No.814 カラスとせんべい

全国有料老人ホーム協会が主催する「第20回 シルバー川柳」(令和2年、 応募総数:10,663 作品)の入選作の一つに、身につまされる句がありました。
「ゴミ出しの俺とカラスは顔馴染み」
(千葉県 73 歳 男性 )

私とご同業(同行?)の士が、千葉県にもいらっしゃることを知りました。ゴミ出しの曜日を知ってか知らずか、オジサン連がゴミを出すのを高みから見物し物色している烏の姿を見ることがあります。うちの団地は金属製のゴミステーションなのでポリ袋から生ごみを取り出して食い散らかすようなことはできません。ちょっぴり恨めしそうな顔つきです。

その昔、信号が赤になったので停車していたら、カラスが一羽、交差点内に舞い降りてきました。どうしたのかと目を凝らして見ると、砕け割れたせんべいが路上に落ちていました。彼か彼女かは分かりませんが、その黒主は、咥える前に二度ほど首をかしげ、持ち去る価値があるかどうかを品定めし、自問自答しているようでした。結局、大きい方を咥えて飛び去って行きました。ほんの10秒足らずの出来事でした。

巣に帰り着いた烏は、そのせんべいをどうしただろうかと妄想しました。等分に割ることも、食べやすい形に割ることも難しく、喉をこさいで通るせんべいに目を白黒させたのではあるまいかなどと、要らん心配をしながら家路につきました。

ネットの親切さんの記事に、
「最近、カラスにエサをやってるんですが、肉、魚、ハム、惣菜、ポテチ、おにぎりせんべい、などなど、今まで喜んで食べてましたが、昨日、韓国のりをやったら、くわえたんですが、すぐに捨てました。なぜでしょう?」
というのがありました。雑食にかけては、人間よりも守備範囲が広いとも聞きます。その質問者への答えとして、
「カラスが喰わないものの1つに辛いものが挙げられます。 唐辛子類や西洋からしやワサビなど、刺激物が苦手ということですね。韓国ノリは味や香りが強く、カラスにとっては刺激物と感じたのでしょう。」
という丁寧な回答がありました。結構繊細な味覚センサーを持っているのかも知れません。
 
カラスの知能はどれくらいなのだろうと調べたら、
「カラスの知能は少なくとも一部のサルと同等であり、実際には(ゴリラなどの)大型類人猿に備わっている知能に匹敵する可能性さえある」
と行動科学分野のオピニオン誌『カレント・オピニオン・イン・ビヘイビオラル・サイエンス』(2017年)に研究報告があるそうです。
 
せんべいにも、わさびせんべいや激辛せんべい、また固焼きせんべいや海苔巻きせんべいなどというものもありますが、賢い烏は鋭く察知してプイとそっぽを向くか、カモメのジョナサンのように極限状態にまで自己を追い込み味覚を磨いて、激辛せんべいさえ克服してしまうのか、どんな反応を見せるのだろうかと興味深く思ってみたことでした。
 
「けろりくわんとして烏と柳哉」
小林一茶(1763年~1828年)


※画像は、クリエイター・にゃこぱんさんの、タイトル「高原の家で 小鳥さん見ながら モーニングしたい キャンプ ロッジ情報」をかたじけなくしました。お礼申します。