どんでん返しはやめておくれ
「この間、妻との結婚記念日だったんですよ」
結婚記念日の話を嬉しそうに語るなんて、良い人だなぁと素直に思いました。
その男性は50代後半の方で、接客業をなさっている人でした。
たまに、少年野球チームの監督のお嫁さんなんかが、「人の子どもの世話ばっかりして!ちょっとは自分の子ども、どっか連れてってやんなさいよ!」とぷんぷんしているという話を聞くことがある。
この男性はきっとお嫁さんに、「あんた客ばっかりに良いカッコして、私には全然じゃないの!」なんてことは言われていないだろうと思った。
お話を聞いていると、二人でちょっとお高いレストランに食事をしに行ったということだった。
うんうん、そういうのがちょっとした特別感を味わえると同時に、緊張しすぎずって感じで良いんだよなぁ。
私も想像して勝手にほっこりしていた。
「そこで妻に花束をプレゼントしたんですよ」
まぁ素敵、女性はお花をもらうと嬉しいですからねぇ。
と言おうとした時だった。
なんなら、お花を選んでくれている姿なんかを想像すると本当に嬉しいんですよね、と話を広げようとした時だった。
「かっちょいいでしょ?」
うそやん。
待て待て待て待て。うそやん。
いや、照れ隠しなんかもしれんけどや。
かっちょいいってなんやねん。
照れ隠しは「かっこいいでしょ?」でもできたやろ。
最後の最後に、その男性が少しだけかっちょ悪く見えてしまった瞬間でした。
今日の日常はちょいブラックでお送りしました。