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No.866 ありそうにない本物(Improbable Genuine)

「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」(TBS系テレビ)は、タモリによる2002年(平成14年)~2006年(平成18年)までレギュラー放送されたバラエティー番組で、「生きていく上で何の役にも立たない無駄な知識、しかし、つい人に教えたくなってしまうようなトリビア(雑学)」がキャッチフレーズでした。
 
イグノーベル賞は「ありそうにない本物(Improbable Genuine)」の頭文字「IG」とノーベルを合わせて作られた言葉です。
「人々を笑わせ考えさせた研究に与えられる賞」
だそうで、風変わりな研究、社会的事件などを起こしたものに対して、称賛と時には皮肉を込めて贈られる賞ともいわれています。「ユーモア科学研究ジャーナル」の編集長・マーク・エイブラハムズ(1956年~)が1991年(平成3年)に創設したものだそうですが、無駄のように思えて不思議な魅力と底力にあふれています。
 
日本は受賞の常連国として知られ、その鬼才たちは、昨年度までの32年間で28もの受賞をしていました。いずれも抱腹に値する立派な研究成果ばかりですが、参考のためにいくつかの受賞理由を掲げてみます。要らん世話ながら、※は、私の感想です。

1992年(平成4年)
【医学賞】…「『足の匂いの原因となる化学物質の特定』の研究に対して」(資生堂研究員)
※「匂い」は、私の場合「臭い」ですが、足の裏の人間の謎に挑戦してくれます。

1997年(平成9年)
【経済学賞】…「『たまごっち』により、数百万人分の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせたことに対して」(バンダイ社員ほか)
※研究対象とする発想がユニーク。我が子たちも経済効果に貢献をしたのかな?

1999年(平成11年)
【化学賞】…「夫のパンツに吹きかけることで浮気を発見できるスプレー『Sチェック』を開発した功績に対して」(探偵社員)
※謎が謎呼ぶ探偵社です。夫と妻の心の溝が埋まる労作?傷口が広がる労作?

2003年(平成15年)
【化学賞】…「『ハトに嫌われた銅像の化学的考察』。兼六園内にある日本武尊の銅像にハトが寄り付かないことをヒントに、カラス除けの合金を開発した」(金沢大学教授)
※上野公園の西郷さん像も、さぞうらやましく思っている研究成果でありましょう。

2007年(平成19年)
【化学賞】…「ウシの排泄物からバニラの香り成分『バニリン』を抽出した研究」(国立国際医療研究センター研究員)
※うーん、牧草地帯がバニラの匂いに溢れたら、世界平和が訪れるかも?

2008年(平成20年)
【認知科学賞】…「単細胞生物の正真粘菌にパズルを解く能力があったことを発見したことに対して」(大学研究者共同研究)
※粘菌君ったら、錬金術の素晴らしい能力をお持ちのよう。爪の垢を頂戴!

2011年(平成23年)
【化学賞】…「火災など緊急時に眠っている人を起こすのに適切な空気中のさわびの濃度発見と、これを利用したわさび警報装置の開発」(大学・企業共同研究)
※冗談から出た駒ですか?ワサビなだけに効き目は即効的でしょう。

2014年(平成26年)
【物理学賞】…「床に置かれたバナナの皮を人間が踏んだときの摩擦の大きさを計測した研究に対して」(北里大学研究者)
※その結果は限りなく「0」に近い値なのでしょうか?氷上より滑る?芸人よりも?

2015年(平成27年)
【医学賞】…「キスでアレルギー患者のアレルギー反応が減弱することを示した研究に対して」(開業医)
※開業医ならではの個人的データファイルの活用?花粉アレルギー患者にも効く?

2020年(令和2年)
【音響学賞】…「ヘリウムガスを使うとワニのうなり声も高くなる(ドナルドダック効果)ことを発見したことに対して」(京都大学霊長類研究所准教授)
※あのおどろおどろしいワニでさえドナルドダックボイスのアイドルもどきの声に?

さて、2017年(平成29年)のイグノーベル賞【流体力学賞】は、韓国人研究者のハン・ジウォンさんの発表、
「コーヒーの入ったカップを手にした人が後ろ歩きするときの『液体の揺動現象』についての研究」
に贈られました。コーヒーカップを手にして歩く時、コーヒーをこぼしがちな現象に着目して研究したものだそうです。確かに、カップの中のコーヒーが揺れて安定せず、零れたりします。その結論として「後ろ向きに歩く」、「コップを上からわしづかみする」と効果を得たそうです。私もやってみましたが、お説の通りでした!
 
なお、同じ2017年の【物理学賞】には、
「猫は固体かつ液体なのか?」
という研究を行ったフランスの研究者マーク・アントワン・ファルダン氏に贈られました。「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHKオンライン)という番組の中で「猫は液体です」の言葉があったと思いますが、その成果を受けていたのですね。おそるべし、イグノーベル賞!


※画像は、クリエイター・ひらばやしふさこさんの、タイトル「もらい涙と今年の課題」をかたじけなくしました。形に丸くおさまったネコの柔軟性は、液体のようでもあります。お礼申し上げます。