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沖縄のマジムンたちの物語

球妖外伝(ブナガヤの冒険)第一章①

これは沖縄に住むマジムンたちの物語です。

マジムンとは沖縄の方言で、魔物とか妖怪とか幽霊だとか、そういったなんだかよくわからないものに対して、人間がつけた言葉です。

マジムンと呼ばれている当人たちにとっては、人間が勝手につけた名前というくらいの認識かもしれませんね。

マジムンは人間に悪いことやいたずらをしました。たとえば夜道でいきなり驚かせたり、病気にしてしまったり、マブヤー(魂)をうばってしまったりなど。

人間のことが嫌いで、こっそり隠れて生きているものもいました。近くを訪れた人間に災いを与えることもありました。

でも中には、人間と仲良くなりたいなと思っているめずらしいマジムンもいました。たとえばキジムナ・ムムトゥなどです。

キジムナ・ムムトゥは、ガジュマルの木の精ですが、人間に興味をもっていました。

人間が暮らす村をこっそりのぞいてみたり、ときどき話しかけたり、いっしょに海に釣りに行ったりすることもあるようです。

でも、人間に怒られたり、追い出されたり、冷たくされたり、うまくいかないことが多いようですけどね。

人間とマジムンが仲良くするには、どうすればいいのでしょうか? それはお互いがお互いのことをもっとよく知るといいのかもしれません。

さて、マジムンのことをもっと知るために、お話をすすめます。

むかしむかし、沖縄が琉球と呼ばれていて王様がいたころの話です。沖縄本島の北の方に、ヤンバルという大きな大きな森がありました。

夜のヤンバルの森には不思議な気配がただよっていました。

ヤンバルの森は自然豊かな森で、多種多様な生き物たちが暮らしていました。

コ・コ・コ・コ
ピィピィピィ
チチチチチ・・・

いろいろな生き物たちが静かに歌っている中に、耳をすましてみると、何かをひきずるような音が混じっていました。

ずず・・・
ずず・・・
ずずず・・・

暗い森の中を目を凝らしてよく見てみると、何者かが倒れたイタジイの木を引きずっていました。

ずず・・・
ずず・・・
ずずず・・・

木のそばには小川が流れています。

どうやら何者かは、小川をせき止めていた折れたイタジイの木を、水からひっぱりあげて運んでいるようでした。

イタジイの木はこの前の台風のせいで、真ん中からぽっきりと折れてしまったものです。

あまり大きな音を出さないように、何者かは慎重にゆっくり木をひきずっていました。

星明かりに照らされて、その者はふと足を止めました。

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