司法試験の思い出
皆様、お久しぶりです。本当は週に1回くらいは記事を書きたいのですが、新聞に10月まで別の連載記事をもっているため、手が中々回らないというのが実情です。連載記事についてはこちらにも転載できればなと思っています。
8月12日から今年の司法試験が始まりました。新型コロナウイルスの影響で8月に実施が変更になりましたが、本来であれば5月の連休明けに実施されます。5日にわたる長期の試験です。今日は中日のお休みですが、受験生の皆様は休みに充てたり、明日明後日の試験対策をしたりと様々かと思います。
私が受験したのはちょうど9年前。2011年のことです。その年は東日本大震災により、東北地方を中心として日本が大きな影響を受けている時期でした。私は北海道に住んでいたので大きな影響はありませんでしたが、東北や関東地方で受験予定だった受験生にとっては、原発事故や余震など日々刻々と変化する社会的な情勢に不安が募って、精神的にもツラかったと思います。今年の受験生も例年とは全く違う状況に不安を募らせていたことと想像できます。
司法試験の試験科目について
司法試験について簡単に説明します。よく「六法を暗記しているのでしょう」と言われますが、そんなことはありません。さすがにそれは無理です(笑)基本的に試験科目は、憲法、行政法、民法、商法(会社法)、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、選択科目(倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際公法,国際私法のうち1科目選択)の合計8科目になります。
論述試験は8科目全て課せられ、憲法、民法、刑法についてはマークシートの短答式(択一式)試験が課せられます。
論述試験については、選択科目が3時間、他の科目が2時間ずつになります。この際、試験用の六法が貸与されますので、六法を参照することが出来ます。一つ一つの条文、条文の文言が大変重要となりますので、条文を早く引くことも大事なスキルになります。これは弁護士になってからも必要不可欠な能力です。あとは、法律家は文書を作成する専門家でもありますので、日本語の読みやすさ、論理的な文章になっているかという点も極めて重要です。弁護士は裁判所や対立当事者などの相手方、依頼者に自分の主張を理解させ、説得できなければなりません。そのため、この能力も司法試験では試されているのです。
短答式(択一式)試験については、民法は75分(30~38問程度)、憲法、刑法がそれぞれ50分(それぞれ20分~25分)ずつです。私が受験した頃は、選択科目を除く7科目が試験科目でしたので、現在は受験生の負担がかなり軽減されているといえます。実際、私自身細かい条文や判例を暗記するのが得意ではありませんでしたので、なかなか苦労した記憶があります。
そして、厳しいのが短答式(択一式)試験で一定の水準を超えられなければ、足きりを食らってしまい、論文式試験の出来がいかに良くても門前払いされてしまうのです。苦手であってもまずは足きりラインを超えることが極めて重要になるわけです。
司法試験を受験するためには
司法試験を受験するには資格がいります。
現在は、法科大学院課程を修了したこと、もしくは、司法試験予備試験に合格することです。
予備試験というのは聞き慣れない試験ですが、法科大学院を修了したのと同様の知識等を取得したことと扱うための試験で、「大検」のようなイメージでしょうか。予備試験の合格率はわずか4%程度です。昔の司法試験と同程度の合格率ですね。
予備試験は、受験資格及び受験期間の制限はありません。試験科目も司法試験とほとんど重複しています。極端な話、中学生や高校生でも受験することは可能なのです。実際、高校1年生から予備試験にチャレンジし始めて18歳で合格し、続けて19歳で司法試験に合格するという離れ業をなしえた方がいらっしゃいます(慶應義塾普通部に通っていたため出来たことだと思いますが、並大抵の努力ではないと思います)。
予備試験合格者は、司法試験の合格率も極めて高いです。4%という難関を突破してきていますので、当然と言えば当然ですが、法科大学院出身者としては何とも言いがたい気持ちになります。
今後司法制度改革が進み、まだまだ流動的なところがありますので、注目して玖必要がありそうです。
法科大学院生活をはじめとした受験勉強についてのお話はまた別の機会にでも記事にできればなと考えています。
私の経験談
司法試験は長丁場でしたし、本当にツラい試験でした。私は札幌会場で受験したのですが、当時の会場はとても綺麗で広かったため、気持ち的には開放的で楽でした。ただ、椅子がパイプ椅子のようなもので、試験1日目は腰の痛みと格闘せざるを得ませんでした。2日目からは座布団を持参したため、そのストレスはなくなりました。結果的には1日目の試験結果は大変芳しくありませんでした(言い訳になってしまいますが笑)。
一緒に勉強してきたメンバーも受験していましたので、そこも心強さはありました。実家から試験会場まで通うようにしたので、両親のサポートも受けられていました。本当に両親には感謝しかありません。自分一人で試験を乗り切って合格することは難しかったと思います。5日間を乗り切るためには気持ちを切らさないことが重要になるかと思います。そのためにも、試験に向けて自分が努力してきたという自信が大事になりますし、それが結果に繋がってきます。
私が受験した頃もそうですが、昔ほど「選ばれし者」しか合格できない試験ではありません。合格率も決して低くない試験です。一番は、分からないことを誤魔化そうとしないことです。誤魔化そうとするとすぐにバレますし、論理破綻をするからです。なので、分からないところは分からないなりに自分の頭で考えたことを書けば良いですし、分かるところで勝負すれば試験官は評価してくれると信じています。弁護士になってからも分からないことを誤魔化すことは後々依頼者の利益にならないばかりか、自分の身にもその影響は降りかかってきます。一つ一つが弁護士になった後の自分を作っていくという意識を持つと芯ができるはずです。
司法試験を思い出すと、弁護士になってからもあの苦しい経験が生きているなとあらためて実感します。これから弁護士を目指して司法試験を受験する方も、司法試験に興味がある方も、司法試験にチャレンジするという経験はとても貴重なものだと断言できますので、あきらめずに努力を続けて欲しいと思います。