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生きづらいのは思いの「混在」?(『傲慢と善良』)

・小説は、自分の感情に言葉を、名前をつけてくれる。
・言葉をくれて、自分の思いを吐き出しやすくしてくれる。
薬と同じだとやっぱり思う。

感情は、どこからが自分のものでどこからが誰かのバイアスがかけられたものなのか。
最近そんなことをよく考える。

「好き」といったものは本当に自分の心から出てきたものなのか。それとも、周りが好んでいるから「好き」と自分も感じているのか。はっきりしない。

今回紹介する『傲慢と善良』は、そんな好きや嫌いなどの感情、また自己への考え方についてを恋愛を通して考える小説。



1.紹介する書籍

・辻村深月『傲慢と善良』(朝日文庫)

2.キーワード

  • 自己(傲慢さ・善良さ)

  • 距離

  • 自己評価

  • 心配

3.感想

・「傲慢さ」


自分の中にある感情を言葉にしつつ、上手に物語に取り込んでくれていたため、とてもすっきりとした感覚だった。
自分の価値観に重きを置きすぎているということが「傲慢さ」。
「善良」に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらってばかりで”自分がなくなる”。
この二つが一人の中に混在していて、人間関係が難しくなる。と教えてくれた。

「身分社会」はなくなりつつも、どこか人を見るときに人と比べてしまう自分。勝手に相手より上か下かという視点をもってしまうことがある自分。
それはきっと、受験戦争を生きた自分だからだろうか。中学の時からテストで順番をつけることで自分を価値評価してきただからだろうか。
これを人間相手に、勝手に点数をつけるということや評価をする視点を持つこと、そんな自分が憎たらしくなることがある。その時はきっと、「傲慢さ」が自分の中にあるからなのだろう。自分の価値観で相手と自分自身の「ものさし」で比べて優劣をつけてしまう。時にはその視点も大事なのかもしれないが、常にその視点で見ていては、苦しくなる。

・「善良さ」


「自分で決められない」ということがよくある。それは、誰かに決められてきたからなのだろうか。親のしつけを守り続け、先生の言うことばかりに従ってきたからなのだろうか。
道を踏み外さないのがベストなのはわかっているが、踏み外したことで気づくことが一番多いし、そこに成長が一番あると思う。
親の「心配だから」という思い。それが子どもにとっては、ナワバリの外に出れない苦しさになるのかもしれない。そんなことを考えさせられた。

・「距離感」


私はこの小説を読んで、距離感が大切なのだと改めて知った。
当たり前のことだけど、恋人・家族・友人どれをとっても人間関係においては重要なものである。
友人が自分の恋人のことに対して色々言ってくる。親が色々言ってくる。そんな時は、距離を置くのも重要なのかもしれない。
『距離=物理的なこと以外にも、全てを話さないようにすることなど』
この小説でも登場人物の行動によってそれが確かに確信に変わった気がした。

4.こんな人にオススメ!

  • 恋愛小説が読みたい人

  • ミステリックな本を読みたい人

  • 人間関係に悩んでいる人

  • 生きづらさを抱えている人

5.おわりに

久しぶりに感想を書いた。
『傲慢と善良』本当にいい本だった。
現代社会とくくりたくはないが、インターネットが普及してから私は、人間関係の希薄さについて疑問を抱いている。祖父祖母がよく親戚の葬式に行く話を聞くと、私が歳をとった時、葬式に来てくれる人はどれくらいいるだろうと考える。ネットでは繋がりがあるかもしれないが、その関係性は果たして昔と比べてどうなのか。インターネットによって距離が関係なくつながれるようになったけれど、果たして一人一人との人間関係を見るとどうなのか。人との縁がなくなるのは楽かもしれないけれど寂しい気がする。
今回の本は人間関係について書かれていた本だったため、ふとそんなことを考えてみた。

おっきい

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