『本当に守りたいもの』

はい、それでは今日のクリスマス会はこれで終わりです。
みんなお疲れ様でした。
気を付けて帰ってね～。
みんなからもらったお手紙は後でちゃ～んと、先生が読むからね。
あ、こらこら。慌てないの。
もぅ、ホントに気を付けてよ～！

ふぅ……。
終わっちゃったな。
クリスマス、か。
流石に小学生の高学年ともなると、サンタクロースなんて信じてない子ばっかりだよね。
あ～ぁ。家にもサンタクロース、来ないかなぁ。

サンタさんに何をお願いしようか？
最新のサイクリングマシン、マッサージチェア、ゲーミングPCなんかもいいわね。悩むなぁ。
もちろん、お酒も……。ダメダメ！
これじゃあ引きこもりまっしぐらじゃない！？
ダメだわ、ダメ。何とかして外に出ないと！出会いがない！
いや、そうじゃなくて。
そう、手紙よ手紙！
子供たちからもらった手紙読まないと。
あぁ～！お返事も書かないとだ！
えぇ～っと……。

《手紙を読む》
先生のよんでくれたお話、楽しかった。サンタクロースってお笑い芸人みたいなんだね。

え？お笑い……芸人？
そんなお話だったっけ？

《手紙を読む》
サンタクロースがえんとつにとびこんで、にんじゃみたいだった！サンタクロース、すごいね！

サンタクロースが……忍者？
ん～、なんだろう。
次のお手紙……。

《手紙を読む》
サンタクロースはかぎがかかってる家にしのびこむんだね！つかまらない？だいじょうぶなのかな？

サンタクロースは夢のある話だからね！？ちょっとまって、みんなどんな感想のお手紙書いてるのよ！？

……懐かしいなぁ。
あれから10年か。
みんなどうしてるかなぁ。

ん？こんな時間に……だれだろ？

「はーい！ありがとうございます。」

手紙だ……。誰だろ？
あ！加藤君！これは佐藤さん！
まだある。
ちょっと待って！？
これって、10年前の！？
うわぁ、懐かしい……。
読んでみよ。

《手紙を読む》
先生、メリークリスマス。
俺の事、覚えてますか？
みんなで集まってた時に、先生がやってたクリスマス会の話になったり、先生が俺たちに一生懸命色んなこと話してくれたりしてたよなって話になったんですよ。それで、先生に手紙書こうぜって事になって、今こうして書いてます。
イタズラして教頭先生に怒られてた時、必死にかばってくれてたの、覚えてますよ。みんな、先生に感謝してます。先生がいたから、先生だったから、学校生活楽しかったって、そう言ってます。
本当に、ありがとうございました。
今俺、教育学部に通ってるんです。
先生みたいな、そんな先生になりたい。そう思ってます。

加藤君……。
先生やってて良かったな。
生徒のことを考えてると、一生懸命になっちゃうのよね。
学校に、大人は先生たちしかいない。
先生という大人が、子供たちの敵になってはいけない。子供たちを守る。そんな大人でなきゃ。
他に誰が守ってくれるのよ。
子供が大人を嫌いにならないように、子供たちが子供たちらしく、元気に日々を送ってくれたら、私たち先生はそれでいいの。

明日からまた、頑張ろ。
子供たちの未来は、私たち先生が守るからね。

終わり

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