
【誤解された「自己実現」】マズローが本当に伝えたかったこと
「自己実現」というキーワードは、いたるところで目にします。
note記事にも多くの投稿が見受けられます。
この「自己実現」に関して、特に日本でも有名で頻繁に使われている
アブラハム・マズローの欲求段階説があります。
でも、アブラハム・マズローは、欲求段階説を唱えていたわけでなく、
晩年、「自己実現」という用語が誤解されている。マズローが本当に伝えたかったことが誤解されてしまっているようです。
ウィキペディアによる「自己実現」
自己実現についてウィキペディアで調べてみました。
自己実現(じこじつげん)は、英語の self-actualization、self-realization もしくはドイツ語の selbstbetätigung の日本語訳
自己実現という日本語は、アメリカ心理学、イギリス哲学(英語版)、ドイツ哲学の別々の用語が大元にある。日本では別々の概念であるこの3つが翻訳後に絡み合いながら、元は翻訳語であったことは忘れられ、出典を意識せずに使われていることが多い
マズローの欲求段階説における位置づけ
アメリカの心理学者アブラハム・マズローは自身の「欲求段階説(欲求の階層構造)」において、「自己実現の欲求」を5階層の最上位に位置づけた。これが「自己実現理論」である。この理論は教育学や経営学にも多大な影響を与えた。
マズローの自己実現の用語を経営学に応用した代表的な人物に、ダグラス・マグレガー、クリス・アージリス、フレデリック・ハーズバーグがいる。
「自己実現」と言えば、人間性心理学を代表するアブラハム・マズロー
の五段階の欲求階層が有名です。
経営学の中で、モチベーション論、リーダーシップ論、マーケティング論に研究され、応用されたことでマズローの自己実現がより有名になったとも想定されます。
元は翻訳語であったことは忘れられ出典を意識せずに使われていることが多い
マズローの「自己実現理論」は、教育学や経営学にも多大な影響を与えた
経営学の中でマーケティング論など様々な分野でマズローの「自己実現理論」が応用された
これらの要素が示唆していることを指摘している記事がありました。
マズローの「自己実現」理論が様々に誤解されている
自己実現という用語についての誤解
欲求階層の頂点に自己実現欲求があると思っているかもしれないが、マズローは晩年の大病で新たな洞察を得て、自己実現という用語が文章表現上で上手く受け止められておらず、欠点があるとしています。
長くなりますが、とても重要な内容なので引用します。
しかしこの用語(自己実現)は文章表現上不体裁であるばかりか、次のような予想だにしない欠点をもつことが確かめられた。
(a)愛他的というより利己的な意味が強いこと。
(b)人生の課題に対する義務や献身の面が希薄なこと。
(c)他人や社会との結びつきをかえりみないばかりか、個人の充実が「よい社会」に基づいている点を看過していること。
(d)非人間的な現実のもつ強要的性格や本質的魅力、興味を無視していること。
(e)無我と自己超越の面がなおざりにされていること。
(f)それとなく能動性を強調し、受動性、受容性についておろそかにされていること。
わたくしが注意深く努力して、自己実現をする人が愛他的で、献身的で、自己超越的、社会的であるなどと経験的事実を述べても、これはそう受け取られないのである。
ピラミッド欲求階層図の誤解
自己実現がトップになっている、あの有名なピラミッド型の欲求階層図も彼は提案していないというようです。
マズローの自己実現理論の根幹である、欠乏欲求と成長欲求について調べてみます。
欠乏欲求と成長欲求
マズローは、欲求には欠乏欲求と成長欲求があるとしています。
🔲欠乏欲求は、欠乏しているときに顕在化し満たされると低減・消失する欲求で4つの欲求があります。
生理的欲求(Physiological needs:空気,水,食物,庇護,睡眠,性等)
安全・安心(Safety and Security:安全・安心、危険・脅威からの自由,健康等)
愛と集団所属(Love and Belongingness:個人や集団とのつながり・親和性,役割取得等)
自尊心/他者からの尊敬(Self Esteem/Esteem by Others:自己尊重と他者からの尊敬・信頼)
🔲成長欲求は、欠乏感を埋めるものではなく、自分の内側から溢れ出てくる豊かさから生じる欲求。
自己実現の欲求
欲求は段階的に進むわけではない
欲求は、下位段階の欲求が100パーセント満たされればすぐ上の欲求段階に
段階的に進むわけではない。
生理的欲求~自尊心/他者からの尊敬が完全に充足された場合のみ上層欲求に移るというような順序関係はない
すべての基本的欲求にある程度満足しているが同時にある程度満たされていない
欲求の優勢さのヒエラルキー(階層)を昇るにつれ満足の度合いは減少する
それぞれの欲求は突然一足飛びではなく、無から徐々に表れる
いずれかの欲求が欠乏すると、その欲求が満たされるように動機づけられ、行動がなされ、生活が秩序づけられていく。
欠乏欲求と成長欲求は質的に異なる
彼の自己実現理論で最重要なメッセージは、欠乏欲求と成長欲求は質的に異なるということ。
🔲欠乏欲求は
欠乏欲求とは、満たされない欠乏感を埋めようとする欲求
欠乏低減(欠乏充足)指向
病的(不健康)・破壊的であり
その欠乏・飢餓状態から自己を守るための防衛的対処
🔲成長欲求は
成長欲求は欠乏感を埋めるものではない
自分の内側から溢れ出てくる豊かさから生じる欲求
成長欲求は“成長指向”
健康的、成長的である
欠乏欲求が満たされないと不健康な状態に陥る。そして、その欠乏感を埋めようとして、その欲求を満たすように、自己防衛するように動機づけられ行動することで、生活を秩序づけられるが時として破壊的になる。
例えば、安全・安心の欲求では、幼少児が、安全基地(secure base)の存在が感じられなければ、その児は安心の対象を執拗に探し求めるか、他者からそのような安全・安心が得られないことに絶望し、自己愛的に自己に閉じこもるようになるかもしれない
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