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窓のそと

  ここにひとつ、窓がありました。
ずっとず~っと前から、ある窓です。
高い場所にあり、窓に触れることが出来なかった私は、その窓から見える様々なものとお話をしていました。

これは、そんな窓のこちらとあちらのお話です。

いつからでしょうか。
私は窓の外を見るようになりました。

春の少しだけ寒くて、ほんのり暖かい日。
窓の外には鳥がいました。

『ねぇ鳥さん。』

「なんだい?」

『窓の外は暖かい?』

「そうだねぇ。まだ少し寒いかもしれないよ。」

『寒いの?』

「あぁ、私は空を飛ぶからね。空はここよりも寒いところさ。」

『まぁ大変。暖かくなるまでここに居るといいわ。』

「そうさせてもらうとするよ。」

鳥さんとお話をしている間に、いつの間にか私は眠ってしまいました。

夏の暑い日、窓の外には太陽がありました。

『ねぇ、太陽さん。』

「なんだい?」

『窓の外は暑い?』

「そうだねぇ、暑いよ。」

『暑いの?』

「あぁ、ボクがこんなにも元気に輝いているからね。」

『まぁ大変。太陽さんが輝き疲れて空が赤く染まるまで、ここに居るといいわ。』

「そうさせてもらうとするよ。」

太陽さんとお話をしている間に、いつの間にか私は眠ってしまいました。

夏が終わり風の音も大きくなり始めた秋の日、窓の外には風に舞った落ち葉がありました。

『ねぇ、葉っぱさん。』

「ん~なにかな?」

『窓の外はどうなってるの?』

「そうだねぇ~、色々な葉っぱが赤く染まっているよ。」

『赤いの?』

「そうだね、私みたいに全部が赤くなってそれは綺麗だよ。」

『まぁ素敵。葉っぱさんのその赤い姿をもっと見ていたいわ。』

「私で良ければいくらでも見ておくれ。」

葉っぱさんとお話をしている間に、いつの間にか私は眠ってしまいました。

空気が次第に冷たくなって吐く息も白くなった冬の日、窓の外には雪がありました。

『ねぇ、雪さん。』

「なにかな?」

『あなたは真っ白なのね。』

「そうさ。雪だからね。」

『窓の外も白い?』

「あぁ、白いよ。辺り一面真っ白だ。」

『まぁ、素敵。』

「太陽の光があたるとキラキラしてそれは綺麗だよ。僕たちは溶けてなくなってしまうけどね。」

『それ悲しい事ね。雪さんが溶けないように見ているわ。』

「それは嬉しいね。私のこの白さをいつまでも見ていてよ。」

雪さんとお話をしている間に、いつの間にか私は眠ってしまいました。

私が夜にベッドに入って窓を見ると、そこにはいつも月がありました。


『ねぇ、お月様。』

「どうかしたのかい?」

『お月様はいつもお空に居るのね。』

「あぁ、私が空に居ないと眠れないだろう?」

『いつも居てくれるから安心して眠れるわ。』

「いつでも見守っているから、安心して眠るといい。」


『おやすみなさい。』


お月様におやすみなさいを言うと私は目を閉じました。そして、眠りにつくのです。




さて、このお話も
ここらで終わりにいたしましょうか。



ゆっくり、ゆっくり




おやすみなさい




おしまい



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