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シーンを作って文化が生まれる 〈by this river開催記念 岡本真侑さんインタビュー〉

【2024年10月16日22:02 記事内で一部表現を変更いたしました】

もこみと申します。Qeticにインタビュー記事を寄稿しました。

本記事は無料で全文お読みいただけます


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2024年10月19日〜20日に神奈川県相模原のオートキャンプ場「DAICHI silent river」で開催される没入型音楽イベント「by this river」について、イベント発案の中心人物である松永拓馬Miru Shinoda(yahyel)に話を訊いた。イベントの概要はそのインタビュー記事プレスリリースを読んでいただければ分かるのでここでは割愛するが、間違いなく素晴らしい一夜になるだろうと確信している。会場に足を運べる方はぜひ訪れていただきたい(チケットはこちら)。

そのインタビューは松永拓馬さんとMiru Shinodaさんに加え、記事には登場しないが彼らから「マー君」と呼ばれている男性も同席していた。本記事はそのマー君こと岡本真侑(おかもと・まさゆき)さんが主役である。

僕と岡本さんの出会いは松永さんの2ndアルバム『Epoch』リリースに際してのインタビュー時だった。最初は「松永拓馬のマネージャーかな?」と思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。そのときにも「何をしている人なんですか?」と尋ねた覚えはあるのだが、失礼ながらその内容までは覚えられなかった。

それから半年以上が経過し、今回『by this river』の開催に際して彼らに改めてインタビューする機会を得た。岡本さんが窓口になって、事前に質問票を送ったりインタビューの方向性を相談したりした。そこでインタビュー時間について前回同様2時間を提案されたのだが、記事を早めに仕上げることを考慮すると長過ぎると思った。僕の作業ペースだと文字起こしだけで早くても8時間、コツコツやるとして公開まで2週間ほどかかりそうだ(結果的にかかってしまったのだが…)。

でも、せっかく時間を取ってくれるならということで、僕は改めて岡本さんに「何をしている人なんですか?」と訊いてみることにした。前半の1時間は松永&篠田さんにQeticの企画としてインタビューして、後半の1時間は脱字コミュニケーションの(というより僕個人の)初自主企画ということで岡本さんにインタビューしようというアイデアだ。

そもそも『Epoch』のインタビューで彼らのバランス感覚や思考に触れてから、ライターとして何か手伝いたくてしょうがなかったのだ。結果的にどちらの記事も良いものになったのではないかと思う。

ところで、なぜ私個人のメディアではなくこの場に掲載しているのか。それについてはまた別の話なのでここには書かないけど、おかげさまでこのインタビュー(シリーズ化して色んな人に話を訊ける場にしようと思っています)は理想的なスタートを切ることができたと思う。岡本さん、ありがとうございました。

企画・編集:最込舜一
記事構成:タケナワ


◎PRという仕事

まずは自己紹介からお願いします。岡本さんは何をしている人なんでしょうか?

岡本:今はフリーランスで広告の代理業をしています。企業や企業の商品と向き合って、ブランディングのプランニングも企画もしていますね。
これまでの経験上、広告の中でも特にPRというジャンルが得意です。パブリシティを狙っていくところだったり、記事の方向性や中身を考えたりしています。


左から順に、Miru Shinoda、Kenta Yamamoto、岡本さん、松永拓馬
撮影はKenta Yamamoto


今はフリーとのことですが、元々は代理店に勤務していたんですね。ところで、PRってそもそも何をするんですか?広告業界のことは何も分からないもので…。

岡本:いわゆるテレビで言うとCMが広告の枠で、番組で伝えられる情報がPRですね。例えば、情報番組で原宿に新店舗ができましたみたいな話とかはPRの代理店が中に入ってる。番組のプロデューサーに「この企業を取り上げてください」とか「このブランドが新しく海外から来るから今こそ取り上げるべきタイミングですよ」みたいなことをかけ合う仕事ですね。まさに僕が今回Qetic編集部にお願いしたような感じです。

なるほど。CMを制作するのとPRは同じ広告業界でもジャンルが異なるっていうことなんですね。そして編集者的な仕事でもある。

岡本:そうですね。クリエイティブを作るというより、その情報を作っていく感じです。メディアの編集者の代わりに企画を作ってあげる感じでもあります。

では、どうしてPRという仕事に就こうと思ったのでしょうか?

岡本:もともと中高時代に友達に音楽をオススメするのが超好きでした。その友達がおすすめした音楽に共感してくれるのが何か嬉しくて。みんなが聴くJポップや日本のメロコアではなく、みんなが聴かない海外の音楽をおすすめすると、「うわ、なんだこれ」っていう反応が返ってくる。そういう輪が広がっていくのが嬉しかったんですよね。で、それの大きいことってなんだろう?って考えたら広告の仕事かなと。しかも音楽というフィールドでやれたら最高だなっていうのがあって。それで、今の感じになっています。


◎大阪・岸和田というルーツと学生時代

幼少期から色々とルーツ的な話をお聞きしていきたいのですが、まずご出身はどちらですか?

岡本:大阪です。サラリーマン時代に矯正させられたので、あまり関西弁は出ないですけど(笑)。

大阪の中でも、岸和田っていう街の出身です。岸和田は「岸和田だんじり祭」というのが年に2日あって、そのためにみんな生きてるっていう街。結構ヤンキータウンなんですよね。

町中の人が大勢集まって大きな木の塊(だんじり、山車)を、太鼓を叩きながらロープで引くっていう。もう本当に全員が家族みたいな雰囲気で盛り上げていくんです。ヤンキーヴァイブスのオラオラ系で、毎年のように死者も出るようなお祭りなんですけど、今僕がやっていることと繋がってるなと思うのは街全体で1つのものを作り上げるっていうところ。


岸和田だんじり祭の様子。”速度に乗っただんじりを方向転換させる「やりまわし」が醍醐味で、曳行コースの曲がり角は大勢の観客であふれる”とのこと。岸和田はだんじりの本場であることから特に過激であり、直近10年で10名の死者を出しているため地元でも賛否がある。


岡本:小さい頃、親戚が祭りの時に集まって、みんなで飯食ったり、そこでしかない会話が生まれたり、繋がりが生まれたり。学生の頃からイベントのオーガナイズをやっていたんですけど、人を集めることが好きなのは岸和田というルーツにあるんじゃないかなと思っています。


大学でイベントのオーガナイズをしていたというのはサークル活動ですか?

岡本:大学は兵庫県の大学だったんですけど、サークルを作って、イベントを開催していました。

ライブハウスでバンドのイベントをやったり、そこにダンスチームをくっつけてみたり。今考えると全然合わない2つだなと思いますけど(笑)。

界隈と界隈を掛け合わせて生まれる会場のグルーヴ、そこでしか生まれないグルーヴを作るのが好きです。DJイベントやファッションショーもやってて、とにかくジャンルに限らず、人を集めてシナジーを生むということをずっと意識してやってました。


◎音楽遍歴とか


音楽を友達におすすめするのが好きだったとのことですが、音楽遍歴を教えていただけますか?

岡本:ブルースが好きでしたね。バディ・ガイジミ・ヘンドリックススティーヴィー・レイ・ヴォーンとか、クラシックなギターヒーローから入りました。家ではビートルズとかボブ・マーリーが流れていました。



岡本:バンドだとやっぱりどストレートにレッド・ホット・チリ・ペッパーズレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンニルヴァーナとかですね。あと僕はベースも弾いていたので、マーカス・ミラーとかヴィクター・ウッテンといったフュージョン系のベーシストを聴いてました。

岡本さんって何年生まれですか?

岡本:1989年です。なので90年代のロックのリアルタイム世代ど真ん中とかではないですね。

割とクラシカルなブルースやロックンロールが入り口だったんですね。そこからMiru Shinodaさんや松永拓馬さんと繋がるということは、クラブ系の音楽に近づいたのだと思うんですが、そこにはどういう経緯があったんでしょうか?

岡本:学生の時にナイン・インチ・ネイルズを聴いてデジタルの音楽に興味を持ち始めました。それから自分でDJのイベントとかもやってクラブシーンに入っていきましたね。そのときにヒップホップにも興味を持ちました。大阪にはヤンキー文化があるし、僕もヤンキーの町で育ったし。おらついた音楽、かます音楽が好きでしたね。ギターヒーローもテクニックでかます系というか。
バンドとDJカルチャーの違いやデジタルのサウンドを知って、それぞれの良さは理解しつつ、テクノとか四つ打ちの世界にも入っていきました。

それから会社に入った時に同期だったRinsagaというアーティストとバンドをやってみようってなったことがあって。数回ですけどアンダーグラウンドな感じでライブをやったんです。そのあたりから一緒に遊ぶ中で東京のクラブシーンにどっぷり入っていったって感じですね。当時から僕はミルくんと顔見知り程度の感じだったけど、付き合いは長いです。でも、こうしてプロジェクトベースでがっつり仕事をするのは初めてですね。


◎by this riverのスポンサー「AUGER」について

音楽と直接関係してなくても構わないのですが、他にはどんなお仕事をされてるんでしょうか?

岡本:今は大きな会社でいうと『by this river』のスポンサーの「貝印」という刃物メーカーと仕事をしています。爪切りのシェア日本一なので、気づいてないけど商品がみんなの家にあると思います。

その貝印が手がけている「AUGER」というグルーミングツールブランドの宣伝も一部担当をしています。剃刀とか爪切りとか、いわゆる洗面台ツールのブランドなんですけど、カルチャーとも繋がりを作ってるんですよね。スポンサーとしても関わることがあるし、AUGERがイベントを組むこともあります。



岡本:今回の『by this river』は大自然の中でアンビエントでサウナもついてる。AUGERはブランドとして「整える」ということを大事にしているんですけど、そういったところに運よくシナジーを感じていただけて、協賛していただきました。


「DAICHI silent river」には建築家・谷尻誠が手掛けた大自然を眺めることのできるガラス張りの茶室のようなサウナ「サ室」がある。
イベント当日は、サ室で心身をととのえ、外気浴では体中で自然を感じることができる。利用にはサウナチケットが必要で、一度購入すれば期間中は何度でも利用可能。更衣室やシャワールームも完備。水着やタオル等は持参となる。利用者はAUGERレジャーシートももらえるそうです。


『by this river』の情報解禁があったとき「このスポンサーは何だろう?」と思ったんですが、そういうことだったんですね。これは確かに岡本さんの口からじゃないと聞けないことですね。お聞きすることができてよかったです。

AUGERは「心に触れて“整える”時間」をブランドコンセプトに「身だしなみを整える時間」をより豊かで、より心地良いものへと導くべく誕生したグルーミングツールブランドとして、 ”究極の整い”を体験いただける本イベントに協賛することとなりました。

東京近郊 藤野の秘境で音楽と共に“究極の整い”を体験する没入型音楽イベント「by this river」にグルーミングツールブランド「AUGER」が協賛(貝印株式会社プレスリリース)

岡本:過去に京都でレセプションをやった時はKomatsu Kazumichiくんや荒井優作くん(butasaku)を呼んで、AUGERのコンセプトを表現した絵や立体作品を展示しながらアンビエントを楽しむプログラムを僕の方で企画したり、寺で瞑想して心身を整えるとか、お茶のシーシャを体験したりとか。AUGERはブースを出店するとかではなく、そういった体験自体がブランド体験になるってことを大切にしてるんですよね。だからこそ今回のイベントも一緒に作っていけることが嬉しいです。


◎将来のこと、シーンと文化のこと

岡本さんが今後どういう将来を見据えているのか教えてください。

岡本:それこそ「シーンを作る」っていう、(松永)拓馬が言ってたことと似てるかなと思ってて。僕は人に伝わりづらいことを伝える役目なんじゃないかと思っています。ミルくんも拓馬も、これが良いんだっていう基準はブレずにしっかりしてるけど、それを人に伝えるのが上手いわけではないし、伝えない美学も持っている。だから僕はそこを切り取って社会に打ち出して、ちゃんと向き合ってくれる人が集まってくれる状況を作っていきたい。シーンを作って、その先に文化が生まれる。そういうことができたらいいなと思っています。

by this river

具体的に今回の『by this river』の今後についてはいかがですか。

岡本:また同じイベントをシリーズを作るっていうよりは、今回の『by this river』で培った全員の濃い共通認識を、例えば次は箱でやったらどうなるか、はたまたモノを作ってみたらどうなるのか、みたいな。俺らにしか作れない感性で次に何をどう表現するか。その時々で表現の仕方は色々あると思うんですけど、それによって広げていく感じだと思います。大きなイベントを作りたいというよりはそっちですね。シーンを作って文化が生まれる。

作家は必ずしも自分の表現や制作物について言語化して伝えるわけではないし、それが苦手だったり避けたいと思っている人も多い。なので、そういう風に文化が生まれる土壌としてのシーンが広がっていくこと、ピュアでありながら丁寧に輪を広げていくこと、その手助けを岡本さんはされているのだと思いました。

岡本:そうですね。まさに今回も、どの情報を切り取って人にどう伝えるかっていうところをかなり考えないといけないプロジェクトなので、すごくやりがいを感じています。

なかなか言語化するのが難しいとはいえ、伝わる人もやっぱりいて、『Epoch』にどんどん人が巻き込まれてますよね。僕もその一人で、こんな風にインタビューを企画したわけですが。

岡本:もう今すごく制作が佳境でカオス状態なんだけど、やっぱりこうして思いの部分で繋がって色々サポートしてくれる人が出てきて、それだけで泣きそうになる。

本当に良いイベントだと思うので、とても楽しみですし、今日のインタビューでさらに楽しみになりました。

岡本:『by this river』は、自分だけではなくメンバー全員それぞれが強い想いを持ってやっていて、それらがいい混ざり方をして、全てが上手くはまって回ってるような感覚があります。 会場の「DAICHI silent river」の方と実は繋がってたことが分かったり、アーティストもどこかで繋がりがあったり…。だから、運命的というか、呼ばれてるというか、やれと言われているような感じのイベントかもしれない。 なので、企画をスタートした身からすると、何かが決まるごとに前進しているのが見えてワクワクします。開催まで色々な問題もありましたが、誰か1人でも欠けていたらイベントができていなかった。チームの全員に別々の想いがありながらも、共に営む共同体になったなと感じています。

イベント情報

by this river

チケットの購入はこちら

・会場:DAICHI silent river(神奈川県相模原市緑区牧野11455)
・日時:10月19日(土)15:00〜10月20日(日)12:00
・出演者:GUZZ、jan and naomi、Komatsu Kazumichi、Mikael Lind、Miru Shinoda、QOA、
Rinna Shimizu、Seiichiro Ito、Tenniscoats、堀池ゆめぁ、松永拓馬
・出店:おにぎり屋 土偶、 KAFE工船、繁邦
・特別協賛:AUGER
・空間演出・照明:遠藤治郎
・音響:MASSIC inc.
・デザイン:Atsushi Yamanaka
・写真:Kenta Yamamoto
・香設計:Ahare Space Project
・制作協力:N.A.S.A. Creative
・主催:by this river運営事務局

●チケット券種
各チケットは販売期間と価格が異なりますので、ご確認の上ご購入ください。
・UNDER23
無期限/数量限定
¥6,000
・EARLY BIRD
販売期間: 8/26(月)〜9/13(金)/数量限定
¥7,000
・一般1
販売期間: 8/26(月)〜9/30(月)
¥9,000
・一般2
販売期間: 10/1(火)〜10/18(金)
¥11,000
・当日チケット
販売日: 10/19(土)
¥14,000
・バス往復チケット(藤野駅-会場間)
¥2,000
※枚数限定。事前販売のみ。9月発売予定
・駐車場チケット
¥3,000
※事前販売のみ。
・サウナ当日チケット
¥2,000
※サウナ券は事前販売を行わず、当日会場での販売のみとなります。
※水着やタオルはご持参ください。
・チケットサイト:bythisriver.peatix.com
・公式サイト:www.by-this-river.com
・公式Instagram: www.instagram.com/here_bythisriver/

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