TTバー導入記。(6)
誰を参考にするのか、どうすると心地よいのか、そういったことは個々人の感覚によって変わるので何が正しいとは言えないのだろうと思うが、愛用しているバーの形やバーの握り方は結構千差万別なところがある。
私はファビアン・カンチェラーラ直撃世代なので、まずはカンチェラーラを参考にするしかない。彼はストレートバーを愛用しており、絶対に地面と平行にセット、握り方は時によって違うが、人差し指は内側、中指・薬指・小指は外側へという例があり、これは特徴的なのかもしれない。意外と人差し指の処理について考えるところがあるのかもしれないと思わせる例は少ないのではないか?
話が逸れるが、弓道の弓を構えるほうの手は人差し指は握り込まない。力を入れる為に役に立つのは中指・薬指・小指なのであって、親指と人差し指はあくまでも器用さを司るにすぎないのかもしれない。何が言いたいのかというと、強い力を発揮したい時に使われるのは小指側の三指だということだ。
握り方が違ってくるのは誰だってそうだろうか。まだ研究が浅すぎてわからない。
クリス・ボードマンはJベンドを水平にセット、ベンド部をほぼ内回も外回もさせず素直に取り付けて、手首に無理のない至ってエルゴノミックな握り方をしているように見える。
ランス・アームストロングは、カンチェラーラが倣ったのはもしかするとこの人かもしれないと思うくらいフォームが似ている。キャリアにおいて一貫しているようではないものの、Sベンドを好んでいるようで、腕が地面と平行になるようであれば楽に握れた方が好ましいという立場のようだ。確か、トライアスロン時代に背中かどこかを痛めた後遺症で無理ができないといったことがあったように記憶しているが定かでない。しかしとにかく、楽だが速いというフィッティングを探った選手としての第一人者であったように思う。
リーヴァイ・ライプハイマーは、拝みはこの人の代名詞か。腕と顔が触れそうなくらい近い。ストレートを使っている例もあるようだが、SベンドかJベンド愛用で、スペーサーを挟んでハンドルのクランプ位置よりもかなり高め、そして特筆すべきなのは水平よりかなり上向きに付けている場合が多い。このセッティングで腕が地面と平行になる場合が多く興味深い。そして、両手の指を絡めているのかと思うような、拝みという他ない独特の握り方をしている。バーの間隔や内回外回を微調整して親指以外の指がべったり触れ合うようにセットしているとしか思えない。
こうして少し掘るだけでもほっくほくになれるのはオタクの特権であろう。
良いタイミングでストレートのバーが届いたのだが、家の片付けで1日が終わってしまった。
土鍋で米を炊き、おこげになりすぎた苦い飯を1合も食べて明日へ繋ぐ。少しずつ炊けてきて鍋の中から聞こえる音が徐々に変わりつつ、甘いような香ばしいような煎餅を思わせるいい匂いがしている内に蒸らしに移れれば良いようだが、少しでも焦げたら元も子もないということのようだ。これは、コーヒーの焙煎に似ている。ほんのり狐色の範囲内と焦げたのとでは全くの別物なのだ。それはセンスがどうのこうのという話ではなく、さながら視覚と嗅覚を使って行う如何にしてメイラード反応を好ましい範囲内におさめるかという科学実験なのである。
これでも体重が増えないのは福音か、それとも回復が不足する予兆か。
つづく?