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No.914 救われた心
「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、さまざまな謎や疑問を徹底的に究明する『探偵!ナイトスクープ』。当探偵局では、テレビをごらんの皆さんからの依頼に基づいて直ちに優秀な探偵を派遣し、真相の追求にあたります。」
1988年(昭和63年)3月から始まったのが、視聴者参加型のバラエティー番組「探偵ナイトスクープ」(大阪朝日放送)です。35年も続いている長寿番組の1つです。
たしか、局長が上岡龍太郎さん、秘書は岡部まりさんのころでした。そんな、ウン十年も前のお話です。
主人公のAさんが小学生だった頃に、転校生がやって来たそうです。人からすぐに好かれる男子で、Aさんも仲良くなり、家の行き来をする間柄になりました。
ある日、彼の家に遊びに行くと、Aさんが自宅で無くなったのと同じ「サンダーバード」の玩具を発見します。「お前、盗ったな!」とAさんは詰問しました。彼は涙を流しながらも、一言の反論もせずに「サンダーバード」を渡したのだそうです。
後年になって、Aさんは自分が無くした「サンダーバード」のオモチャを自分のベッドの下で見つけます。その驚きは、いかばかりだったでしょう。
Aさんは、何としても彼に詫びたいと思いましたが、居場所が分からず、25年も苦しみ続けたのだと言います。
転校してきた男の子は、友達を失いたくないがゆえの悔し涙だったのかもしれません。私には、そんなことが思われて、転校生だった人物が見つかることを願いながら興味深く見ていました。
優秀な探偵団は、Aさんからの依頼を受けて、遂に本人を探し出しました。Aさんは、当時の子どもたちが憧れた「サンダーバードの基地」をお詫びの品として抱えて約束の場所にいきました。
懐かしいあの男の子の顔でした。しかし、転校してきたその男性は、「そんなことが、あったかなぁ?」と少しも記憶にない表情でした。Aさん一人が、長い間、自責の念にとらわれていたことがわかったのです。
肩透かしを食らったかのようなAさんと、頭の中が「?」だらけの私は、呆然といった感じでいました。
男性の奥さんは、そんな彼のことを「優しくて明るい人です。」と評して笑いました。彼女のその笑いで、後悔し続けたAさんの25年間は救われただろうと思いました。
男性は、「サンダーバードの基地」を申し訳なさそうに受け取りました。
「早合点」は災いを招くことがあります。
そういえば、TVドラマ「赤毛のアン」(カナダCBC放送制作)の中で、マリラがアンにブローチを盗まれたと思い込み、アンに一言も弁明させず孤児院に追い返してしまったことがありました。
ところが、後になって部屋を片付けている時、椅子の間にブローチが挟まっていたことに気づくのです。大いに慌て、後悔し、兄のマシューに大急ぎでアンを連れ戻すよう頼みます。アンが戻ってくるまでのマリラの自己嫌悪とアンに詫びねばという気持ちが、痛いほど伝わってきました。
その姿と、昔見たあの番組のAさんの気持ちがオーバーラップしてしまいました。早合点をして過ちせぬよう、心して生活したいものだと思います。