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講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)①IDとは

インストラクショナル・デザインとは

講師実務読本「講師への道」もいよいよ本丸、インストラクショナル・デザイン(以降「ID」と略します)に突入します。講師への道を歩むにあたって、もっとも本質的で奥深い領域だと思います。ドキドキしますね。

さて、まず「IDとは何か?」ここから始めたいと思います。定義を押さえることで、何が重要でどうするべきかが見えてくるからです。学術的な定義はありますが、実務家としての私のこれまでの登壇経験に基づき定義させていただきます。
「IDとは、いつ、何を、どの順で、どの方法で、どれぐらい時間をかけて学べば、最も効率的かつ効果的に学習ゴールを達成できるかについての学習設計(ラーニング・デザイン)のことであり、通常、複数の学習セッションから構成されるものである」

IDは学習者のもの?教育者のもの?

学術的な定義によっては、方法論の中に「教材の開発」を含むものもあります。また「学習設計」を「継続的かつ体系的な改善プロセス」と捉えて、実施とその評価と、さらに先にある改善まで組み込む定義もあります。全く異論はございません。
さらに、インストラクショナル・デザインは通常「教育設計」と訳されていて、学ぶ側よりも教える側の概念として定義されているようです。なので、自学自習の学習設計にIDという概念を持ち込む人はいないようです。

が、社会人学習については、果たして今後もそれでいいのか、「検討の余地あり」と私は考えます。なぜなら、キャリアの多様化、複線化、自律化がますます進む昨今、情報技術的にも学習の個別化が実現可能となりつつあることを併せ鑑みると、IDは学ぶ側の概念としても極めて重要になってくると考えるからです。が、この問題意識については一旦、脇に置きます。

学習者自身が自らの学習設計をデザインする考え方は、今後大事になるのでは?

仕事である以上、効率を度外視するわけにはいかないが…

一般論として、生涯学習のように学習そのものを目的とする場合を除き、学習にはゴールが設定されます。「〇〇の知識を習得する」や「〇〇のスキルを使いこなせるようになる」や「○○の心構えを身に付ける」などです。さらに踏み込んで、「〇〇業務の品質を〇%向上する」などと、学習統合的にゴール設定する場合もあるでしょう。

ゴール設定される以上、効果はもちろん効率についても定義に含めました。ただし、IDにおける効率は、反復練習を排除するものではありません。ゴールの難易度によっては、あえて同じ学習セッションを反復練習する必要もあります。
また、学習内容は同じであっても、学習アプローチや方法を変えて学ぶことで、概念理解が多面的に深まり学習ゴールの達成に近づくこともあります。ですので、効率一辺倒というわけでもありません。

効率的かつ効果的に学習ゴールを達成することを目的とすると、方法論はもちろん、「いつ」「何を」「どの順で」が決定的に重要になってきます。それが「体系的に学ぶ」という意味です。体系的でなければ、学習効率と効果が落ちるからです。
この辺り、四の五の言っても分かりにくいので例示します。若手営業パーソンの商談力を高めるためにトレーニングを1日で企画するとしましょう。IDはどうなるでしょうか?


例示:若手B2B営業パーソンのための商談トレーニングID

  1. オープニング(研修の目的やゴール、時間割の明示、講師自己紹介)10分

  2. アイスブレイク「グループ内自己紹介」15分

  3. グループ討議「①商談力を要素分解し、②課題を特定する」25分

  4. 発表共有(グループ数にもよるが仮に)25分

  5. (各グループの発表に紐づけながら)まとめの講義「商談力とは」15分

  6. 休憩10分

  7. 講義「ニーズヒアリングのスキル解説」15分

  8. ペアロールプレイ「ヒアリング」10分

  9. 気づきの共有(講師によるフィードバックデモを兼ねて)15分

  10. 振り返り&フィードバック 10分

  11. 同じペアで役割交代して再度ロールプレイ&振り返り 20分


オーソドックスな営業研修の一部(午前中まで)を例示しました。B2Bのソリューション営業を想定しています。知識習得だけでなく、スキルとして身に付けなければゴール達成できないので、参加型の研修になっています。「いつ」「何を」「どの順で」「どの方法で」という観点で、それぞれの学習セッションに意図(そこである理由)があります。解説しますね。

オープニングの意図は、受講者のマインドセット、学習内容へのコミットメント醸成、講師への期待・信頼醸成、心理的安全性の確保となります。意義のある学習目的やゴールを提示できなければ受講者を振り向かせることはできません。また、どこに向かうのか分からなければ受講者は不安になります。さらに、講師としてそれなりの信頼を獲得しなければ、聞く耳も持ってもらえません。詳しくは、第1章 第2項をご確認ください。

アイスブレイクの意図は、参加型の研修に向けたウォーミングアップにあります。本編にブリッジするために、商談にまつわるエピソードを添えてもらうのもよさそうです。始まったばかりなのでポジティブなエビソードがいいですね。
先のオープニングは重要ですが長々と講義が続くとダレるので、早いタイミングで動きのあるセッションを入れています。

(次回へ続く!)

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