見出し画像

自生種のカワラナデシコとフジバカマの苗を育て、地域の花壇に

初めに 
 この10年あまり多摩川自生種のカワラナデシコと野川自生種のフジバカマの苗を自宅で育てて、地域の公園などに提供して、植えて頂き、皆様に楽しんで頂いてきました。その記録を残すことにしました。

植栽の記録

1  きっかけは

2011年11月17日、当時は東京農業大学教授(現在は、元東京農業大学教授、元東京大学大学院農学生命科学研究科客員研究員の)根本正之先生から電話があった。「多摩川産のカワラナデシコ苗を20個差し上げる。自宅に植えてみないか?」とのことであった。すぐには返事ができず、「考えさせてください」と答えて、電話を切った。半日考えて、いただくことにした。今まで、苗を育てたことがないので、大変不安であったが、11月29日午後、東京農業大学に苗を頂きに伺った。先生は近く東京農業大学を定年退職される予定のため、苗の処分のために、私に譲ってくださるようだ。先生から「水やりは2日に1回程度、乾燥しないようにする。日当たりの良い外に置く、雨が落ちないように屋根やパーゴラのあること。」「野生のものはすぐに寝る。不定根」と教わった。
 根本正之先生が、2011年11月13日に多摩川産の種をセルポットにまき、発芽させたものを、同年11月29日に、私は、東京農業大学にて、先生から20株受けとった。しばらく私の自宅でセルポットで育ててから、直径約10cmのポットに移植、その後11株を庭に地植えして育てた。(7株は大沢コミュニティセンターの花壇で育ててもらうように依頼した。)自宅庭では順調に育ち、翌年の2012年7月末から10月末の間に、自宅庭で花を咲かせてくれた。

根本正之先生から頂いた苗 2011年11月撮影
根本正之先生から頂いた苗の1ケ月後 2011年12月撮
カワラナデシコを自宅庭に作った花壇に植える 2012年4月撮影
カワラナデシコ成長 自宅庭 2012年7月撮
カワラナデシコの最初の開花 自宅庭 2012年7月撮影


カワラナデシコ満開 自宅庭 2012年8月撮影
カワラナデシコ種 2012年9月撮影


2  苗を育てる

庭のカワラナデシコは、2012年秋には、カワラナデシコの種が沢山採取できた。
私の自宅では、これ以来、毎年、多摩川のカワラナデシコの種をセルポットにまき、苗を育てています。また、野川のフジバカマの種も採取して、カワラナデシコ同様に、毎年苗を育てています。

 2012年は、11月の初旬にカワラナデシコの種をまきました。12月には、早いもので、もう4番目の葉が出てきています。ふと思いつき、フジバカマも同様に野川で採取した種をまいて、育てることにしました。

 2012年11月初旬には49穴(7x7穴)のセルポットに種をまいています。現時点では、カワラナデシコの発芽率は約90%ですが、フジバカマの発芽率は約70%です。毎年50株から80株程度の苗は確保したいと思っています。

 2013年の春になり、苗が育てば、保全に関心がある人に譲って、育ててもらい、広げることで、地域でその保全を図っていきたいと考えました。優先順位は、一応、①公共的な場所で、よく保全できるところ、次いで、②企業の庭園や、③個人の庭の順序で考えていました。保全のためには、園芸種などと交配が生じない環境であることが必要条件です。無理をしないで、すこしずつ進めていきたいと思っていました。

カワラナデシコの種 2012年秋に撮影
カワラナデシコの苗 2013年2月撮影
カワラナデシコの苗 2013年4月撮影
フジバカマの種 2012年11月撮影
フジバカマの苗 2013年2月撮影

3  最初の植栽は

2013年4月10日午後、初めて多摩川のカワラナデシコと野川のフジバカマの苗の植栽を行った。植栽したのは、三鷹市の自然環境保全地区(天文台下)で、管理をされている榛澤さんからの申し出でがあり、私が種より育てた多摩川のカワラナデシコの苗20株と野川のフジバカマの苗10株を引き受け、育てていただけることになり、苗を提供した。私も立ち会い、植え付けを行った。無事に育ち、たくさんの花をつけ、長く保全されることを期待した。

カワラナデシコ 2013年4月10日撮影
カワラナデシコの苗 2013年4月10日撮影
フジバカマ 2013年4月10日撮影


フジバカマの苗 2013年4月10日撮影


三鷹市の自然環境保全地区(天文台下) フジバカマ 2014年8月撮影



 この苗の説明は、下記の通りです。

 カワラナデシコ:2011年秋、当時東京農業大学教授の根本正之先生から頂いた多摩川自生のカワラナデシコのセルポット苗を、自宅の庭で育てて、沢山の花を咲かせ、種を収穫しました。その種を2012年の秋に蒔き、苗を育てました。

同時に植栽したフジバカマは、野川にわずかに自生しているフジバカマの種を秋に採取し、セルポットに種をまき、ポットに移植して苗を育てました。尚フジバカマは環境省の絶滅危惧危惧Ⅱ類(VU)に分類されています。

フジバカマについては、詳しくは、次をご覧ください。
藤袴を育て、アサギマダラに会い、香りを楽しむ|おきな|note


カワラナデシコとフジバカマの種から育てた苗は、毎年、すこしずつですが、近くの公園や花壇に提供しています。花期は、7月下旬から8月下旬ごろです。多くの方々に楽しんでいただいています。

4  次いで三鷹市の星と森と絵本の家の庭に植栽

国立天文台の構内に、三鷹市の星と森と絵本の家がある。お願いをしたら、星と森と絵本の家の谷口さんより、苗を受け取り、育てていただけるとの連絡をいただいたので、私が育てた多摩川のカワラナデシコの苗40個と野川のフジバカマの苗6個を、提供した。大変うれしく思いました。2013年4月26日午前中、カワラナデシコの苗40株とフジバカマの苗6株の地植えをしました。ボランティアの西川さんと職員の谷口さんと私の3人で、2時間ほどかけてポット苗の植え付けを行いました。星と森と絵本の家の門を入った奥のカツラの木の周りにカワラナデシコ22株を、門を入って右側の事務所の北側の花壇にカワラナデシコ18株を植え付け、奥の草壇にフジバカマ6株を植え付けました。それぞれがいい場所に収まったので、大満足でした。

カワラナデシコ苗 2013年4月19日撮影
フジバカマ苗6個 2013年4月13日撮影


カツラの木の下にカワラナデシコ20個を植えた 2013年4月26日撮影
事務所の西側の花壇にカワラナデシコ18個を植えた 2013年4月26日撮影
フジバカマを6個草壇に植えた 2013年4月26日撮影

その年(2913年)は、自宅庭では、カワラナデシコが、100輪以上の沢山の花をつけました。花弁が細かく糸状に裂けるのが特徴。苞は3対見られる。 野川沿いの三鷹市の自然環境保全地区の隅のカワラナデシコも1輪咲いた。大沢コミセンでも、6輪の花がついていた。
 国立天文台構内の三鷹市星と森と絵本の家の庭にも、カワラナデシコの花が咲いた。フジバカマの花も咲いた。

星と森と絵本の家の草壇 カワラナデシコ 2013年7月撮影
星と森と絵本の家カツラの下 カワラナデシコ 2013年8月撮影
星と森と絵本の家カツラの下 カワラナデシコ 2013年8月撮影
星と森と絵本の家の草壇 フジバカマ 2013年9月撮影

2回目は、翌年の2014年4月11日、星と森と絵本の家のカツラの下の花壇に追加でカワラナデシコ30個を植えた。


星と森と絵本の家カツラの下 カワラナデシコ 2014年4月撮影

3回目は、翌々年の2015年4月23日、星と森と絵本の家の庭に、フジバカマの苗30株とカワラナデシコの苗15株を提供し、ボランティアの西川さんと原さんに植えていただいた。フジバカマは、新たに2箇所(事務所の北側の花壇と門を入ったすぐ右のとのろ)に分けて植え、カワラナデシコは、昨年植えた場所に補植をしていただいた。 私は体調が悪く、手伝えなかった。花が咲くのが待たれる。


星と森と絵本の家事務所の西側 フジバカマ 2015年5月撮影


星と森と絵本の家 カワラナデシコ 2015年5月撮影
絵本の家のカワラナデシコ 2015年8月撮影


2015年10月5日、国立天文台構内の三鷹市の星と森と絵本の家の入口すぐ右側のところに植えてあるフジバカマが咲いていた。盛りは過ぎたようですが、星と森と絵本の家の中で、3個所目でやっと、よく咲いてくれた。フジバカマは、少し環境に敏感なようです。草壇では、あまりよく咲かなかったのは、日照が少ないのが原因のようだつた。

絵本の家 フジバカマ 2015年10月撮影
絵本の家 フジバカマ 2015年10月撮影

2017年春、絵本の家の入口付近が舗装された。地面が熱くなるので、ボランティアさんが、カツラの下のカワラナデシコの花壇を改装してくれた。カツラも段々と背が高くなってきた。

絵本の家のカワラナデシコ 2017年4月撮影

5  2014年は、野川公園と日立中央研究所の庭園と大沢コミセンに植栽

野川公園の旧管理棟前に、カワラナデシコの苗30個とフジバカマの苗30個を植えて頂いた。立派に成長して、沢山の花を咲かせた。
 残念ながら、翌年には、全部掘り起こされ、別の花苗が、植えられていた。多年草であることを、よく伝えておかなかったことを悔いています。

野川公園旧管理前 フジバカマとカワラナデシコ 2014年5月撮影
野川公園旧管理前 カワラナデシコ 2014年7月撮影
野川公園旧管理所前 カワラナデシコ 2014年7月撮影

野川の源流である日立中央研究所の庭園にも、野川のフジバカマの苗45個を植えさせて頂いた。日立中央研究所の所長宛てに手紙をだして、植える理由を詳しく書いたら、研究所の担当部署から、承認の知らせをいただき、感激した。植栽後も、ほぼ月一回の頻度で、除草などの手入れに伺った。
 新型コロナの蔓延と共に、その対策のため、外部者の庭園への立ち入りが、許可されず、放置されてしまったことは、残念であった。

日立中央研究所庭園 フジバカマの植え付け 2014年4月撮影
日立中央研究所庭園 フジバカマ 2014年4月撮影
日立中央研究所庭園   フジバカマ 2014年7月撮影
日立中央研究所庭園 フジバカマ 2014年9月撮影
日立中央研究所庭園 フジバカマ 2014年9月撮影  


大沢コミセンの花壇にもフジバカマを10個植え付けた。カワラナデシコも植えました。カワラナデシコは、毎年沢山の花を咲かせているが、フジバカマは、いつのまにか、消滅してしまった。

大沢コミセン フジバカマ 20149月撮影
大沢コミセン フジバカマ 20149月撮影
大沢コミセン花壇 カワラナデシコ  2018年7月撮影

6  2015年は、三鷹市の羽沢小学校と神代植物公園植物多様性センターに植栽

2015年には、5月7日(木)三鷹市の羽沢小学校の花壇に、カワラナデシコとフジバカマを植えた。神代植物公園植物多様性センターからフジバカマの苗の提供の依頼があり、5月8日(金)にフジバカマの苗を提供した。根本正之先生と相談して、計画中の「武蔵野のくさはら」に植えるとのことであった。

 羽沢小学校の花壇では、カワラナデシコは花が咲いたが、フジバカマは、残念ながら、一度も花が咲かなかった。日当たりはいいが、土の問題のように思っています。

 植物多様性センターでは、すこし時間がかかったが、「武蔵野のくさはら」が完成して、フジバカマは、立派に生育した。

羽沢小学校花壇 フジバカマ 2015年5月撮影
羽沢小学校花壇 カワラナデシコ 2015年5月撮影
羽沢小学校花壇 カワラナデシコ 2015年8月撮影

7  2016年は、野川公園自然観察園に植栽

2016年には、野川公園自然観察園にカワラナデシコを植えた。日当たりの良くない場所だったので、いつのまにか、消滅してしまった。

野川公園自然観察園 カワラナデシコ 2016年7月撮影

8  2017年には、植物多様性センターに植栽

2017年には、4月10日(月)神代植物公園植物多様性センターに、カワラナデシコ苗24個とフジバカマの苗30個を提供した。武蔵野ゾーンの「武蔵野のくさはら」や礫地エリアなどに植え付けて頂いた。カワラナデシコは、その年花が咲いたが、フジバカマは、生育するまで少し時間がかかった。

多様性センターに提供した苗 (フジバカマ24個とカワラナデシコ30個) 2017年4月25日撮影
植物多様性センター カワラナデシコ 2017年7月撮影
植物多様性センター武蔵野のくさはら カワラナデシコ 2019年8月撮影
植物多様性センター武蔵野のくさはら フジバカマ 2019年10月撮影
植物多様性センター武蔵野のくさはら フジバカマ 2021年9月撮影

9  2023年には、駒場野公園、大沢の古民家、22世紀の森神代、三鷹市花広場に植栽

2023年3月17日に、目黒区区役所みどり土木政策課の方に、フジバカマ苗20個とフジバカマ苗35個を提供した。

4月10日には、三鷹市大沢の里古民家に、フジバカマ苗8個を、追加して植え付けた。4月17日には、古民家にカワラナデシコ苗12個を植え付けた。

4月18日には、22世紀の森神代に、フジバカマ苗10個とカワラナデシコ10個を植え付けてもらつた。

4月19日には、三鷹市花広場の緑のボランティアゾーンに、フジバカマ苗10個とカワラナデシコ苗10個を、植え付けてもらった。


駒場野公園にフジバカマとカワラナデシコの苗を提供 2023317日 撮影
駒場野公園 カワラナデシコとフジバカマ 2023年5月撮影
駒場野公園 フジバカマ 2023年5月撮
駒場野公園 カワラナデシコ 2023年5月撮影    


三鷹市大沢の里古民家 フジバカマ 2023年5月撮影
三鷹市大沢の里古民家 カワラナデシコ 2023年5月撮影
三鷹市花広場緑ボラゾーン カワラナデシコ 20235月撮影
三鷹市花広場緑ボゾーン フジバカマ 20235月撮影


10  まとめ

これまでの苗提供の記録をまとめると次の一覧表のようになります。 

植栽の記録

2012年から2023年の間11年間のカワラナデシコとフジバカマの植栽の記録をまとめたものです。提供した苗の数の大きい順に並べてあります。カワラナデシコは、377個、フジバカマは、333個です。それぞれのトップ3は、カワラナデシコは①星と森と絵本の家114個、②野川公園自然観察園51個、③駒場野公園35個の順です。フジバカマは①星と森と絵本の家57個、②神代植物公園植物多様性センター54個、③日立中研の庭園(野川の源泉)45個の順となっています。

このように、色々のところに、植栽したが、すでに消滅してしまっているところが、複数ある。なぜそんなことになるのかと考えてみると、その原因と考えられることがある。

①植栽の場所がよくなかった、環境条件が、適切でなかつた。土造り不足。特に日照不足が、致命的だった。
②渡す側や、受け手の調査・勉強不足。熱意が不足。お節介不足。そのため、適切な世話ができず、そのうち競争する雑草に負ける。草ぼうぼう。
③担当者の異動、引き継ぎ不足。
④高齢化で世話が不足。

根気よく継続することが、最も大切と思う。反省は尽きない。

11  付録


フジバカマの苗の育て方

ベストてはありませんが、私のやって来た方法を記載しておきます。参考にしてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?