金融資産運用における「国内」と「国外」について
不動産への投資においては、その不動産が日本国内にあるか国外にあるかは歴然としている。地政学的な情報や適用される法律に関する知識などを十分に持っている地域と、そうでない地域では投資の安全性が大きく変わってくる。なので、「国内にある不動産」か「国外にある不動産」かは、多くの日本人にとっては大きな違いがある。
一方、株式については、発行主体である企業の登記上の本社がどこの国にあるか、とか、どこの国の株式市場に上場しているか、という情報と、現実に世界中のどの地域でビジネス展開をしていてどの地域における経済情勢に強く影響を受けるか、というのは無条件で一致はしない。個人的には、よほどドメスティックなビジネスをしている企業でない限りは、「いわゆる国内株」であるか「いわゆる外国株」であるか、というのは資産そのものの特性としてはあまり考えなくていいように思う。
ただ、新興国株に関しては日本を含む先進国の株と同一視はできないと思っている。新興国の企業のほうがドメスティックなビジネスをしているところが多そうに思うのと、株式市場の運営自体が未成熟であるだろうということ、政治情勢の不安定度がより高いということ、などを考えると、自分にとっては日本を含む先進国の株式とは全く別物である。
もう一つ、為替リスクについては、円高で外貨建て資産の円建て時価が下落するのが不安、ということであれば、円が再び下落するまで外貨建て資産の円転をしない、とか、給料や年金のドル換算価値が上がることでカバーできていると考える、とか、でいいのかなと思う。日本円が右肩上がりで上がり続けるのが自分があの世へ行くまでずっと続く、なんてことはあり得ないと思っている、というのもあるけど。
あと、たとえば豪州でインフレが起きて豪ドルが下落して……という話だったら、それは通貨の価値が下落するだけで当地の不動産や株式はむしろ円換算でも上昇していたりすると思うのだ。なので、為替リスクを真剣に心配するのは、通貨そのものや債券などのインフレ負けする資産に投資する時だけでいいと思う。
国債などの公債の場合は、発行主体の信用度と、前記の通りの為替リスクを考えなきゃいけないので、国内公債(日本国債や日本国内の地方債)と外国公債とでは全然別物と考える必要があると思う。
社債の場合は、企業ごとの信用度がその企業の経営状況に強く依存するわけで、株式の場合と同様に、その企業が日本企業か外国企業かというのはあまり関係ないと思う。この場合は、「国内か国外か」は「円建てか外貨建てか」を見ればいいと思う。
かように、投資先が「国内」か「国外」かということを論じる場合は、投資するアセットクラスが何なのかによって『国境線』の定義が変わってくることを意識しなければいけないと思う。