2人劇 想定5分『この身ひとつを糧にして』 作 沖ママ
登場人物
カイト : 男性
イリア : 女性
《①SE 学校》
《②SE スリッパで廊下を歩く》
カイト《おおげさに》
「俺はカイト。恋に部活に明け暮れる高校生活を謳歌(おうか)する為に、高校生になった!……ハズだった。」
《SE ①②終わり》
カイト《おおげさに》
「なのに何故!?何故俺はモテない!?顔良し、声良し、歌もイける!なのに何故!?」
イリア《盛大なため息》
「はぁぁぁ……。」
カイト
「な、なんだよ。ため息なんてついてさ。」
イリア
「あなたの、そういうところなんじゃないの?」
カイト
「そういうところ?顔良し、声良し、歌もイける!ってやつ?」
イリア
「ち・が・う!」
カイト
「じゃあ、なんなんだよ?」
イリア
「そうやって、俺イケてる~!ってのがダメなんじゃないの?」
カイト
「えぇ~!?そうなのかな?」
イリア
「それから、ひとつ言っておくけど、私と話してるあなたは、ブツブツ独り言を言ってるだけのヤバイ奴だからね。」
カイト
「マジか!?あぁぁぁぁぁ!!!」
《SE ③廊下走る》
イリア
「他の人から見たら、あなた。今、突然発狂したド変人よ?」
カイト
「それだけは!それだけはご勘弁を!」
イリア
「ほら、同じクラスの……あれ、誰だっけ?」
《SE ③終わり》
《SE 急停止》
カイト
「ん?あの子?サッちゃん。」
イリア
「変な目でこっち、見てるわよ?」
《SE パァ!っと明るくなる》
カイト
「え!?サッちゃんが俺の事見てる!?」
イリア
「やめときなさい。あなた、傷口を広げるだけよ。」
《SE イリアのセリフ中にグサッ!》
カイト
「そんなぁ~!」
イリア
「あの子はダメ。あなたを見る目が恐怖の対象物を見る目だもの。」
カイト
「じゃあさ、あの子は?ちーちゃん。」
イリア
「あの子はあなたの事、眼中にないじゃない。あなたいつも小間使いにされてるわよね。」
《SE キラーン!ひらめき》
カイト
「あっ、そうだ!ケイコ先生!」
イリア
「はぁ?あなた何言ってるの?」
カイト
「日本語……。」
イリア《前のセリフに被せる》
「そんなことは聞いてない!」
カイト
「あの子もダメ、この子もダメってダメばっかりじゃん。」
《しっかり間を開ける》
《BGM フェードイン オルゴール系》
イリア
「あなたね、自分がどういう存在か分かってるの?」
カイト《遠くを見ながら》
「分かってるさ。」
イリア
「ホントかしらね。」
カイト《そっけなく》
「さぁ、ど~だか。」
イリア
「ねぇ……私が、居なければいいのにって思ったこと無いの?」
カイト
「そんな事、考えた事も無い。」
イリア
「考えた事も無いって……。」
カイト
「だって俺たちは……。」
カイト・イリア《合わせる》《強調》
「一心同体だから。」
《間を開ける》
イリア
「……あっそ。」
カイト
「なんだよ、素っ気ないなぁ。1度くらい……変わってみるか?」
イリア《まくしたてる》
「あなたね、馬鹿なの!?変わったら戻れる保証はないのよ!?あなたの存在だってどうなっちゃうか分からない。そんなの、良い訳ないじゃない!」
カイト《大きく息を吐く》
「ふぅ~。……分かったよ。それじゃあさ、これからも頼むよ。相棒。」
イリア
「ふん!何よ。カイトの馬鹿!」
カイト
「お?久しぶりに名前で呼んでくれたな、イリア。」
イリア《諭(さと)すように》
「私は誰からも見えない。カイト。例えあなたであったとしても。私という存在を視認(しにん)する事は出来ないわ。」
カイト《言い聞かせるように》
「だから一緒にいろって。ずっと俺と一緒にいたらいい。」
イリア
「良くそんなセリフがすらすらと言えるわね。でも……。」
《少し間を開ける》
カイト《優しく》
「ん?なんだ?」
《間を開ける》
イリア《好きを隠しながら》
「ありがとう。」
終わり