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「第1回起業支援に関する課題を俯瞰するワークショップ」を開催
こんにちは。「沖縄みらい地図アクション」コンソーシアムの一員である一般社団法人デザインイノベーションおきなわ(DIO)です。
1月10日、那覇市のSAKURA innobase Okinawaで、「第1回起業支援に関する課題を俯瞰するワークショップ」を開催しました。
「沖縄みらい地図アクション」では「こどもの貧困」と「起業(スタートアップ、スモールビジネス)」に関する課題について、インタビューやイベントを通じて沖縄の社会課題の実態とその構造を俯瞰的に分析し、その構造の全体像を“見える化”=地図化し、根本的な課題解決に向けた協働を促進する取組を進めています。
本記事では、「起業支援」に関する課題についてインタビュー対象者が集まり議論したワークショップの様子や共有された視点、アイデアを紹介します。
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当日は、行政機関、支援機関・団体の職員、金融機関、民間企業、メディアなど、さまざまな分野から19人が参加。2023年11月26日に開催したこどもの貧困に関するイベントに引き続き、平井雅氏のファシリテーションのもと、ケイスリー株式会社のメンバーが進行役や記録係を担当しました。
スタートアップ&スモールビジネスの支援には共通の課題が山積
冒頭、ケイスリー株式会社の幸地正樹さん、國吉美紗さんから、沖縄みらい地図アクションの説明と取組に至った経緯、そして、今回ドラフトとして発表した起業支援に関する課題構造マップの見方などを紹介。
幸地さんは、取組の背景について次のように説明しました。「スタートアップやスモールビジネス等起業支援に取り組む人々が共通の方向性を持っているにもかかわらず、連携がうまくいっていないことが課題だと考えています。様々な関係者が分野を超えて協力し合えば、より良い取組ができると感じています。この沖縄みらい地図アクションは、起業支援にかかわる皆さんが集まり、共通の目標を設定し、本質的な課題解決につながる方法を見つけるためのものです。その初めの一歩として、沖縄の起業支援における課題を伺うインタビューを重ねています」。
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今回、32組51名の方々にインタビューをさせていただいた中で、大きく2つのポイントが見えてきました。
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1つは、「スタートアップとスモールビジネスの定義」の理解が不足していることに起因するミスマッチです。一般的に「スタートアップ」は短期間で急速な成長を目指し、新たな市場を創る革新的なイノベーションに取り組む企業、「スモールビジネス」は安定した成長を目指し、既存市場をベースにした持続的なイノベーションに取り組む企業と定義されます。この定義について起業家側のビジネスアイデアがどちらに近いのかが曖昧なケースが多く、支援のミスマッチが起きていること、さらには、支援側も「自分は分かってるけど、他の人はもしかして理解していないのでは?」ということをみんなが話しており、お互いに連携が取れていないことが分かりました。
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もう1つは、「スタートアップとスモールビジネスの課題の重なり」です。話を伺っていくうちに、双方とも支援を行う上での課題は資金調達、人材確保、事業準備の部分で課題が重なっていることが分かりました。これは、双方の起業家や支援者が連携することで課題を解決できる可能性もあるのではと考えています。
今回発表した課題構造マップのドラフトはスタートアップとスモールビジネスの課題を記載していますが、この“課題の重なり”が多くあること、また、現状スタートアップとスモールビジネスの区分けが起業家側でも曖昧なので、支援も自然と双方に対応していることが多く、共通の課題が幅を取る構造になっています。
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そして、課題構造マップの見方の例として、3つのポイントを説明。「支援者側の課題」としては、起業経験のある支援者が不足していること、「補助金のあり方」については、沖縄特有の「社会資本整備の遅れ」が「交付金などを通じた補助金が充実している」状態を招き、その結果として「補助金ありきの起業・経営」が多く見られるループがあること、「人材育成の課題」については、「人材育成をしても辞めてしまう」という懸念があるため「人材育成意識」が希薄になり、「人材育成制度が不足」することで「人材の県外流出」につながってしまっているループがあることを、マップをクローズアップしながら紹介しました。
3つの問いをグループセッションで議論
その後は課題構造マップをベースに、19人が4チームに分かれて、グループセッションを実施。まずはこの課題構造マップを見て、「率直にどう感じたか」、そして、「どんなループが見えてきたか」をテーマに議論を進めていきます。
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最初は「ボリュームが多くて頭に入らない」「複雑」「どこにパワーを入れるかによって見方が変わる」「全体を把握している人はいるのか?」など、課題の多さと複雑さに頭に入ってこない発言も見られましたが、「シードフェーズをぐるぐるしているケースが目に付く」「人材育成が希薄なのはなぜか?」「支援現場の課題が起点で重要」など、少しずつループ図に馴染み、それぞれの視点が定まってきました。
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続いてのグループセッションでは、「スタートアップやスモールビジネス支援を行う私たちが、心の底から願っていることは何でしょうか?」という問いを投げかけました。
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「個人の成長ややりたいことを支援したい」「起業家が尊敬される社会」「愛ある起業家を育成していきたい」など、スモールビジネスもスタートアップも関係なく、同じような願いでした。起業支援という枠を超えて「沖縄のために」という共通の思いが感じられ、支援者として心から起業家を支えていきたいという気持ちを誰もがにじませていました。
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支援側のスキルアップも課題
そして、最後のセッションの問いは、「私たちが取り組むべき共通の課題は何だと思いますか?」というもの。
支援者も支援を受ける側(起業家)もアクセスできるような起業に関する「情報の一元化」をするべきという声や、一人ひとりが支援者としてのマインドセット、目利き力をもって活動していく必要性があるという「支援側のスキルの向上」を訴える声も挙がりました。
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支援者が一堂に会したことが連携の第一歩!
事後アンケートでは、ドラフト地図に対して「新発見があった」(44%)、「業務に役立つ」(33%)という評価が得られました。イベント全体については、99%の参加者が「有意義」または「どちらかといえば有意義」と回答。支援機関同士の相互理解と課題への連携対応を望む声も上がり、当初の目的である連携の必要性の認識につながる第一歩となりました。
一方で、「複雑過ぎて理解できなかった」「どう活用すればいいか分からない」など、課題構造マップについてはまだまだ改良の必要があることが分かりました。
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「沖縄みらい地図アクション」は、今後も対話の場を継続しながら課題解決に向けた具体的なアクションを模索していきます。ドラフト段階の地図を、集まったメンバーとともにさらに“進化(深化)”させ、沖縄全体での協働を促進するための基盤として活用していきたいと考えています。
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そして、2月7日(金)には「第2回起業支援に関する課題を俯瞰するワークショップ」を開催します。前回参加者からは「地図の深掘り」や「具体的な課題解決案の議論」を望む声が寄せられており、これらの意見を反映した有意義な場にしていく予定です。参加した皆さんに意義を感じていただけるワークショップにしたいと思いますので、ぜひ一緒に沖縄みらい地図アクションを進めていきましょう。
【プロジェクトチームの概要】
株式会社うむさんラボ
本社:沖縄県浦添市内間四丁目5番25号
代表者:代表取締役 比屋根 隆
HP:https://umusunlab.co.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/umusunlab
Instagram:https://www.instagram.com/umusun_lab/
ケイスリー株式会社
所在地:沖縄県中頭郡読谷村長浜187番地
代表者:代表取締役社長 幸地 正樹
HP:https://www.k-three.org/
一般社団法人デザインイノベーションおきなわ
所在地:沖縄県那覇市久茂地1-1-1 9F
代表者:代表理事 神里 僚子
HP:https://www.dio.okinawa.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/designinnovationokinawa/
【プロジェクトチームの役割分担】
・うむさんラボ:全体とりまとめと本事業関連イベント「ミチシルベ」開催(2025年2月)
・ケイスリー:「沖縄みらい地図」づくり(インタビュー実施、ワークショップ開催)
・デザインイノベーションおきなわ:クリエイティブ・デザイン