【20XX文】豊久君に回復を!

 幽魔との戦いの中で傷付く武将は当たり前のようにいる。
 豊久が左腕を庇いながら膝を折った。
「豊久ぁ!」
義弘は甥のために駆け寄る。
 傷を庇う手指から血が零れ、落ちていく。
「親父御、大事ないです」
「何を言うか!傷口を縛れ!」
義弘は隠しから手拭いを取り出した。
 取り出したのは、

ね こ さ ん の タ オ ル である。

タオルの『にゃー』とした猫の顔に、
「!?」

鬼 島 津 、 驚 愕 。

 そもそもこのタオルには肉球一閃斉が使っている物と同じ物であるが、猫大好き鬼島津はこれを欲しがった。
 謙信が乗り移ったのかのように、

「 わ し に も く れ 」

とねだったのである(※20XXの謙信は死んでいません)。
 一閃斉は通販でわざわざ取り寄せ、しかも義弘の妻に手渡させると言う手の込んだ方法で届けた。妻曰く、相当な喜びようだったらしい。

 さて、
「……!」
鬼島津はまだ困惑している。
「親父御、わしは大丈夫です」
豊久の顔は青白く、息が荒い。目の前の可愛い甥っ子は苦しんでいる。傷を縛らねば。妻から貰ったお気に入りの

ね こ さ ん の お た お る で 。

「しかし、血が」
「なりません」
「傷口を縛るぞ」
「声が震えております!」
「今すぐ傷を」
泣きながらねこさんおたおるを差し出さないで下さい!!!」
 あ ら ゆ る 意 味 で 一進一退の危機だ──肉球一閃斉は、
「ねねさん、政久君!今すぐ豊久君の手当てをしてあげて!
悲鳴混じりに指示を出した。

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