講師への道 序章 ②全体像
講師に求められる知識、スキル、マインドを体系化する
さて、講師として体系化、形式知化すべきノウハウとは、一体何でしょうか?受講者に届けるコンテンツの内容に通じていることは当然として、限られた時間の中で研修のゴールを達成するために講師の立場で求められる知識、スキル、マインドとは何でしょうか?
思いつくまま列挙すると、まずはプレゼンテーションスキルがありそうです。その土台として、ロジカルシンキングのスキルも求められます。一般論として、話が分かりにくい講師から何かを学び取るのは困難です。
説明の仕方として、受講者を惹きつける話術があるとなお良いでしょう。そういう意味では話を組み立てる構成力やストーリーテリングなどのスキルも求められそうです。他人を惹きつけるストーリーの核となるのは、印象に残るインパクトがあって示唆に富む体験談でしょうか。そういう意味では、他人に語るべき体験談の引き出しを複数持っていることも重要です。
ちなみに売れっ子講師になりたければ、特定の分野で高い専門性を備えているだけでなく、その周辺領域でそれなりに語れる知識と経験を有していることが重要です。3分野か、それ以上カバーできれば、仕事にあぶれることはないような気がします。
それなりに長い時間、受講者を惹きつけ続け、かつ効果的・効率的に学習ゴールに導いていくためには、学習内容の設計に関する知識が必要です。いわゆる、インストラクショナル・デザインの知識です。
研修プログラムの構成要素、セッションとしては講義の他にも、グループ討議、クラス討議、受講者間の質疑応答、講師と受講者間の質疑応答、受講者によるプレゼンテーション、講師によるデモンストレーション、受講者同士のロールプレイ、ケーススタディ、個人ワーク、グループワークなど列挙できます。
ロールプレイやグループワークの単位も、ペア、トリオ、グループの他、代表する受講者またはグループが皆の前で実演するなどの演出も可能です。このように、どのタイミングで、どのようなセッションを、どういう単位で実施するかの設計が、インストラクショナル・デザインと言えます。大前提として、研修ゴールを効果的・効率的に達成することがあります。
インストラクショナル・デザインとも関連しますが、講師に求められるデリバリースキルは、一方的なティーチングスキルに限定されるものではありません。具体的には1対1の対人スキルとして、受講者のコメントを理解する傾聴スキル、受講者から気づきを引き出すコーチングスキル、受講者のアウトプットに対して有益なコメントやアドバイスを返すフィードバックスキルなども求められます。
1対多数の対人スキルとしてはファシリテーションスキルが挙げられるでしょう。すなわち、グループやクラスでの討議を活性化させたり、個別具体的な気づきや学びを汎用化し、クラス全体の学びに昇華させたり、あるいは言葉にならない受講者の気づきを言語化、概念化するコンセプチュアルスキル、ホワイトボードにまとめるならメモのスキルも含まれます。
そして、ヒューマンスキルや研修設計の知識以外にも、多くの受講者と直接対峙し、貴重な時間を預かって、学習ゴールの達成に向けて伴走する際の講師としてのマインドも重要です。マインドは最も重要ですが、最も難しいテーマでもあります。
以上述べたことをこれから少しずつ読み物にしていくのですが、全体像を整理すると、以下のような章立てになりそうです。
第1章 1対多数のデリバリースキル
①ティーチング ~スライドは読む?端折る?語る?~
②講師自己紹介 ~「魔の11分」をいかに乗り切るか~
③デモンストレーション ~「私、失敗しないので」~
第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル
①傾聴・共感 ~傾聴・共感モードを常態化させる~
②研修におけるコーチング ~「気づきを引き出す」とは?~
③フィードバック ~「気の利いたフィードバック」は講師の力量の現れ~
第3章 1対多数のファシリテーションスキル
①ディスカッションの活性化 ~討議は踊る、されば深まる?~
②タイムマネジメント ~さながら体操競技の着地のように~
③多様性のマネジメント ~パス回しで硬いディフェンスを崩す~
④議論の見える化、構造化
第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)
①IDとは ~IDは誰のためのもの~
②ID設計 ~ID設計はメタ思考を駆使すること~
③ラーニングジャーニー
④ラーニング・エクスペリエンス・デザイン(LXD)とは
⑤学習KPIの設計とモニタリング
終章 講師マインドとは
研修で「真実の瞬間」を担うのは誰?
序章(前回と今回)に加えて全5章、全18節になります。現時点でのイメージなので、もしかしたら増えるかもしれません。書き終えるのに1年ぐらいかかるかもです(笑)。是非、お付き合いくださいませ!