女医版シャーロック・ホームズ【オキテカクヒビ_010】
『オキテカクヒビ』は、オキテカクが触れたコンテンツについて、1,000文字程度で書き綴る記事シリーズである。毎日21時更新予定。
金曜日は小説の紹介。今回は、今年アニメの放送が始まったこちらの作品。
小説/知念 実希人『天久鷹央の推理カルテ 完全版』
本作の特徴を一言で形容するならば、『女医版シャーロック・ホームズ』であろう。主人公の天久鷹央(アメク・タカオ)は、とかく好奇心が旺盛で、自らが『謎』だと思った事柄を解決せずにはいられない性分だ。それが喩え河童の目撃情報であろうと奇怪な殺人事件であろうとお構いなしである。その振る舞い、知識を振りかざす(時に高圧的な)言動、興味のないことには極めて無関心な態度は、原典並びにそこから発展してきた様々なホームズ像と共通する(余談だが、筆者が好きなホームズは、BBCドラマ版である)。もちろん、そんなホームズの振る舞いにやれやれと言いながら付きそうワトソン役として、部下である小鳥遊優はいつも憂き目に遭っている。そんな二人のテンポの良い(小鳥遊にとっては理不尽とも言える)やりとりは、本作の醍醐味と言える。
正直言って謎に関してはやや微妙に感じることもあり、その点でオススメするのはどうかと思っていたが、2作目を読んでみると、その判断は早計だったことに気づく。
時系列的には2作目だが、発売順としては最新作の前作で、一作目から八年近く経過している。その経過で作者が円熟したのか、興味を惹く『吸血鬼』の導入にいつもの二人の掛け合い、そして二転三転する展開から導かれるラストまで、一本筋の通った良作となっていた。一作目時点ではキャラクターの掛け合いが読めればいいか、くらいの判断だったが、今では次作以降も読んでいきたいと思っている。
医療ミステリが読みたい方や、女医版シャーロックホームズに興味のある方、キャラクターの賑やかな掛け合いが好きな方は是非読んでいただきたい。
アニメはこちら。行きつけの書店で本作のPVが流れており、天久鷹央の声を佐倉綾音が当てているのが非常に合っていたので、放送を楽しみにしていた。実際本編を見ると高い満足感が得られたので、こちらから入るのも良いと思われる。
『オキテカクヒビ』は、オキテカクが触れたコンテンツについて、1,000文字程度で書き綴る記事シリーズである。毎日21時更新予定。