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『未来のはじまり』

またダメだった。
これまで何度失敗したことか。
超光速航法、通称『ワープ』と称されるこの研究が成功したならば、再現することが出来るのなら、これ以上にすばらことは無い。

上手くいかない時は、原点に還ろうではないか。

いいかね?

そもそも超光速航法とは、アインシュタインにより提唱された相対性理論。
その中で光は万物の中で最速であり、何も超えることはできない。
とされている。

そもそも、光の速度とは、真空中における光の速度、光速と呼ばれているが、秒速約30万kmにもなる。これは1秒間に地球を7周半もできる速さなのだ。

そしてこの光というものは、俺たちがよく知る物質や粒子などとは異なり、とても変わった、そして寸分の狂いもないきわめて厳格な性質をもっており、それ故に人類の力では、光速を超えるどころか、光速に達する物質を生み出すこともできないのが現状なのである。

欧州原子核研究機構にある大型ハドロン衝突型加速器という装置では、陽子を光速の99.9999991%まで加速させ、それらをぶつけることでさまざまな研究を行っている。

またある研究では、ニュートリノ観測装置である「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」という観測装置が、超新星爆発からのニュートリノを史上初めて観測したことは周知の事実だろう。

しかし、忘れてはいけないのが、スティーヴン・ホーキングによって提唱された時間順序保護仮説だ。
我々研究者であれば誰もが知っている仮説。

たとえ相対性理論のうえでは矛盾しないタイムワープが仮定できるとしても、相対性理論と並んで現代物理学の根幹をなす「量子論」によって、因果律は保護されているのではないかという提唱。

そしてタイムパラドックス。

さぁ、どうする?

今日はクリスマスだ。
サンタクロースがソリに乗って子供たちにプレゼントを配ってまわる、そんな日だ。

サンタクロース諸君、この俺に新たな発想と、未だ見ぬ理論を証明するチャンスを与えたまえ。

ん?なんだね、君はサンタクロースを信じてはいないのか?

研究者であるこの俺が、そんなおとぎ話を信じていると思ってはいない、だと?

あははは、馬鹿なことを言うんじゃない。
いいか、研究者とは妄想と幻想をいかにして科学的根拠をもって裏付けるかなんだよ。
だからこそおとぎ話だって……。

いやいや、待て。
時間軸を超越した話は昔からあるではないか。そう、浦島太郎だよ。

そして「タイムリープ」。

これらの事象からタイムワープは可能なのでは無いか。

やはり、タキオンの存在証明と量子論の組み合わせしか無いのかもしれない。

こうしちゃいられない。
日本神話、昔話、おとぎ話、全て洗い直しだ!
これらの裏付けが出来たその時、我々の研究もまた新たな1歩を進むのだ。

よぉし、これからまた忙しくなるぞ。

今日のところは帰って家族に、恋人にそして、偉大な研究を重ねてきた先人達に感謝を捧げようではないか。

我々の未来の物語は、ここから始まるのだから。

終わり

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