『思い出の明かり、夢の灯(あか)り』想定10分
童話声劇(2~3人)
登場人物
男性(男性)
少女(女性)
父(男性)
母(女性)
祖母(性別問わず)
参考童話 マッチ売りの少女
※公開版の為、オリジナル版とは一部改変があります。オリジナル版では男性1名、女性1名にて上演致しました。
男性 《ナレーション》
『時は2022年。近代化が進みデジタル社会に移行しつつあるこの世の中において、日々の暮らしすらままならない。そんな少女が居たとしたら?これはそんな1人の少女と1人の男性の物語。』
少女
「はぁはぁ。さ、寒い。。。」
少女《ナレーション》
「深々(しんしん)と雪が降り積もっている。そんな冬の日に少女は1人、街にいた。」
男性
『ん?お、おい、君!大丈夫か?こんな寒い日にコートも着ていないなんて!おい、おい!』
少女
「、、、マ、マッチ。。。」
男性
『マッチ?マッチがどうした!?おい!おい!しっかりしろ!』
少女
「、、、マ、マッチ。。。」
男性
『マッチだな?ん、これは、絵本?いや、今はマッチだ。このマッチか?』
少女
「、、、マ、マッチ。。を。。」
男性
『分かった。このマッチでいいのか?このマッチに火を付ければいいんだな!待ってろ!』
《マッチに火が付く 若干空白》
母
「あなた、一体何買ったの?この請求書はなに?何の請求書なのよ、これは!」
父
『うるせぇな!お前には関係ないだろ!黙って払っとけよ!』
母
「こんな高額の請求を払うお金が、家(うち)のどこにあるの!?冬の間の暖房にだってお金かかるのよ?」
父
『寒けりゃ着ればいいだろ!ったく、そうだ。あいつだ。あいつが産まれてから、ろくな事がねぇんだ!ずっとそうだ!あいつ!』
母
「そうよ!あの子が産まれてからおかしくなったんだわ!きっとそう!」
父
『今すぐ連れてこい!どうせ今日も金にならねぇ絵でも描いてんだろ!今日はたっぷりとお仕置き、してやんなきゃなぁ。』
少女
「こんなのが毎日とかおかしいよ。毎日、殴られて殴られて、もう無理だわ。ここには居られない。逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げないと、逃げないと コ ロ サ レ ル 。」
《空白 3秒程度》
祖母
「おや、まぁ。こんな時間にどうしたんだい?そんなに慌てて。」
少女
「おばあちゃん、ごめん。私、私、悪い子だ。」
祖母
「そんなこと無いよ。こうして私を訪ねて来てくれたじゃないか。」
少女
「ごめん。家(うち)に帰れないんだ。家(いえ)のことは何でもする。だから!」
祖母
「何も言わなくていいよ。さぁ、おいで。このまま1人で死のうと思っていたけど、それも出来ないねぇ。」
少女 《祖母に抱きつき泣きじゃくる》
「おばあちゃん!わぁぁぁぁ!」
祖母
「気が済むまでお泣き。泣き止んだら、絵本を読んであげようかねぇ。」
少女
「おばあちゃん、ありがとう。」
祖母 《ナレーション》
「こうしてこの子は祖母である私と暮らし始める。何も聞かない、何も語らない 。死期が近いと気付いていた私は可能な限りの愛を、あの子に注いだつもり。でもね、もう逝かなきゃ。ごめんね。」
少女
「おばあちゃん、おはよう。ん?おばあちゃん?え、、、冷たい、、、おばあちゃん!?ねぇ!おばあちゃん!おばあちゃんも居なくなっちゃった。でも、あの家(いえ)には、、、帰らない。おばあちゃんがいつも読んでくれた絵本。。。あっ、そうだ。マッチが、マッチがあったはず。おばあちゃんのマッチ、、、。おばあちゃん。今、明かりをつけるからね。」
《マッチに火がつく 若干空白》
男性
『ん~、いい匂いだな。何を作ってるのかな?』
少女
「今日はね、ポトフとスクランブルエッグ。それとパン(🥖)かな。」
男性
『そうかそうか、それは楽しみだ。』
少女
「ふふふ、楽しみにしといてね。絶対に美味しいんだから。それより、先に着替えたりして来て。」
男性
『ああ、そうするとしようか。』
少女
「うん、その間にご飯の準備しておくからね。絶対に美味しいんだからって言っちゃったけど大丈夫よね?んー、うん。おっけぃ。んふふ、美味しい。テーブルにお皿並べてと、、、。あと、ランプに灯(あか)りを灯(とも)してっと。よし、準備出来た。」
男性
『お待たせ。お~、美味しそうだな。』
少女
「準備出来てるわよ。さ、食べましょ?」
男性
『うん、いただきます。』
少女
「いただきます。、、、どう?美味しい?」
男性
『ああ、美味しいよ。君も早く食べるといい。』
少女
「えへへ、美味しいって食べてるのを見てるのも、幸せなんだよ。」
男性
『今日はありがとうな。しばらく出張が続いて帰ってなかったし、こうやって手料理とか作ってもらっちゃってさ。』
少女
「いいのよ、気にしないで。私が無理言って押し掛けたんだもの。それとさ、、、あの。。。」
男性
『なんだ?言ってみな?』
少女
「わ、私と正式にお付き合いしてください!!!」
男性
『え?、、、アハハハハ。何を言い出すかと思ったら。アハハハハ。』
少女
「なによ!笑わなくたっていいじゃない!こっちは真剣なんだから。」
男性
『ごめんごめん。それじゃ改めて。俺と将来を見据えたお付き合いをしてください。』
少女
「やっっっったーーーーー!」
SE バン!(破裂音)ビュー(風の音)
男性
『なんだ?急に風が!?』
少女
「え?ランプの灯(あか)りが、真っ暗。。。」
《空白 3秒程度》
男性
『おい!しっかりしろ!おい!なんだったんだよ、今の。夢か?いや、確かに目の前に居るこの子だったはずだ。そんなまさか!?いや、でも、、、。冷たい!?おい!死ぬな!あれはなんだったんだよ!なぁ!君はそれで、君はそれで幸せだったって言えるのか?俺と出会い、俺の腕の中で冷たくなってそれで、それでいいのかよ!いいわけないだろ!何とか、何とか言ってくれよ!なぁ!うわぁぁぁぁぁ!!!』
少女 《ナレーション》
「2022年12月25日。私は静かに息をひきとった。マッチも絵本もあの夢ような記憶とともにどこかへと消えてしまっていた。しかし、あの思い出は男性の記憶の中にずっと残っている。私はその記憶の中でずっとずっと生き続ける。街に降る雪はただただ、静かに降り続けていた。」