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旅館での朝
2日目の朝、早めに目が覚めた私は寝ている3人を起こさぬよう一人忍び足で静かに部屋を出て、静まり返った旅館の2階にある露天風呂へむかった。
最近サウナに興味があり、サウナーに憧れているのだがお世話になった旅館にはサウナはなかった。
しかし翌日からの仕事に備え、可能な限り”ととのい”たく、入浴と水浴び、そして外気浴を繰り返していた。
外ではパラパラと大粒雨が降っている。
目の前に広がる山々には、濃い霧がかかっておりまるで曇り空が落ちて来たようだ。
普段なら天候が悪いとテンションもいまいち上がらないのだが、この非日常下においては全てが新鮮で、私の目にはとても幻想的に映った。
そんなこんなで一通り入浴を終え、体も火照ったところで部屋に戻ろうとした途中、旅館の外にある喫煙所に目が止まった。
喫煙所には木の長椅子が用意されており、こんなに外気浴に適した場所が用意されていたのかと、椅子に腰掛けた。
外は肌寒かったが、火照った体にはちょうどよかった。
車は一台も通らず、もちろん周りには人っ子一人いない。
大粒の雨の音だけが、私の体に響いていた。
しばし自然の音に包まれたのち、部屋に戻ると再び睡魔に襲われ私は眠りについた。
普段東京で生活していると絶対に出会うことのできない時間を過ごすことができた。
暮らす場所によって、出会える瞬間や出会える人々、また形成される価値観や感情は様々であり、それらに優劣をつけられるものではないと思うが、私にとってあの時間は間違いなく素晴らしいものであり、またぜひ訪れ感じたいと思える瞬間だった。
つぎの旅の予定はまだないが、寒いうちにまた温泉にでも行きたい。
きっとまた素晴らしい体験になるだろう。