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神アサギって結局何なの

伊是名島内を散策していると家々の中に突然出てくる低い屋根のアレ。お祈りする場所というのは伊是名島のみなさま周知かと思いますが、結局あれは何なのか。気になったので調べてみました。

勝手に入っていいの?てか低すぎない?

結論:アサギは客間

沖縄に身分制度があった時代のお話。
身分が高い家は敷地内に別棟が2つ以上あったそうです。並びとしては正面のヒンプン(目隠し)から入り

→右からメーヌヤー(客間)
→真ん中はウフヤー(母屋)
→左側は家畜小屋(兼トイレ)もしくは食料小屋

という並びが主流。

母屋は主に居住スペースなので、客人が来たら別棟のメーヌヤー(客間)に通して対応していたのだとか。どうでもいいけど母屋にある台所からメーヌヤーまでが遠過ぎて、雨の日なんかは面倒そう。

この敷地の作りはほかにも残っていて、海洋博記念公園内にある郷土村や沖縄こどもの国にあるふるさと園、北中城村にある中村家の敷地もそんな感じです。
ちなみにヒンプンは男性が右側から入ってメーヌヤー(客間)に行き、女性は左から入って台所に行くという流れという、多様性のこの時代にはそぐわないシステム。

銘苅家はヒンプンの右側(客間側)に門がついてます。

そのメーヌヤー(前の家=客間)が別名アサギ、アシャギ、アサイなどと呼ばれていたそうなんです。


おわかりいただけただろうか。

アサギ=客間、神アサギ=神の客間ってことです。

確かにどの神アサギも敷地から入って右にあるという驚きの発見!!謎は全て解けた。

沖縄の信仰では場所を聖地(御嶽)として崇める風習が多いのですが、いっそ敷地内に作ってしまえと。ちょっとした横着さも感じます。
そこにノロと呼ばれる人たちが祭祀を行い、神と交信するパワースポット神アサギ(または神アシアゲ)が誕生。

ちなみに神アサギは北部が主で、中・南部辺りは似たような形態の「殿(トゥン)」というものがあり、そちらは屋根の高さが普通のものが多いです。トゥンは地域の人が話し合いをするために集まったりと、今で言う公民館のような役割も果たしていたとか。

国のトップノロたちが聖地巡礼をするスタート地、園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)


神アサギはなぜ屋根が低いのか

「祭祀を見られないようにするため」「頭を下げて入るのでお辞儀のようになる」「穀物を置いたりするので馬などが入れないようにするため」「巡礼するノロの休憩所」など諸説あるそう。

ノロが神酒を捧げたり神歌を歌ったりする場所ということで、個人的な推理としては「飲んで歌って騒ぐのをあまり見られないようにする」説を唱えたいと思うのですがどうでしょうか。神職だけど公で騒ぐ場所が欲しかった。とか。

ちなみにノロって?

ノロという職業をご存知でしょうか。ユタとよく比べられるノロ。簡単に違いを説明すると

【ノロ】祭司(さいし)・神官(しんかん)
・琉球王府から任命される女性のみの役職または組織。
・基本的には世襲制。
・神と人間を仲介してお告げをもらう・伝える人。
・神社の宮司(ぐうじ)さんや、お寺のお坊さんに近い。

【ユタ】シャーマン・霊媒師
・霊が見える・祓える人。
・修行をしてなる場合もある。
・不可解な現象のお助け役。

いるのいないの

ネットなどの情報では、神アサギには土地神が祀られているそうです。が、伊是名にはトートク(中国発祥)と言う土地神が居ます。
アサギは客間なので、何かを祀ると言うより、交信する場所というのがやっぱり正しいんじゃないかなぁと思います。

ノロはいないけどみんなで祈ろう

家の琉球王国が無くなると同時にノロ制度も廃止になり、神アサギだけが残りました。それから少しずつ変化して神アサギは皆で手をあわせる場所になり、これからも少しずつ変わっていくことでしょう。

ノロはいないけど神様と交信できる場所なので、もしかしたら声が聞こえてくる…かも。

補修の様子。ツルッといきそうでこわい。

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