story 呼び出し
鑑別所を出所してから約1ヶ月が経とうとしてる。
どうやら地元の同級生の間では俺が捕まったという噂が既に広まってるみたいで駅とかでバッタリ会っても目を逸らされる。地元の同級生は進学校に通う人も少なくなかったし無理もなかった。
桜も咲き始めて4月だ。
捕まってる間、腹一杯ご飯を食べられなかったこともあってか出て来てからは食いたいもんは食いたいだけ食ってた。笑 おかげで5キロも太ってる。
塗装屋の仕事も始めて1ヶ月になるが真面目にやってる。時折寝坊したりもするけど。笑
いまは免許の為にもフラフラしてられないから仕事も身が入って楽しい毎日。
出所したばかりの時は夜9時以降の外出禁止という保護司との約束を守っていたが最近は慣れてきてしまいまた夜出歩く事が増えてる。まだ16歳の遊びたい盛りには難しい約束でもあった。
深夜0時過ぎ地元のリョウと2台で大通りを原付で流してると後ろから来た車に罵声を浴びせられ止められた。日産シーマだ。。
「ハジ寄せろオラァ!」車を斜めに駐車して俺達の行き先を塞いできた。
シーマから降りてきたのは背の高いスラッとした男だ。リョウいわくこいつは2つ年上らしい。
「テメーが中島か。あっ? 誰に断って走ってんだよ毎晩煩くて迷惑してんだよな」
飛んだイチャモンを付けられたと思った。リョウは一回ぶん殴られてるから完全ビビってた。笑
俺は先輩でもなんでもないくせに先輩ヅラされるのがすごく嫌だった。
「そうだよ俺が中島だよ。テメーは誰だよ?」
俺はいきなり相手に殴りかかった。すると相手に避けられてそのまま背負い投げをされてしまった。
「いってーな!」俺が言うと
「勝手に喋ってんじゃねぇ!」と言われ顔面にサッカーボールキックを食らい馬乗りになられてボコボコにぶん殴られた。相手の拳と地面を頭が往復した。
口が切れて血まみれになり体も力が入らなくなってた。俺の後にリョウもきっちり殴られてた。
5、6発殴って気が済んだ相手は俺の携帯を奪い取り番号を抜いた。
「俺は白里の尾島っつーんだよ。2度と粋がった口聞くんじゃねぇぞ」
俺の携帯を投げ捨てシーマはそのまま走り去った。
最悪な展開だ。携帯番号を相手に知られたと言う事は間違いなくまた呼び出される。。
俺とリョウはその場でしばらく寝転がったまま2人で夜空を眺めながらタバコを吹かした。結局立ち上がって家に帰ったのは深夜3時過ぎだ。 翌日も仕事はしっかりと行った。
職場の先輩には「まーたぶっ飛ばされたんか?」なんて言われた。笑
リョウは少し懲りたみたいだが俺は納得が行ってなかったし翌日からまた走り回る事にした。
そして翌日仕事が終わり隣町の成塚と焼肉を食ってると昨日の先輩から着信だ。
「おい。テメーいまどこいんだよ。今すぐ長宮公園来い」
またぶっ飛ばされんのかな。。シカトしようとも考えたけどその時はなぜか無視出来なかった。成塚には事情を伝え焼肉屋を後にした。
「俺も付いてくよ」成塚は言ってくれたが迷惑かけるわけにも行かないし自分で解決するしかないと考えて一人で公園に向かった。
到着するなり原付から引きずり下ろされてまたボコボコにされた。2日連続だ。
タイマンだし俺もぶっ飛ばす勢いで向かっていくが力負けしてしまいぶん殴られる。
呼び出しが毎日になって俺は毎日地元の先輩にぶん殴られてた。
相手が1人の日はいいが日によっては仲間を集めてて3人くらいからボコボコにされた。それでも関係なく呼び出しには毎日行くし毎日地元を走り回った。
そんなこんなで呼び出されてはぶん殴られる毎日が10日続いた。
「中島。テメー気合い入ってんな。もう分かったよ。お前は好きにやれよ」
懲りない俺を先輩が少し認めたみたいだ。ただしノーヘルだけは厳禁。エナメルシートに関しては目を瞑ってくれる事になった。
この日から尾島先輩とはぶん殴られるんじゃなく一緒に飯を食いに行ったりもする様になった。地元では初めての先輩と呼ぶ人となったんだ。
俺とリョウ以外で地元で溜まってる同年代がいたりした時はすぐに尾島先輩から着信が来る。そして俺は現地にすぐに向かいそいつらをぶっ飛ばすか話をして散らばせた。もちろん歯向かわれればすぐにぶっ飛ばした。けどカツアゲはしない。
この頃には基本的に地元の同い年で俺とリョウに絡んでくるやつはもういなくなっていた。