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ポートランド視察レポート Day 1

こんにちは、株式会社オキノミライ 代表の古川です。

この夏、これからの隠岐の未来像を具体的に描いていく参考に、ローカルにおける経済開発や持続可能なまちづくりを実践している街として名高い、アメリカのポートランドを訪問してきました。

ここでは、そんな7泊9日に及ぶ濃密な旅での気付きと学びをできるだけ皆様にシェアしていきたいと思います。

ポートランドが持つ魅力や、その魅力を支える取組についての発見をお伝えできれば幸いです。

まず、今回の旅をアテンドしてくださった、山崎満広さんと有井安仁さんのお二人をご紹介します。

山崎さんは2012年から5年間ポートランド開発局(PDC)に在籍された後、独立され、現在は株式会社Green Citiesの代表として、日本で持続可能な地域経済開発に取り組まれています。
昨年12月から隠岐にも毎月お越しいただいており、そのご縁もあって、今回のツアーにお誘いいただきました。
山崎さんのポートランドへの知見はご著書にまとめられているところですが、今回はその繋がりの中でなかなか普通では知ることができないポートランドの姿を見せていただきました。

山崎満広(やまざき みつひろ)

茨城県水戸市育ち。1995年から延べ24年間アメリカに滞在。その間に米サザン ミシシッピ大学で地域経済開発学修士号を取得。米大手電力会社、建設会社、経済開発機関等で地域経済開発戦略、事業用地選定、経営戦略計画などの立案に携わる。
2017年に独立し、オレゴン州ポートランドでGREEN CITIESの前身となるMITSU YAMAZAKI LLCを設立。日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。2019年に帰国後は世界銀行シニア・アーバン・コンサルタント、つくば市まちづくりアドバイザー、横浜国立大学 客員教授等を兼任。
著書
『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』(https://amzn.asia/d/9MsNunM)
『ポートランド・メイカーズ クリエイティブコミュニティのつくり方』
(https://amzn.asia/d/fgZGK8h)

https://greencities.jp/Aboutより引用し、著書部分追記

もうお一方、有井さんは、和歌山県において、社会的投資をデザインする会社の役員を勤められながら、ポートランドへの訪問回数が20回を超えるポートランドのエキスパート。ポートランドのビールに魅了され、ご自身でも「ノムクラフト」というブルワリーを立ち上げておられます。
現地のご友人宅に我々も招いていただくなど、貴重な機会をいただきました。

有井安仁(ありい・やすひと)
1999年、22歳の時に高齢者や障害者への訪問理美容ハンズを起業。これを機にソーシャルビジネスの起業と支援に多く携わる。現在は、持続可能な地域づくりに欠かせない社会的投資の地域実装や、地域課題解決に取り組む企業の事業開発、ローカルベンチャー支援などに取り組んでいる。
2015年から和歌山県有田川町の地方創生政策アドバイザーとして、有田川町とポートランド市との連携構築を行い、住民主体のまちづくり「有田川という未来」を実施。これを機に廃園となった保育園をリノベーションしたコミュニティ施設の整備と、その施設内にクラフトビール醸造所NOMCRAFT Brewingを起ち上げる。株式会社PLUS SOCIIAL取締役、公財)わかやま地元力応援基金理事長、和歌山大学非常勤講師(地域創業論)などを担う。

さて、それでは、このようなポートランドを知り尽くしたお二人にご案内いただきながら、旅したポートランドツアーの様子をご紹介していきます。


PDX - ポートランド国際空港の魅力


ポートランドに着いた我々を最初に出迎えてくれたのは、ポートランド国際空港です。スリーレターコードである「PDX」を愛称として親しまれるこの空港は「アメリカのベスト・エアポート」として高い評価を受けており、その評判に違わぬ魅力を持っています。

空港に降り立ってまず、目を引くのは、空港内の店舗の大多数が地元の業者によって運営されている点です。太陽が差し込む開放的な建物内には、ポートランドらしさを感じるハンバーガーショップ、カフェ、ビアバー、そしてお土産店が並び、観光客が到着時に目を奪われるのはもちろん、出発時には早めに空港に来て楽しみたいという気持ちを引き起こします。

ターミナルのエリアに出店している店舗のロゴ。出店数の多さも魅力
地元の事業者が製造したものだけが並ぶ土産物屋
地元を代表するコーヒー屋さん

空港の設計にも工夫が見られ、主要な店舗の多くが全て保安検査を通過した後のエリアに配置されているのも特徴的です。
これは、おそらく搭乗者に早めに空港に到着し、保安検査を通過して空港内での滞在時間を楽しむことを促すためのものと考えられ、スムーズな搭乗と搭乗者の滞在時の満足度の向上を両立させる素敵なデザインであると感じました。
少し驚いたのは、預かり荷物受取所が保安区域外に設置され、空港訪問者なら誰もがアクセスできてしまうこと。勝手に取られてしまうのでは?という不安が拭えなかったのですが、それにより、街への移動を促しているのだとしたら、こちらも手法としてはなかなかに巧妙です。

空港内には所々にアート作品が展示されており、訪れる人の目を楽しませてくれます。

薔薇はポートランドを象徴する花
キッズスペースもおしゃれ!

また、「PDX PEOPLE」として顔写真とともに、空港職員を紹介するサイネージは、職員のモチベーションを高めると同時に、利用者に親しみやすさを与える工夫が施されています。
たったこれだけのことではありますが、人を大事にする文化や地域性があるのかなということを感じさせられました。

PDX CUSTOMER SERVICE CHAMPION。掲載されたら、嬉しいですよね

他にもPDXには、楽しい仕掛けがたくさんあります。
空港内のカーペットはポートランドのイメージカラーであるグリーンを基調とした鮮やかなデザインですが、靴とともに写真を撮影し、SNSに投稿することが定番になっており、PDXを表すアイコンになっています。
2015年にデザインが刷新され、張り替えられていますが、旧カーペットは根強い人気を誇っており、旧柄のカーペットが店舗内に設置されていたり、グッズ化されていたりと、ポートランドの人々の愛着が感じられます。

こうした写真がSNS上に溢れている、とのこと
街中の雑貨屋さんに敷かれていた旧カーペットの一部

ちなみに、来訪時のPDXは8月のリニューアルオープンに向け、絶賛改装中でした。空港内の至る所には、写真のような可愛い付箋が壁に貼ってあり、オープンへの期待を高めるとともに、工事中も利用者を楽しませてくれていました(付箋らしく見えるよう、紙が絶妙にカットされています)

旧カーペット模様の羽が描かれた蝶々

このように、ポートランド国際空港は単なる交通拠点としてだけではなく、地域の文化や魅力を発信する拠点としての大きな役割を果たしていました。また、利用者が空港で過ごす時間を楽しみ、域内消費を生み出すように設計されており、地域経済への貢献も大きいと感じました。

地元スーパーでの発見


1日目は空港から宿に到着し、ポートランド市内でお買い物。地元のスーパーを散策してみました。

スーパーでは、とにかくオーガニック食品の豊富さが目立ちました。野菜売り場の約半分がオーガニック商品で占められており、ポートランドのスーパーでは一般的とのこと。
日本でももちろんオーガニックの野菜はありますが、高級食材という感覚が
強く、一般的ではない印象です。これだけ普及している背景には、消費者意識や供給力の高さがあるのだと思いますが、どのようにそれらが維持されているのか、非常に気になりました。

アメリカでオーガニックを冠するには全米統一のUSDA(米国農務省)の認定を得る必要があるそうですが、この基準は非常に厳しく、例えば一つの基準として、認定を受けるには、3年以上化学農薬などの禁止物質を使用していない土地で収穫されたものでなければならないそうです。

日本では有機栽培を実施しようと思うと非常に手間がかかると聞いたことがありますが、ポートランドではどうなのか。ポートランドでは気候の関係からから、ほとんど蚊などの虫に遭遇することがなく、非常に少ないと聞きましたが、もしかしたら、そうした側面も影響があるのかもしれません。
引き続き、勉強してみたいと思っています。

色鮮やかで種類豊富なオーガニック野菜

野菜売り場には鮮度保持のためのスプリンクラーが設置されており、品質を保つとともに、見た目の良さを演出しています。
日本では保湿カーテンがありますが、あまり見栄えがいいとは言えません。このスプリンクラー方式はコスト面での課題はありそうですが、消費者の購買意欲を刺激しつつ、新鮮な商品を提供するための効果的な手段だと感じました。

一定時間毎に商品棚上部の白いノズルよりミストが散布されます

さらに、「ローカルファースト」と言われるポートランドの精神をビールや調味料、コーヒーなどの日常的に消費される嗜好品の売り場で体感することができました。

一つの商品(例えば、コーヒーやビール)の種類が非常に豊富で、かつその多くが地元業者によるものでした。

日本の食の豊かさは言わずもがなではありますが、一方で、ポートランドのスーパーを見た上で、地元のスーパーを客観的に振り返ってみますと、市場経済の中では当然のことかもしれませんが、多くの食品が2〜3社の大手企業によって供給されており、食品や調味料というよりは料理によって多彩さが出ているのではないか、ということを考えさせられました。

私の大好きなビールも大手4社がメインで販売しているビールが基本的にピルスナーという1種類だけのビールであることを考えると、画一的な側面も同時に持っているのかもしれません。

ポートランドの方々は、この食品と言えば、自分はこの会社のこれ、というこだわりがあると言いますが、そうしたこだわりが地域の産品を守っていることを考えると、近年、地場のお醤油屋さんや豆腐屋さんが少なくなっていく日本の地方の現状と対比し、一消費者として考えるものがありました。

「消費は投票」という言葉を聞いたことがありますが、「ローカルファースト」という意識がポートランドの人々に根付いていることが地域の事業者や経済を守っているということを肌で感じることができました。

向こう側まで全てビール売り場。ちなみにこれと同じ長さの棚が反対側にも広がっています

Day 1 の学び

ポートランド1日目。
この日は、移動日ということもあり、空港とスーパーだけでしたが、その中にも非常に多くの学びがあることが驚きでした。

空港の在り方や地域の産業を振興していく上での重要な視点は、隠岐においても参考にできる点があると感じました。

2日目からはいよいよ、本格的にツアーがスタートします。

次回の記事もお楽しみに。それでは、次回の記事でお会いしましょう。


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