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『ブレイクスルー』

誰かが言った。
超光速航法は可能である、と。
そしてそのための研究は進み、ウラシマ効果についても研究は進められていると聞く。
私たちも負けてはいられない!
研究の分野は違っても、夢の技術の研究は進められている。
私たちの研究は生活に直結する、そう……食よ!
今や食料問題は、現存する人類にとって最大のテーマだわ。
これまで人類は食料の確保と、持続的な食料生産をいかに加速させるかによって、人口を増やしてきた歴史がある。
産業革命以降、緩やかだった世界人口の増加は加速をはじめ、世界人口が23億人を超えた後に、農業革命が起こった。
これにより自給自足体制から、商品として農作物を生産し、必要な農作物は輸入するという、現在の農業生産体制は確立された。
そして世界人口は増え続け、2050年には……はい、そこのあなた!

世界人口は何人になると、予測されているかしら?

そう、正解。
2050年には97億人になると予測されているわ。
だからこそ!
今、新たな農業革命が必要なの!
農作物に特化した生産を行っている今ですら、食料問題は後を絶たない。
このままじゃダメなのよ!
このままじゃ、人類は食料を巡って争い、戦争が起きる。そんな事になったら輸入に頼っている国は、食料を輸入出来なくなり、食料の値段は高騰(こうとう)し、インフレが起こる。それだけじゃない。ひとたび戦争ともなれば、エネルギー問題も重なって、ハイパーインフレの可能性だってある。

話を変えましょうか。
あなた、食料システムにおける、環境影響が大きいと言われている現在で、問題となっているのは何?

そうね、温室効果ガスの排出量の1/3以上が、食料システムによるものだと言われている。
そして、食料生産と関連する土地利用が、環境影響が大きいとされているわね。
COP28では2030年までに、家畜由来のメタン排出量を25%削減することを決定し、ロードマップも公表されている。
窒素やリンの循環の悪化については、農地への肥料の増加などが原因とも言われている。

だからこそ、低環境負荷で高効率な食料生産への変革が今、求められているのよ。
研究に研究を重ね、新たな農業革命の礎(いしずえ)を築くの!

あら、つい熱くなっちゃってごめんね。
今日はクリスマスなんだもの、このくらいにしておきましょうか。
みんな何?クリスマスはご家族と?

えぇ!?彼氏とか彼女とかいるの!?

わ、私はほら。研究一筋だから。
そんな話はいいから、今日は帰った帰った。
今日は私がここ、閉めとくから。
はい、それじゃあ、またね。

ふぅ……。みんな帰った、か。
いつの間に彼氏とか彼女とか……。
いいなぁ……ってダメダメ。
私は研究一筋!
でも、クリスマスかぁ。
ちょっと外に出て……うわっ、さっむい!
当然って言えば当然か。
12月、もう冬なんだもんね。
当たり前にあるご飯、食べ物。
スーパーやコンビニ、ネットでも買える時代。
それなのに、農業生産体制は危機的状況にある。
夜空を見上げれば、こんなにも星が綺麗に輝いてるのにね。
この星たちの光は、遙か遠く。
数万光年も離れた場所で瞬(またた)いた刹那の光の連続。
それが今、地球に届いている。
私たちが今、この地球上で行っている研究が、遥か未来の光になり得たら……。

農作物を栽培することを学んだ人類はその地に定着し、食物を得ることで生き長らえてきた。
その時代にあって今にないもの。

潤沢な栄養を蓄えた大地。
バイオスミュティラントの開発と、栽培地域の限定化による、局地的大量生産の、地域的特性を活かした品種改良。
代替タンパクの、世界的市場規模の増大による、代替タンパクへの投資の、一極集中を避ける。

現代科学と、昔ながらの先人の知恵の融合と発展。

今だけ見てちゃダメ。過去から学び、未来を見て研究しなきゃ。
私は、気付いたよ。

私は私の出来る事をする。
ブレイクスルーは、私が起こす。

未来の誰かへ、届けるために。

終わり

6人目 男性へ


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