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【比地大滝】災害前に、偶然写真に収めることができた神秘の森

2024年11月8日から10日にかけて、沖縄県本島北部を豪雨が襲い各地に土砂災害や浸水被害をもたらした。

2024年12月現在も復旧作業が続けられている。

災害がおこる前の月に、わたしはたまたま国頭村にある比地大滝を訪れていた。

ここでも川が氾濫し土砂崩れが起こったため、現在、滝までの道は閉鎖されている。

豪雨の前に訪れていたわたしは、たまたま神秘の森の写真をおさめることができていた。

被害を受けた地域の一刻も早い復旧を願って、記事に書くことにする。


比地大滝とは?


2024年10月、豪雨で比地川が氾濫する前の月のことだった。

わたしはふと思い立って、比地大滝へ行くことにした。

比地大滝とは、沖縄県北部の国頭村にある滝のことだ。高さ25.7mから流れ落ちる。

滝までの道のりは遊歩道で整備されており、川の周囲にはキャンプ場も整備されている。多くの人が訪れる人気のスポットである。

しかし遊歩道が整備されているとはいえ、比地大滝までは片道約40分以上かかる。階段の上り下りも多く、決して楽な道のりではない。

だからわたしは、もう何年も比地大滝を訪れていなかった。

久しぶりに比地大滝を訪れることにしたのは、創作のインスピレーションを得たいと思ったからだ。

現在わたしは、比地大滝があるヤンバルの森を舞台に創作の小説を書いている。

比地大滝まで続く道を歩いて、ヤンバルの森の自然を感じることで、何か良いアイデアが浮かぶのではないかと考えた。

前の日にわたしは沖縄北部のホテルに宿泊し、当日は朝から比地大滝キャンプ場を訪れることにした。

比地大滝の森林セラピー


比地大滝までのトレッキングコースの入り口にあるのが、比地大滝キャンプ場の管理棟だ。

ここで入場料を支払い、滝までのコースを歩く。

その日は朝9時に来た。朝早かったおかげか、まだ人はまばらだったので、のんびりと散策することができた。

ひと気がないせいか、鳥や虫などの森の生き物たちは遠慮なく大合唱をかなでていた。わたしは写真や動画を撮りながらゆっくり歩いた。

キャンプ場の入り口にはこのような拝所があった。

これは御嶽(うたき)と呼ばれるもので、沖縄で神さまをまつるための聖域である。

こういった御嶽は沖縄各地で見ることができる。街中の道の端とか、ちょっとした林とか岩陰などいたるところに御嶽がある。

御嶽は聖域なので、むやみやたら立ち入らないことをおすすめする。

比地大滝のトレッキングでは森林セラピーもおこなわれる。

森林セラピーとは、森林の癒し効果を健康にいかすものだ。

森林の中で五感を働かせることにより、自分の身体の不調に気がついたり、リラックス効果が得られたりするとのこと。

わたしたちが都会でさらされているストレスを取り除くことができるそうだ。

わたしはふだん沖縄の南部地区に住んでいるが、たまに無性に北部地区に行きたくなることがある。

北部は南部に比べて自然が豊かであり、広大なヤンバルの森が広がっている。

わたしが時々、北部に惹かれるのは、森の癒しとか自然のエネルギーを得たいと思っているからかもしれない。

トレッキングコース


トレッキングコースは、始めは平坦な道のりであり、ゆとりをもって歩くことができた。

わたしはキョロキョロしながら、木を観察したり、鳥の鳴き声を録音したりしていた。

ヤンバルの森は希少な生き物の宝庫でもあるため、足元にいる小さな命にも気をつけなければならない。

危うく、小さなクワガタ?を踏んでしまうところだった。

わたしはヒカゲヘゴが好きなので、森中に生えているヒカゲヘゴらしき植物を見つけては喜んでいた。

ヒカゲヘゴは恐竜のようなごつごつとした幹が魅力の木だ。

わたしが住む沖縄の南部には自生していない。

昔、家でヒカゲヘゴの鉢を育ててみようとしたが、あっという間に枯らしてしまった。

育てるには、湿度と光のバランス管理が必要なようだ。

森の斜面をぼんやり眺めていたところ、ヒカゲヘゴの葉っぱが赤く光ったように見えた。

どうやら枯れて茶色くなったヒカゲヘゴの葉に陽の光が差すと、透けて赤く見えるようだ。

新たな発見ができて嬉しかった。こうした思いがけぬものを見つけるのは楽しい。

橋から先はきつい道のり


ところが余裕があったのはここまでだった。
橋を境に滝までの道のりは急につらいものとなった。

ここから先の道は傾斜が激しくなり、何度も階段を上り下りする必要がある。

膝や腰が悪い人は無理をせずに、橋の手前で引き返したほうが無難なのかもしれない。

階段を登ったり下ったりするにつれて、わたしの心拍数はだんだん早くなっていた。

ふうふう息を切らしながら歩いた。汗をびっしょりかいていた。

10月の沖縄は、まだまだ夏日が続いていて気温が高かった。

隣を流れる涼しげな川の音がなければ、わたしは暑さで参ってしまっていたことだろう。

比地大滝にたどり着くのはいつだろうか?

次第に流れが速くなっていく川を見つながら、わたしは歩き続けた。

途中でシャワーのように細かくふりそそぐ、小さな滝を見つけた。

流れ出る汗をシャワーで流したいと思いながら、涼しげな滝を見つめた。

目の前に長い階段が現われるたびにため息が出たが、同時に神秘的な森を感じることもできた。

川の上流に向かうにつれて、期待感はどんどん膨らんでいった。

この先に何か巨大な気配があるのを感じていた。

ついにたどり着いた感動の比地大滝


視界が開けて、ついに比地大滝にたどりついた。

迫力のある滝の音。疲れが一気に吹き飛んだ。

滝の轟音で周囲は震えていた。

滝の飛沫が細かい霧状になって舞っていて、涼しく感じた。

ちょうど周りに人がいなかったので、ベンチに座って一人、滝をながめながら満喫した。

比地大滝の迫力は写真では伝えにくいので、Youtubeに投稿した動画のリンクを貼っておく。

比地大滝

帰りは膝が震えていた


人がやって来たので、特等席をゆずって、もと来た道を戻ることにした。

ベンチに座ってしばらく休んだものの、膝はガクガク震えていた。とくに階段の下りが辛かった。

杖というものは、こういうときに使うと便利なのだろうか? と考えながら手すりにしがみつきながら階段をおりた。

滝へ向かう人とすれ違うときにあいさつを交わした。

狭い幅の階段は一人しか通れないので、どちらが通り終わるまでじっと待っていた。

わたしは足がガクガクになっていたので、階段を降りるのに少々時間がかかり申し訳なく思った。

白髪交じりのお年寄りを見かけたが、滝まで無事たどり着けるのだろうかと勝手に心配していた。

カフェで飲んだ○○水で回復


ようやくキャンプ場入り口までたどり着いたときには、ちょうどお昼前になっていた。

お腹が空いていたのと、涼しい部屋で休みたかったので、管理棟のそばにあるカフェにはいった。

丸太組のおしゃれ店は「比地カフェ」という名前だった。

わたしの後に店に入った男の人は、店員と顔見知りのようで和やかに話していた。

カフェは地元の人のために弁当を作っているようだった。

セルフサービスの水は、レモン水ならぬシークヮーサー入りの水だった。

ちょうどシークヮーサーの季節だったから豊富にあったのだろう。沖縄本島北部はシークヮーサーの産地でもある。

シークヮーサー水を飲むと、ほどよい酸味が身体の中に染みわたった。ビタミンCやクエン酸のおかげか体力が回復するのを感じた。

シークヮーサーにはノビレチンというフラボノイドも含まれており、抗酸化作用や抗炎症作用などもあるとのこと。

トレッキングで疲れた身体にはもってこいだった。

カフェの主な料理はカレーと沖縄そばだった。

カレーは少々ピリ辛だったが、ホロホロに煮込まれた骨付きの鶏肉が入っていて美味しかった。

店内で休みながら、窓から見える森の緑に癒された。

11月の豪雨以降、この店は閉店している(12月現在)。

比地大滝の下流の比地川が氾濫したため、比地集落は広範囲で浸水被害を受けた。

わたしが歩いた滝までのトレッキングコースも土砂崩れが起きたそうで、キャンプ場は現在閉鎖されている。

早く復旧することを願っているが、以前と同じ森の景色や癒しのカフェにまた出会えるだろうか?心配でもある。

災害支援の寄付を募っているそうなので、関心がある方は支援の検討をお願いします。

帰宅のドライブで青い海を見ながら涙


比地カフェをあとにして、沖縄本島の北部から南部に向けて車を運転した。

右手には青い海が広がっており、風を感じながらドライブするのは爽快だった。

CDから流れてきた曲を聞いたとき、涙があふれて止まらなくなった。

死んだ旦那が好きな曲だった。

旦那は「子どもが大きくなったら比地大滝に行こうね」と言っていた。

でも旦那は、比地大滝を訪れる前に亡くなってしまった。

目の前にあるチャンスは、いつまでもそこにあるとは限らない。

もしもわたしが今回、比地大滝に行くのを延期していたら、次はいつ森の自然に会えるか分からなかった。

災害を受けてもう二度と、以前のような風景には出会えないのかもしれない。

だから思い立ったら、すぐに行動に移した方がいい。

やらなかった後悔ほど悔しいものはないのだから。

#旅のフォトアルバム
#比地大滝
#沖縄北部豪雨

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水蝸牛
人と人との温かい交流を信じて、世界が平和になるように活動を続けていきたいと思います。

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