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『人生で最も大切なもの』

ただいま~っと。
あ~もぅ、今日はクリスマスイブだってのに、何でこんな忙しいのよ。
みんなデートだったり、家族と過ごす~とか言ってさぁ。
み~んな私に押し付けてきて。
何なのよ全く。
私が独身だから!?
彼氏いない私のせいなの!?
どうせ私は1人ですよ~だ。
家に帰って来ても、だ~れも「おかえり。」なんて言ってくれないわよ。
はぁ……。
何でクリスマスなんてあるのかしら。
ホント、今日はヤケ酒だわ。

あれ?郵便……物?
ん~?……手紙……手紙?
珍しいわね。誰かしら?
あっ、これ……。
叔父さん?え!?
だって叔父さんはこの間、亡くなって、やっと落ち着いて来たばっかりで……。
何で今頃手紙なんて。
それにどうやって手紙なんて出したのよ。
えっと……。
叔父さん……。
もしかして、病室で書いたのかな。
でも、力強い字だわ。
ホントに亡くなったなんて、信じられない。

《手紙読む》
《○○》
《○○》は、小さな頃から人一倍負けん気が強くて、男勝りで、甘えるってことをしてこなかったね。

って、子供の頃の事とか、良く覚えてるなぁ。
ふふふ、周りが大人ばっかりだったからね。
早く大人になりたかったのよ。
それでも叔父さんは、私をいつも可愛がってくれてたよね。懐かしい。

《手紙読む》
私は一生懸命に働いて、一生懸命に生きて、何を成し得たかは分からない。でもね、とても大切な物を手に入れていたんだ。人生で最も大切なものって何だと思う?

え~、何だろう。
人生で最も大切なもの、か。
叔父さんは、何だったのかな?

《手紙読む》
人生で最も大切なものは、目には見えない、形のないものじゃないかなと思うよ。

ホント、叔父さんってば。
ロマンチストなんだから。
でも、そうだよね。
私はひとりだけど1人じゃない。
多くの人に助けられて生きてる。
目には見えないもの、か。
人と人との繋がり。
それは…【絆】なんてね。

私にも、見つかるかな?
見つかるかな、じゃないよね。
見つけなきゃだ。

叔父さんは58歳でこの世を去った。
でも、ちゃんと見つけていたんだね。
凄いなぁ。
私は子供の頃から甘え下手で、大人たちの顔色を伺いながら、早く大人になりたかっただけ。
年齢を重ねれば大人になれる、大人と同じように出来れば大人になれる。
そう、思ってた。
でも20歳(ハタチ)を超えて就職もして、ひとりで暮らしはじめて……。
やってることは、周りの大人たちの真似事ばっかり。

叔父さん、手紙ありがとう。
私、分かった気がする。
この手紙もさ、叔父さんとの絆…だよね。
忘れないように、思い出せるように、時々読み返すよ。
恥ずかしがってもダメだからね!
クリスマスプレゼント、ありがとう。

私の好きな人が、人生で大切なもののひとつに、なったらいいな。

終わり

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