『空を見上げてごらん』想定10分
童話声劇2人(男性、男性)
参考童話 星の王子さま
※公開版の為、オリジナル版とは一部改変があります。
僕
『僕は、1人がいい。誰も要らない。1人がいい。』
王子
「ねぇ、君は何故1人がいいんだい?」
僕
『ん?、、、。いつからそこに?』
王子
「んー。君が街行く人を、車の行列を、街の喧騒を眺めながら、ため息をついてグラスの中の飲み物を飲み始めたくらい、かな。」
僕
『なんだよ。ほぼほぼ、最初っからじゃねぇか。てか。ここ、12階のベランダだぞ?君はどういう理論でそこにいる?』
王子
「僕は星の王子、だからね。地球での理論とか常識なんてものは僕には通用しないのさ。」
僕
『そうなのか。で?僕に何の用だ?』
王子
「僕はね、人間の友達が欲しいんだ。」
僕
『あはは、それは無理な話だな。たった今、僕が言っていたことを聞いていただろう?僕はね、1人がいいんだ。』
王子
「あぁ、聞いていたさ。」
僕
『それなら話は早い。僕に構わないでくれ。僕は1人がいい。』
王子
「今日のところは出直すとしよう。明日、また来るよ。」
僕
『あいつ、何なんだよ。もう居ない。。。』
《空白 3秒程度》
王子
「やぁ、来たよ。」
僕
『ホントに来やがった。しかも同じ時間に。』
王子
「だから来るよって言ったろ?」
僕
『ホントに来るとは思って無かったよ。』
王子
「それは違うね。君は少なからず期待をしていたハズだよ。」
僕
『はっ、そんな訳あるかよ。』
王子
「それじゃあ君は何故、今日もこうして街行く人を、車の行列を、街の喧騒を眺めているんだい?」
僕
『日課だからな。』
王子
「君は世間に対して憧れを持っている。人と関わる事にあこがれを持っていると言っていい。だからこうして僕が現れたんだ。」
僕
『今日はここまでだ。グラスの中身が無くなった。また明日、来いよな。』
王子
「分かったよ。また明日来よう。」
僕
『もう居ねえよ。ホント、あいつ何なんだ?』
《空白 3秒程度》
僕
『お前、ホントに毎日来るのな。よく飽きないな。僕なんかと話して楽しいのか?』
王子
「全く飽きないね。楽しいか?の答えになっているか分からないけれど、僕が今回、この星に来てから一番充実している時間だと言ってもいい。」
僕
『では、僕から1つの忠告をしよう。友達を作るなら、まず友達になりたいやつの少し離れたところに座ることだ。でも、すぐに話しちゃダメなんだよ。言葉が誤解を招く原因になりえる。まずは習慣付けってやつが結構大事なんだよな。』
王子
「うんうん。でも僕たちの関係はその理論には当てはまらないよね。その点についてはどう考えてる?」
僕
『バーロー。さっきのは、フツーの人間の場合に限るんだよ。っと、グラスの中身が無くなったが、ちょっと待ってろ。今日はもう少し付き合ってやる。』
王子
「ふふふ、僕は嬉しいよ。君とこんなにも話せるなんてね。」
僕
『よ、お待たせ。君は、まぁ、、、こういうの要らないだろ?』
王子
「うん、必要はない。」
僕
『だろうな。君さ、体、無いんだろ?』
王子
「いきなり核心を突いてくるね。」
僕
『まぁ、な。一応確認した。』
王子
「何故そう思ったの?」
僕
『2022年7月2日現在、地上12階建てのマンションのベランダの内側と外側で話していても騒がれない。他者には見つからない。毎日同じ時間に同じ場所に現れる。そんな事が出来る技術は、日本には無い。いや、世界中探しても無いだろうな。』
王子
「君はなかなかに鋭いね。」
僕
『それに君は、だから僕の前に現れたんだ。と言った。それはつまり、、、。』
王子
「思念体。」
僕
『だろうな。話せよ。聞いてやる。』
王子
「僕はね、僕の星から旅に出たんだ。大好きな花を置き去りにして。旅をする途中で、花は儚い存在だと知った。」
僕
『花、、、ねぇ。』
王子
「それから僕は地球という星があることを知る。君が言っていた友達の作り方はね、キツネさんからも聞いたことがあるよ。だから僕はこうして同じ場所に、同じ時間に来る様に心がけている。」
僕
『キツネも人間と同じなんだな。』
王子
「そらから僕は、1人の人間と友達になった。でも彼は、、、」
僕
『住む世界があまりにも違いすぎた。』
王子
「そうだね。僕が蛇(へび)に遠くへ旅立ちたいって言って。。。僕は星になった。」
僕
『なのに、君は何故ここにいる?』
王子
「呼ばれたんだ。君の心に。君の想いに。」
僕
『なるほどね。もっと楽に生きたい。もっと自由に生きたいとは思っているが、んー、そうだな。。。』
王子
「辛かったんだね。」
僕
『どうだろうな?』
王子
「それは僕には分からないよ?君の事だろう?」
僕
『僕にも分からないさ。自分がどういう状況で、何を考えていて、何を求めているか。分かってる方が少ないんじゃないのか?』
王子
「そうかも知れないね。それでも僕は君と友達になりたいと思うよ。」
僕
『友達ねぇ。。。ま、いいんじゃないか。体の無い、思念体の友達ってのも悪くない。』
王子
「ホントに!?やったね。これで君は僕にとって世界で唯一の存在になる。大事なものは目には見えないから、大事なものはね、、、心で見るんだ。」
僕
『なるほどね。それで僕には君が見えている訳か。君は面白いやつだな。出会えて、知り合えて良かったよ。』
王子
「僕の言いたいことはもうないよ。さぁ、空を見上げてごらん。
そして、星に語り掛けてよ。そうすれば君の世界が一変することに気付くだろう。」
僕
『本当に大切なものものは目には見えない。ねぇ。。。ホント、何なんだよ、あいつ。』
王子 《ナレーション》
「こうして僕は君と友達になった。あれから度々、あの場所へ訪れては話をした。ただ、それだけの友達。」
僕 《ナレーション》
『僕と星の王子なんて言うあいつとの話はここまで。今度は居酒屋にでも誘ってみようか?なんて事を今は密かに考えている。』
王子
「友達ってさ。」
僕
『いいもんだな。』