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沖縄公庫の存続求める 経済界明記なしに波紋
令和 3 年 8 月 28 日 沖縄タイムス経済面掲載
幅広い融資 県全体の 15 %
政府が示した今後の沖縄振興策に関する基本的な方向性に沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫)の存続が明記されなかったことに、県内で波紋が広がっている。沖縄公庫は税制や財政面での特別措置と共に、沖縄振興を推進する両輪の役割を果たしてきた。産業基盤整備への大型融資や中小企業への貸し付け、ひとり親家庭の支援など幅広い融資を備える。2019年度末の融資残高は8641億1200万円と、県内の融資残高全体の15%を占める。県内経済界からは「公庫の存続が必要だ」との声が相次ぐ。(政経部・川野百合子)
沖縄公庫は1972年の日本復帰に伴い設立された。本土の日本政策金融公庫(日本公庫)や住宅金融支援機構、福祉医療機構の3機関が担う業務に加えて、沖縄の実情を踏まえた独自制度も34ある(2021年7月時点)。20年度までの累計の出融資実績は6兆9516億円に上る。累計13兆2313億円となる政府の沖縄関係予算と共に沖縄振興を後押ししてきた。
復帰からの50年で、沖縄公庫の役割は終えたのか。
20年度の出融資実績約3010億3100万円のうち、日本公庫などと同じ制度でのコロナ関連融資が全体の87.1%を占めたが、コロナ前の19年度は、独自制度の活用が6割に上るなど、沖縄公庫ならではの役割が大きな比重を占めていた。インフラ整備が進み、大型案件が多い産業開発資金の融資割合は年々低下傾向にあるが、建設業界の幹部は「今後も復帰50年で経年劣化による大型工事や防災のための整備が必要。公庫の果たす役割は大きい」と話す。
近年では、新たな事業創出を推進するため、ベンチャー企業などへの出資も増加。独自制度の「新事業創出促進出資」の02年からの累計実績は75件、31億1700万円。創業者を支援する独自の貸付制度の利用も、過去10年で712億円を超える。
中小企業支援を手掛けるよろず支援拠点の上地哲チーフコーディネーターは「創業からサポートしてもらえる公庫は中小企業にとっても必要だ」と指摘する。
政府が沖縄公庫の存続について明記しなかった一方、与党・自民党の沖縄振興調査会でも「公庫について存続をお願いしたい」という声が上がったという。
県商工会連合会の米須義明会長は、無担保・無保証で貸す「小規模事業者経営改善資金(マル経資金)」制度などを挙げ「金融機関のない離島の事業者にとって、商工会を通して支援してもらえる重要な存在」と説明。「離島振興の面でも、コロナ禍の回復支援の意味でも、必要だと訴えていきたい」と話した。
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