きなようにやったよ
——全部好きなようにやれや
ある意味では全部好きにやってるんだけどね、
曲ってのは俺の人生を写していて、その人生が右往左往、懊悩そのものなんだから、その葛藤はアルバムに反映されてると思うよ。
「苦悩の筆跡」があるアルバムが好きなんだ。エレカシでも「扉」が好きだしね。そんなアルバムを作れたことは誇りたいナ。
——でもリスナーに難産感が伝わったらそれはそれでダサくない?苦しみながら生み出したもの全てがかっこいい訳ではないよ
うーん、まあ聴いてる側からしたら知ったこっちゃないよね、自信なくなってきた。配信停止しようかな
——まあでも、その葛藤に迫ってアルバムの世界を広げようと思ってこうやって話を聞いてるわけだし。
やっぱり俺にはお前が必要だよ。
9.就職活動のテーマ
——これ言うほど就活の歌かなあ。
んー、アルバムについて語る中で就活の話がよく出ちゃうんだけど、正確には就活をきっかけに自分の人生にぶちあたっちゃったんだよね、何がしたいかとか、どう見られたいかとか、その中で音楽をどこに置くかとか。もっと言うとそういう局面で「俺には音楽しかねえ!」って言い切れなかった自分にもイライラした。(タイトルにも関わってくるよね)
——なるほど。ストレートなタイトルでも、歌詞を見ると思いのほか詩的な表現が際立ってるように感じたのは、「就活」がいくつものフィルターを通して音楽に出力されているからなんですね。
うん。歌詞もコードもアレンジも好きなの詰め込んだよ、ギャルパンクの実践て感じだ。
——そのちょっと前から言ってるギャルパンクてなんなの?スベるスベらないの前にみんな意味も分かんないからスルーしてるんだと思うよ。
あー、じゃあもう言っちゃうとremo driveとかPUPにハマってたんだよね~、ギターがうるさくてメロディが可愛くてポップパンクに近いんだけど、それより少し後ろ向きだったり曲のフックがハッキリあったりするんだ。
——なるほど。今までの曲は別にギャルパンクじゃないっしょ?標榜するのやめた方がいいよ、これ以上名前で変な先入観持たれる必要ないんだから。
でもこんだけ情報過多な社会で「○○バンド」みたいなのをラベリングするのは悔しいけど必要だよ、誰かに「青春パンクバンド」とか「今時珍しいロックンロールバンドです!」と言われるのもあれだし。
そんな言うなら考えてよ。
——…。
…。
——「懊悩パンク」
・・・悪くねえな。
——「煩悶パンク」
もういいよ。
〜下段へ続く〜